2016年6月15日

ぼくの名前はニッパーだよ

His Master's Voice by ©Isato Nakagawa

フランシス・バロウド
シンガー&ギタリストの中川砂人さんがFacebookで、優れたコンピューターグラフィックスを公開している。このイラストは古い電気蓄音機の裏蓋に貼られていた商標が元となっているという。蓄音機に耳を傾ける一匹の犬、米国のRCAレコードや英国のレコード販売店グループHMV、日本ビクター(現JVCケンウッド)などの企業のトレードマークとして知られ、多くの人たちの記憶に刻まれていると思われる。モデルはブル・テリアとフォックス・テリアの血が混じった雑種犬で、その名は噛むことを意味するニッパーである。1884年に英国のブリストル生まれ、飼い主は画家のマーク・バロウドだった。1887年にマークが他界、弟のフランシスに引き取られ、リバプールに移り住んだ。新しい家でニッパーはシリンダー式蓄音機から流れる亡き主人、マークの声に不思議そうに耳を傾けるようになり、この様子をフランシスが絵に描いたのである。1895年9月にニッパーが亡くなったが、1898年に絵が完成した。当初は「犬が蓄音機を見て耳を傾ける」という題だったが、後に「彼の主人の声」に変更した。1899年にフランシスは絵をグラモフォン社に売り込んだが、同社の製品に合わせ、蓄音機を黒から真鍮のホーンがついた円盤式に描き換えた。1900年になると、ニッパーの絵はいくつかのプロモーションアイテムとなった。そして1910年にHMVが商標登録、そしてニッパーの画像および蓄音機は最終的にはRCAの正式商標となったのである。この商標は見た途端に分かるもので、「20世紀の有名ブランド」トップ10に選ばれている。ニッパーは単にRCAの商標というだけではなく、商業レコードの黎明の不朽の象徴になったのである。

nipper  ニッパー公式サイト(JVCケンウッド)

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