2016年6月25日

ブルーグラス音楽の巨星ラルフ・スタンリーの思い出

Ralph Stanley (Feb 25, 1927–Jun 23, 2016) by ©Jim McGuire

ラルフ・スタンリーの訃報が昨夜届いた。89歳だった。ブルーグラス音楽を聴き始めたのは高校時代からだった。写真工学を学ぶため、大学に進んだものの、音楽の病が高じて、1963年春に「千葉大学C&W研究会」というサークルを作る始末だった。暮れの11月に小冊子「Blue Grass」を発行、全国の学生バンドを中心に「千葉の田舎に変な奴がいる」と評判になったようだ。その縁で知り合いになった明治大学の「ブルーリッジ・マウンテン・ボーイズ」がスタンリー・ブラザースの曲を主にコピーしていたことが思い出される。私自身はそれほど興味を持っていなかったものの、当時購入した日本初のブルーグラスの30センチLP盤『ブルー・グラス・スペシャル』は今でも大事にとってある。スタンリー・ブラザースとドン・レノ&レッド・スマイリーとのカップリング盤で、発売は1960年3月だった。1970年、私は神戸に移り住んだが、立命館大学の「サニー・マウンテン・ボーイズ」を率いていた野崎謙治さんが、卒業後開いた喫茶店「ロスト・シティ」に入り浸るようになった。日本公演の際に野崎さんの紹介でラルフと話す機会があった。ところが彼の言葉を全く聞き取れない。もともと語学力に乏しい私だが、クリンチ・マウンテン訛りは、まさに津軽弁のごとし、同行のアメリカ人に英英通訳して貰ったことを今でも覚えている。次に蘇るのは、2000年にコーエン兄弟が制作した映画『オー・ブラザー』だった。最後に流れた「エンジェル・バンド(天使の群れ)」も印象的だったが、KKK(クー・クラックス・クラン)の集会のシーンで歌われた「オー・デッス(死よ)」が圧巻だった。死の床にある男が死神と押し問答するという内容だが、まさに皮膚がんに侵されたラルフの闘病生活とオーバーラップする。

YouTube  "Oh Death" by Ralph Stanley: From the movie "O' Brother Where Art Thou".

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