2023年2月19日

女性の乳首に自由を

Civilian Defense
Edward Weston (1886–1958) Civilian Defense, Carmel, 1942

ソーシャルメディア Facebook にヌード写真をポストしたところ即削除されたことがある。ごくありふれた写真だったので驚いたのだが、おそらく閲覧者の報告によりシステムが対処したのだろう。利用規約に反しているという指摘があったように記憶している。以下に Facebook の「ヌードや性的行為: パブリッシャー・クリエイター向けガイドライン」の一部を引用しよう。

Facebook では乳首が見える女性の乳房の画像も制限されますが、医療目的や健康上の目的でシェアされる画像は除きます。授乳をしている女性や乳房切除術後の瘢痕を表す写真も許可されます。また、ヌードを描写する絵画や彫刻などの芸術作品の写真も許可されます。

上掲の写真はエドワード・ウェストン(1886–1958)の「民間防衛」と題した作品だが、おそらくこれをポストすれば削除されるだろう。医療目的や健康上の目的ではないし、授乳をしている女性の写真ではないからだ。写真術は近代に生まれたが、今や絵画や彫刻と相並ぶ芸術様式である。なぜ Facebook、あえて名指せば CEO(最高経営責任者)のマーク・ザッカーバーグが写真芸術を排斥するのか理解できない。乳首が写ったヌード写真は猥褻だと短絡解釈しているのだろう。さらに同上ガイドラインを引用しよう。

性的行為の表示に対する制限は、イラストコンテンツやデジタル処理で作成されたコンテンツにも適用されます。ただし、教育目的、ユーモアや風刺の目的で投稿されたコンテンツの場合は除きます。性行為の露骨な画像は禁止されています。

性行為の画像は禁止という言質は性行為を猥褻であると解釈しているわけだが、性行為すなわちセックスなしには子どもは生まれない。卑近な例、アニマルセックスの写真がおおっぴらに公表されているが、ヒトのセックスの写真はご法度になっている。江戸時代の「枕絵」は親が娘に持たせる嫁入り道具であったが、幕府の取り締まりを受けた。うがった見方をすれば性行為の画像の取締りは昔から為政者の権力の象徴と言えそうである。ポルノ画像が性犯罪の呼び水になっているかは疑問である。

Free The Nipple

女性の乳首に関しては「カイリー・ジェンナーの Free the Nipple に続け! フリー・ザ・ニップルをリードするセレブ11名」という記事を思い出す。Free The Nipple(乳首を自由に。以下 FTN)とは男性のトップレスは許されているのに、女性はそうではないことに対する抗議活動である。もともとは俳優で監督のリナ・エスコが2012年に同名のインディーズ系コメディ映画を作ってこのダブルスタンダードを指摘、ジェンダー差別の撲滅を訴えたことから始まった。彼女の主張を支持したマイリー・サイラスやレナ・ダナムがこのハッシュタグをつけて SNS にトップレスをアップしたが、インスタグラムや Facebook は「女性のトップレスはNG」というルールがあるとして削除。女性セレブたちがこれに抗議し、FTN は一気に拡大した。今もダブルスタンダードはなくならず、バストトップを何らかの形で隠さなくてはインスタグラムにトップレス画像をアップできないことから FTN は根強く続いている。 下記リンク先のガーディアン紙の記事によると Facebook と Instagram の親会社 META は、まもなく女性の胸の写真を解放する可能性があるという。同社の監視委員会は、女性のヌード写真を禁止する規則を見直すよう求めたという。マーク・ザッカーバーグに早急な決断が求められている。

guardian Free the nipple: Facebook and Instagram told to overhaul ban on bare breasts | Guardian

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