2023年2月16日

ラ・プラタの博物学者ウィリアム・H・ハドソン

ラ・プラタの博物学者

中国ファーウェイの7型タブレット MediaPad T3 7 を持っている。実画面は文庫本よりひと回り小さいが、これまでアイザック・ウォルトン(1593–1683)の『釣魚大全』やの『海上の道』などの電子書籍を読んできた。電子書籍の最大の特長は、文字の大きさや書体を変えることができることである。劣化した視力には有難い。ただ読書専用機ではないので、やはりアマゾンの電子リーダー Kindle Paperwhite が欲しくなる。とてつもなく膨大な、星の数ほどの書籍が電子化されているが、何故か好きな作家ウィリアム・H・ハドソン(1841–1922)の邦訳本がリリースされていない。従って今のところ Kindle の導入に至っておらず、紙の本をバッグに忍ばせて持ち歩いている。おおよそこの10年間、唯一の例外はフィドルの教則本で、文庫本あるいは新書しか購入していない。だから友人が写真集を出したにも関わらず不義理をした。おっと、長い前書きになってしまった。

はるかな国とおい昔

ハドソンといえばまず頭に浮かぶのが『はるかな国とおい昔』で、 生まれ育ったアルゼンチンの幼少時代を書いた自伝文学である。寿岳しづの名訳が岩波文庫から1998年に出版された。

William H. Hudson

どこまでも続く大草原、広い空にひびく羊たちの鳴き声.アルゼンチンのパンパに育った作家ハドソンが、自然とともに生き、その不思議な美に魅せられた幼年時代の思い出を美しく綴った自伝文学の傑作。博物学と文学の美しい交錯とうたわれるこの作品は、現代人の心にも自然への深い愛着を呼びさます。(岩波書店のHPより)

ハドソンの作品で私が特にお気に入りなのは『ラ・プラタの博物学者』で、岩波文庫:改定版(1975/8/18)と講談社学術文庫(1998/12/10)の両方を所持、翻訳の違いなどを読み比べたりしている。

「パンパ」とよばれる大草原が広がる南米のラ・プラタ地域は、ハドソンンが青少年期を過ごした土地である。その地をこよなく愛し、自然や野生生物の観察に明け暮れた彼の熱情は、やがて当地の大自然を美しく歌い上げた本書となって結実し、博物学者としてのハドスンの名声を不動のものとした。原典にちりばめられた博物画家スミットによる味わい深い挿画を完全収録し、待望の新訳で贈る博物誌の名品。(「BOOK」データベースより)

博物学に造詣が深かったハドソンは鳥類学者でもあった。黒田晶子訳『鳥たちをめぐる冒険』(1977/4/24)および小林歳雄訳『鳥と人間』(1978/10/16)を講談社が出版した。いずれもハードカバーだったが、前者は1992年に同社学術文庫に収められた。

鳥たちをめぐる冒険
鳥がいつまでもそこにいたがったのは、手あつい介抱のためではなく、ひとからならぬ恋のためらしかった。当然、彼の相手は彼を助け餌をやった少年だろうと思われるところだが、実はなんと隣家に住む小さな男の子だったのだ! 誤解の余地はなかった。そうしたければいつでも飛び去れるはずのこの鳥は、自分の選んだ、小さな友だちの家の近辺にようになった。いつでも少年のそばにいたがり、学校に行くときもついていって教室に入り、一つ所にとまって授業が終わるのを待った。だが彼の忍耐心にとって、学校の授業の教程は長すぎた。コクマルガラスはしばしば大声で不服を訴え、子供たちはクスクス笑った。結局彼は外へ出され、ぴしゃりとドアをしめられた。すると今度は屋根の上にとまって放課後を待ち、時間になるとおりてきて少年の肩にのり、一緒に家に帰った。(黒田晶子訳)

イングランド南部ウィルトシャー典礼カウンティの小さな村でのエピソードだ。英国に渡り、極貧生活に耐えながら、アルゼンチンや英国の鳥類などに関する優れた著作を残した。幼少時、コウカンチョウを手にするが、それは籠に入れて飼った最初の鳥であり、籠に入れて飼った最後の鳥でもあった。ガラスケースの中の鳥、すなわち剥製による研究を戒めた、鳥類保護の先駆者だった。1894年、RSPB(英国王立鳥類保護協会)の評議会委員長に選ばれている。

britannica  William H. Hudson (1841-1922) | British author, naturalist, and ornithologist | Britannica

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