1989年6月5日、中国政府が北京の天安門広場でデモ参加者を激しく取り締まり始めた翌日、黒いパンツに白いシャツを着たひとりの男が、デモ参加者の鎮圧に向かう戦車の列に対して行動を起こした。この男性は、非暴力による抗議行動として、戦車の行進の前を冷静に歩き、先頭の戦車を停止させたのである。戦車が彼を囲んで移動しようとすると、男は何度も位置を変え、戦車の進行を妨げ続け、反対運動の象徴的なジェスチャーを生み出し、今日でもなお力強いイメージを保ち続けている。フォトジャーナリストや写真家の集団として有名なマグナムのメンバーである写真家、スチュアート・フランクリンは、北京のホテルのバルコニーからその場に居合わせ撮影した。翌日、彼のフィルムが中国からお茶パックに入れて密輸され、パリのマグナム社に届けられると、この「戦車男」の写真は世界中の新聞の一面を飾った。このシーンは他の3人の写真家も撮影しているが、フランクリンの写真が最も象徴的で『タイム』誌や『ライフ』誌に掲載され、世界報道賞を受賞している。
25年後、この象徴的なイメージが再び脚光を浴びた。フランクリンのコンタクトシートが、2014年、マンハッタンのミルクギャラリーで行われたマグナムのコンタクトシート展に出展されたからである。写真家や写真編集者が、コンピューターやデジタル写真に取って代わられる前に、画像を選択するために使用していたコンタクトシートは、情報の宝庫です。撮影やイベントのアウトテイクや舞台裏を写したもので、撮影の過程や撮影者の思いが伝わって来る。シートを拡大して見ると「戦車男」が戦場に入り、戦車の前に立ち、最後には他の人に掴まれてその場から移動しているのがわかる。また、スチュアートが危険を冒して急いでホテルの部屋に戻り、レンズを交換して近づいて撮影しているところも確認できる。下記リンク先のページは、天安門事件の歴史的出来事を目撃した経験と、それが彼にとって何を意味するかについて、アレクサ・キーフによるスチュアート・フランクリンへの、ナショナルジオグラフィック誌のインタビュー記事である。
Q&A: Stuart Franklin's View on Tiananmen Square, Beijing, 1989 | National Geographic