2019年11月16日

危険なエコーチェンバー現象


就寝時にネットワーキングをしないことにしている。エコーチェンバー現象によって気が滅入り、眠れなくなる時があるからだ。エコーチェンバーとは音楽録音用の残響室のことだが、エコーチェンバー現象は限られたネット空間の中で同じ意見が反復され、増幅反響する効果を指す。これは同じ意見を持った同類の人々が集まり、信じたいものだけを信じるという危険を孕んでいる。例えばソーシャルメディア Facebook での私の友だちはおおむね安倍晋三に批判的だし、自公政権を支持していない。所謂ネトウヨ(ネット右翼)はいないと考えて良い。それゆえに、同じような心地良い意見がネットの中で反復され、こだまする。閉じたコミュニティのなかで、自分と同じ意見の人々だけの意見交換が繰り返されることで、世の人々の多くが「アベ政治を許さない」と考えてるのではないかと錯覚してしまう。ところが新聞や放送サイトに移動すると「内閣支持47%・不支持35%」といった、世論調査の結果が目に飛び込んでくる。その現実に直面すると、落差に落胆することになる。冷静に考えれば当然考えられることなのだが、どうして錯覚してしまうのだろうか。私見によれば、思考が二極化しているからだと思う。つまり2進法で、1と0だけで、間がないのである。ミレニアム世代の 60% 以上が Facebook を一次情報源として使っているという。この傾向は私たちを分断し、民主主義を破壊している懸念がある。例えば音楽に関して言えば、人々は政治的イデオロギーほど極端な意見を持ったり、二極化したりすることはない。しかし政治的なコンテンツは別である。Facebook で友だちがシェアするニュースに影響を受けるなら、それはユーザーに責任がある。しかし、もしニュースフィードのアルゴリズムによって表示される記事が、エコーチェンバー現象の要因となるとすれば、その責任は Facebook にあるだろう。

PDF  笹原和俊『エコーチェンバーの生成ダイナミクス』の表示とダウンロード(PDFファイル 669KB)

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