沈みゆくヴェネツィア:温暖化を警告する彫刻家ロレンソ・クイン制作の巨大な腕
米国は4日、気候変動への国際的な取り組みを決めた2015年の「パリ協定」からの離脱を正式に国連に通告した。これにより世界で唯一、同協定に参加していない国となる。自分で決めたガス排出を減らす目標の取り消しや、発展途上国の対策を助けるための国際基金へお金を出すのをやめると明言したのである。二酸化炭素というと、火力発電所や工場などを想起するが、家庭からも排出されている。10年前、英国のザ・タイムズ紙が「グーグル検索の環境に及ぼす影響」という記事を掲載して話題になった。検索1回につき、7グラムの二酸化炭素を排出する。ヤカン一杯のお湯を沸かすと15グラム。だから2回で同じ排出量になり、明らかに環境に悪影響を与える、という物理学者の
アレックス・ウィズナー=グロス博士(ハーバード大学研究員)の主張を取り上げたものだ。なにかと話題を振りまくグーグルだが、これに対する TechCrunch のジェイソン・キンケイド氏の論評が誠に興味深い。要約しながら紹介してみよう。本一冊がおよそ2,500グラムの二酸化炭素に相当するそうで、これはグーグル検索の350倍以上になる。またチーズバーガー1個の二酸化炭素排出量は3,600グラムだそうだ。これはグーグル検索500回以上に相当する。だから、食べるハンバーガーを減らして検索を控えめにすればいい。そうすれば体重も減らせるしと書いている。そしてその先が痛烈である。キンケイド氏は何かを調べるのに車で図書館に行くかわりにグーグルを使ったことは数知れないという。そのたびに車を使えば排出する二酸化酸素は、グーグル検索より桁違いに多いだろうとしている。これは一理あり、その通りだと思う。また乗り換え案内を使い、電車やバスの時刻を調べて車を使わずに済ませたことは何10回もあるという。それに炭素クレジットを買えるサイトを見つけるのにも検索エンジンが役立っているというのだ。
記事について氏が問題にしているのは、事実が誤っているかどうかというのではなく、グーグルに謎に包まれた邪悪な力のレッテルを貼り、みんながグーグルを使うたびに、環境問題を悪化させていると言っていることで、ある意味で人騒がせなアラーミストだという。つまりグーグルが今よりもエネルギー効率を良くする余地があるだろうが、この手の記事が人々にインターネットを敬遠させてしまうことをは恐れているという。ガソリンを大食いするスポーツ用多目的車と違って、インターネットは人々を繋ぎ、人間性を豊かにするものである。ウェブ企業には何をおいてもカーボンニュートラルになって欲しいが、エネルギーに関心のある消費者にブラウザーを怖がらせてはならないという主張である。環境問題は一筋縄で行かない側面があると私は思う。米国地理学会の「ナショナル・ジオグラッフィック」誌によると、地球には今後、数百万年に1度という深刻な氷河期がやってくるという予測結果が判明したという。ところが自動車や発電所から出る二酸化炭素などの温室効果ガスによって温暖化が促進されているため、この氷河期の到来は無期限に延期されているという研究結果があるそうだ。スコットランドのエディンバラ大学のトーマス・J・クローリー教授によると、温暖化が生じていなければ、1万~10万年のうちにカナダ、ヨーロッパ、アジアの大半がいま南極にあるような恒久的な氷床で覆われる可能性があるという。地球温暖化で氷河期が食い止められている、というのは何とも皮肉な話だが、本当なら米国を喜ばす説になるかもしれない。キンケイド氏の論評に戻すと、グロス博士は CO2Stats というベンチャーを共同設立した。これが単なる情報ウェブサイトではなく、営利企業であることをザ・タイムス紙は触れていない。商売がらみの可能性が高い、だから重要な偏見を生む可能性のあるものは、もっと詳しく取り上げるべきだろうと述べている。極めて興味深い記事だったので、かなり衆目を集めたようだが、グーグルが
反論したのは言うまでもない。
ザ・タイムズ紙の「グーグル検索と二酸化炭素排出の関連性が明らかになった」への反論(英文)
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