2025年11月16日

高市早苗首相の台湾有事「存立危機事態」発言の危険

高市早苗戯画
高市早苗コラージュ戯画 ©2025 京都フォト通信

台湾有事は日本が集団的自衛権を行使できる「存立危機事態」になり得るとした高市早苗首相の国会答弁をめぐり、日中の対立の溝が深まっている。中国が日本への渡航自粛を求める注意喚起を出したことを受け、日本政府内では日中間の対立が長期化するとの見方も出ている。中国が台湾を攻撃した場合、日本は自衛隊で対応できると高市早苗が述べたからである。現在の緊張の原因は7日の日本の衆院予算委員会でのやりとりだ。立憲民主党の岡田克也が高市早苗に対し、台湾をめぐってどのような状況が、日本にとって「存立危機事態」にあたるのかと質問した。高市早苗は「戦艦を使って、武力の行使も伴うものであれば、これはどう考えても存立危機事態になりうるケースだ」と答えた。「存立危機事態」とは2015年成立の安全保障関連法に出てくる法律用語で、同盟国に対する武力攻撃が日本の存立を脅かす事態を指す。そうした状況では脅威に対応するため、自衛隊が出動できるのである。この高市の発言に、中国政府は激しく反発。中国外務省は「まったくひどい」と評した。高市早苗は10日、発言の撤回を否定「政府の従来の見解に沿ったもの」と主張した。実に問題多き危うい発言である。

答弁する高市早苗首相
立憲民主党の岡田克也氏の質問に答弁する高市早苗首相(11月7日)©2025 朝日新聞

率直に言って高市早苗は政治家としての能力が極めて低いと思う。「初の女性総理が誕生したことの意義」云々とか言い出して高市早苗のバブル人気を煽る政治学者がいる。この政治学者は「女性総理誕生を喜べなどとは言っていない、女性総理が誕生した意義を認めるべきだと言っているだけだ」などと強弁しているが、もはや詭弁にもなっていない。「頑固」「人の意見を聞かない」――。周囲の高市評だ。党内や霞が関と交友を深めることには一線を引き、「独りで政策の勉強に打ち込む」(周辺)のも独自のスタイルと言える。高市早苗は総裁就任の翌日の10月5日から1か月以上、一度も外で会食をしていない。高市はそれを美学と感じている節もある。1997年に憧れていた英保守党のマーガレット・サッチャー元首相と面会した後、雑誌への寄稿で「親しい友を作ることなく権力の頂点に登りつめたと評されているが、会ってみて納得。私自身も」と綴っている。はフォークランド紛争で派兵したが、高市早苗も台湾有事の際には自衛隊を派遣して戦闘させるつもりなのだろうか。

law
法令:武力攻撃事態等及び存立危機事態における我が国の平和と独立並びに国及び国民の安全の確保に関する法律

2025年11月15日

ジョン・F・ケネディの孫ジャック・シュロスバーグがニューヨーク州議会選挙出馬を表明

Jack Schlossberg
Jack Schlossberg speaks on the Democratic National Convention in Chicago, 2024.

ジョン・F・ケネディのカリスマ性と歯に衣着せぬ物言いで知られる孫、ジャック・シュロスバーグ(1993年生まれ)がニューヨーク州議会選挙への出馬を発表し MAGA の世界はパニックに陥っている。トランプ政権の保健福祉長官である、いとこのロバート・F・ケネディ・ジュニアに対する最も辛辣な批判者がついに参戦したのである。シュロスバーグは「アメリカ建国から250年、我が国は転換期を迎えている。あらゆるレベルで危機的状況にある。ワン・ビッグ・ビューティフル・ビル法案が後押しする生活費危機、勤労世帯が頼りにしている社会保障制度の歴史的な削減だ」とインスタグラムの動画で述べた。「医療、教育、保育、そして汚職危機」「大統領は今年10億ドル近く稼いだ。大統領執務室の中から勝者と敗者を選んでいる。これは資本主義ではなく縁故主義だ」と彼は述べた。「そして、危険な人物が三権すべてを掌握しているという憲法上の危機だ」「彼は市民の公民権を剥奪し、批判者を黙らせている。最悪なのは、こんな風になる必要はなく、常にそうだったわけでもないということだ」と彼は続けた。「私たちはもっと良い待遇を受けるに値し、もっと良い結果を出すことができます。そして、それは民主党が下院の支配権を取り戻すことから始まるのです」とシュロスバーグは述べた。「議会を支配すれば、私たちにできないことは何もありません」とシュロスバーグは述べた。「支配権がなければ、も務めることはできません。私の名前はジャック・シュロスバーグです。私は生まれ育ち、毎日バスで学区の端から端まで通っていた、故郷ニューヨーク第12選挙区の代表として下院に立候補します」「ここは地球上で最も素晴らしい都市の最高の場所です。最高の病院、最高の学校、レストラン、美術館があり、世界の金融とメディアの中心地でもあります」と彼は続けた。「この選挙区には、この選挙区の創造性、エネルギー、そして活力を活かしてそれをワシントンの政治力へと繋げることができる代表者が必要です」「私が立候補するのは、私たちが抱える問題に対する答えをすべて知っているからではありません。ニューヨーク第12選挙区の人々が持っているからです」と彼は言った。「皆さんの苦悩に耳を傾け、皆さんの物語を聞き、皆さんの声を大きくし、ワシントンへ行き、皆さんのために行動を起こしたいのです」とシュロスバーグは語った。

Donald Trump, Robert F. Kennedy Jr., and Jack Schlossberg

シュロスバーグは「故郷のために闘う闘技場以上に素晴らしい場所はありません」 「これから8ヶ月、この選挙戦を通して、できるだけ多くの皆さんとお会いしたいと思っています。街で見かけたら、ぜひ声をかけてください。もし私が皆さんの家のドアをノックしたら、ぜひ話し合いたいと思っています。政治は個人的なものであるべきだからです。近日中に続きをお伝えします。ニューヨーク12の選挙戦でお会いしましょう!」と述べた。シュロスバーグは既に、いとこのロバート・F・ケネディ・ジュニアの危険な反科学的な信念とファシスト的なトランプ政権への支持を容赦なく攻撃することで、世間の注目を集めている。「恥ずべき存在」「嫌な奴」と呼び上院での証言中に「生放送でひどく息が詰まった」と嘲笑した。「彼は保健福祉長官として生死に関わる決定を下す危険な人物だ」とシュロスバーグはインタビューで述べた。「私の言葉を鵜呑みにする必要はありません。今や、確かな実績があります。彼は省庁の職員の4分の1を削減しました。予防接種実施諮問委員会のワクチン専門家全員を解雇し、反ワクチン派に交代させました」と。シュロスバーグはイェール大学とハーバード大学ロースクールを卒業し、インスタグラムで72万8,000人、Xで約17万3,000人のフォロワーを抱えるなど、ソーシャルメディアで既に確固たる地位を築いている。32歳のシュロスバーグは、次世代の民主党指導者の代表と言えるだろう。教育、医療、そして教育への彼の大胆な取り組みは、将来の共和党指導者が重視する政策とは対照的です。若い保守派が恐ろしいナチス・スキャンダルに巻き込まれない週はほとんどないようだ。保守派にはニック・フエンテスのような憎悪の扇動者がいるが、シュロスバーグのような人物がいる。

NBC  Jack Schlossberg, a member of Kennedy political dynasty, is running for Congress | NBC

2025年11月13日

右翼的ポピュリスト高市早苗首相の暴走を懸念する

SanaeTakeichiByJoeBenke
Sanae Takeichi: Editorial Cartoon ©Joe Benke

立憲民主党の辻元清美参院議員が11月5日、BS-TBS「報道1930」に出演し、高市早苗首相の振る舞いについて真意を語った。先月28日、高市早苗首相はトランプ米大統領と米海軍横須賀基地を訪問した際、満面の笑みでサムアップポーズをしたり、ぴょんぴょん跳びはねながら右手を突き上げたりしたことが議論の的に。米国のヘリに乗り米軍基地の原子力空母の壇上で演説したのはマズかったのではという指摘だった。就任直後だったため米側の都合に従わざるを得なかったかもしれないが、相変わらず日本が米国の属国扱いを受けているという印象を残した。高市早苗首相は11月10日の衆院予算委員会で、台湾有事は日本が集団的自衛権を行使できる「存立危機事態」になりうるとの考えを示した自身の国会答弁について「今後、特定のケースを想定したことをこの場で明言することは慎む」と語った。ただ自身の発言そのものは「政府の従来の見解に沿ったもの」として撤回しない意向を示した。確かに「存立危機事態」は集団的自衛権の行使を可能とするための新しい要件として、2014年7月の閣議決定を経て、2015年成立の安全保障関連法によって導入された概念である。一方、中国外務省の林剣副報道局長は同日の定例会見で「日本政府のこれまでの政治的な約束と著しく矛盾する」として「強烈な不満と断固とした反対」を表明し、日本側に「厳正な申し入れと強烈な抗議」を行ったことを明らかにした。首相は7日の同予算委員会で、台湾有事について「存立危機事態」にあたる具体例を問われ「戦艦を使って、武力の行使も伴うものであれば、これはどう考えても存立危機事態になりうるケースだと私は考える」と述べ、台湾有事が存立危機事態にあたる可能性があるか明言を避けてきた歴代政府の見解を踏み越える発言をしていた。「具体的に明らかにすることで国内外で影響が出てくる」などと物議を醸した。

Takeichi & Trump
Sanae Takaichi and Donald Trump in the U.S. Navy's Nuclear-powered Aircraft Carrier ©AFP

11月10日の衆議院予算委員会で、立憲民主党の大串博志氏から「他国の反応も懸念される。撤回や取り消しはしないのか」と問われると、首相は「最悪のケースを想定した答弁だった」などと釈明したが、撤回は否定。一方、具体的な状況への言及は「反省点」だと述べ「今後、特定のケースを想定したことをこの場で明言することは慎む。私の金曜日(7日)のやり取りを政府統一見解として出すつもりはない」と強調した。ところで高市早苗首相は、右翼的思想に共鳴はしているかもしれないが、その本質は「右翼的ポピュリスト」に過ぎず、本当の意味での保守、あるいは右翼とは言えない。社会全体が右傾化している流れに乗るため、あるいは安倍首相の歓心を買うために右翼的言動をしていたが、それは高市早苗首相の確固たる思想を反映したものではないという見方がある。つまり、高市早苗首相の目標は、右翼的思想に基づいた政治の実行ではなく、単に、首相になることに過ぎなかった。その目的のために最も適切な立ち位置をとったのだということになる。この見方に立てば首相になることでひとまずその目的を達成した高市早苗首相は、次なる目的のために政治姿勢を変えることを厭わないはずだ。そして次なる目的は何かといえば、首相の座を守ること、それもなるべく長期にわたってである。古賀茂明氏は雑誌 AERA デジタル版で「私が懸念するのは、極右層を満足させるために高市早苗首相が対中強硬策を選択するのではないかということだ。日本の世論は、この10年で極端に嫌中的傾向を強めている。世論が嫌中なら、中国との関係が悪化しても、政権としての失点にはならない。ただし、前述のとおり、高市早苗首相は、踏み込んだ歴史修正主義的な発言はしないはずだ。中国に厳しい姿勢をとるためにも、韓国との良好な協力関係はなんとしても維持したいと考えるからだ」と述べている。

News Paper 高市首相の「存立危機事態」発言に過敏反応する中国の背景にある習近平主席の外交スタンスの転換

2025年11月12日

目に見えない鳥の飛行経路を可視化した作品で知られる写真家シャビ・ボウの秘技

European herring gulls at Llobregat Delta
European herring gulls at Llobregat Delta, Catalonia
Xavi Bou

シャビ・ボウは1979年にカタルーニャ州バルセロナで生まれプラット・デル・リョブレガートで育った。ボウの自然への愛は幼い頃から祖父と共にロブレガート・デルタの湿地帯を散歩していたことから自然科学に興味を持ち始めた。バルセロナ大学で地質学の学位を取得し、その後写真の道へ進んだ。15年間、広告写真とファッション写真に情熱を注ぎ、技術を習得しただけでなく、後に独自の視点を形作ることになる美的感覚を身につけた。そしてこの知識を真の情熱である自然へと活かすことができたのである。2003年以降はファッションと広告の世界に焦点を絞り、数人の写真家のもとで照明技師として働いた。後に彼独自の視点を形作ることになる美的感覚を身につけた。そして、この知識を真の情熱である自然へと活かすことができたのである。2009年に写真レタッチスタジオを設立した。また4年間、デジタル写真とポストプロダクションを教えた。そして2012年に鳥類学に着手した。プロジェクト "Ornithographies"(鳥類図鑑)は2015年にスタートした。これまでにない方法で自然の美しさを表現したという点が、大きな反響を呼んだ。

Greater flamingos
Greater flamingos at Ebro Delta, Catalonia

世界各地の数々の展覧会で展示され、権威ある国際出版物にも広く掲載された後、バルセロナに拠点を置く鳥類学と自然史を専門とする出版社 Lynx Edicions から同名の書籍が出版された。ボウは野鳥の飛行に焦点を当てて飛行中の野鳥が描く輪郭を捉えること、つまり「目に見えないものを可視化すること」に焦点を当ててきた。当初は美学がプロジェクトの根幹を成していましたが、8年間の歩みの中で、専門家との協力や普及活動の進展により、科学的側面の重要性が増してきました。著者の言葉を借りれば「これは芸術と科学の均衡であり、自然主義的な発見のプロジェクトであると同時に、視覚的な詩の探求でもあるのです」「鳥が飛ぶことで空に描く隠された絵を探している学芸員のような気分だ」という。

Common starling
Common starling, at Llobregat Delta, Catalonia

飛行の種類に応じて、V字編隊のフラミンゴのような規則的なパターン、または空中で昆虫を探しているアマツバメのような混沌とした線が現れることがある。最も愛されている鳥の一つは、群れをなして舞うムクドリの群れである。特にこの群れがタカに背後から襲われている時は、ボウはアトラス・オブスキュラの記事で「彫刻家であるタカが、ムクドリの群れの形をどのように形作るのか、そのアイデアに私は情熱を傾けています」と述べている。このプロジェクトで、ボウは "Murmurations"(さえずり)と呼ばれるマルチメディア・プロジェクトを制作した。作品のほとんどはカタルーニャまたはイベリア半島で撮影されたが、アイスランドとアメリカ合衆国でも活動した。

Audouin's gull
Audouin's gull at Ebro Delta, Catalonia

ボウは数秒間の出来事を一枚の写真に収めるためにクロノフォトグラフィーという技法を用いている。これは19世紀末に考案された技法で、エドワード・マイブリッジ、エティエンヌ=ジュール・マレー、オットマール・アンシュッツといった代表的な人物によって知られています。これは、連続して多数の写真を撮影し、それらを全て一枚の写真に合成するものである。その後、技術と写真の精度を高めるために、プロ仕様のデジタルシネマカメラを使用した。これらのカメラは、1秒間に25~120フレームの高解像度撮影を可能にした。下記リンク先は『シエラ』誌の元編集フェローであるモリー・グリックによる「シャビ・ボウ(1979年生まれ)が鳥の飛行を捉える方法:このカタルーニャ人写真家は目に見えないものを可視化する」です。

Sierra Club Xavi Bou (born 1979) | How Captures the Flight of Birds by Molly Glick | The Sierra Club