標題は大正末期から昭和にかけて一世を風靡した大ヒット歌謡『籠の鳥』の一節である。作曲者は天才的演歌師と呼ばれた鳥取春陽。彼はヴァイオリンの弾き語りをしながら全国を回る街頭演歌師だったが、この作品がレコード会社の目にとまり、1922(大正11)年にレコードに吹き込んだ。1924(大正13)年に大阪の映画会社・帝国キネマ演芸が悲恋物語『籠の鳥』として映画化すると、爆発的な流行となった。籠の鳥といえば旧 Twitter の青い小鳥。イーロン・マスクに買収されて以来、その囚われの身となったが、さぞかし辛い思いをしたに違いない。それがリブランディングによりロゴが X となって籠から解放、というより追い出されたのである。インプレス社のインターネットウオッチ電子版によると、ネットでは見慣れた青い小鳥のアイコンがなくなったことを悲しむ声があふれ、元に戻すためのブラウザー拡張機能やツールが続々と登場しているという。しかし遺影を眺めても、亡き鳥は戻って来ないので虚しい行為だと私は思う。それよりも小鳥ならぬ X を籠の中に収めたイーロン・マスクの今後の動静が気になる。
災害時などの情報発信ツールに活用している自治体もあるし、単なる囀りの場ではなく、情報プラットフォーム。政治家を含め、多くの人々が言論の場として発言している。そもそもイーロン・マスクはドナルド・トランプ前大統領のアカウント凍結を解除したし、共和党の支持者である。そして昨今は人種差別などの発言が目立つという。政治的に色が染まった人物であり、今後の X 社がいかなる方針を打ち出すか不透明である。これは私の邪推に過ぎないのだが、他の事業と紐づけしながら、単なるソーシャルメディアの範疇を超えた、収益企業に育て上げたいのではないだろうか。イーロン・マスクはインタビューで、正しく実行すれば X は銀行業務、支払いなどの計画を含む世界の金融システムの半分を包含する可能性があると述べたという。いくつかの意見では X アプリの可能性は中国の WeChat に似ているとの見方が示されているようだ。いずれにせよ青い小鳥を追い出したイーロン・マスクの性急なりブランディングはユーザーの反感を買っている。言論プラットフォームの透明性も雲行きが怪しく、発言に影響力がある政治家は X から手を引いたほうが良さそうである。
Elon Musk Changes X Logo—And Then Changes It Back Again—As Twitter Rebrand Evolves
0 件のコメント:
コメントを投稿