ウィキペディアによると、サチーン・リトルフェザー(1946–2022)はアメリカ先住民の女優、活動家で、カリフォルニア州サリナス出身、アパッチ族とヤキ族の血を引く父と白人の母の間に生まれたという。女優としては主に端役で『誇り高きインディアンの英雄・ウィンターホーク』など数本の映画に出演したほか、アメリカ先住民の権利尊重の活動家として活動した。中でも注目を浴びたのは、1973年の第45回アカデミー賞授賞式であった。マーロン・ブランド(1924–2004)は『ゴッドファーザー』でアカデミー主演男優賞を受賞したが、 彼はハリウッドのアメリカ先住民に対する扱いが不当であるという理由で受賞を拒否、授賞式にも席せず、代わりに自分の書いたスピーチをアメリカ先住民の衣装を着た彼女に読ませようとした。ブーイングを受けたため、彼女はブランドのスピーチを壇上で読むことは出来なかったが、後に報道陣に対して読み上げた。このことで彼女は映画界でブラックリストに載せられ、芸能界からも締め出された。以上がウィキペディアの説明で、私もマーロン・ブランドのアカデミー主演男優賞拒否の件はよく憶えている。2022年10月、ニューヨーク・タイムズ紙は、長年にわたる何千もの記事で紹介された「アパッチの活動家であり女優」を無批判に悼んだ。ところが最近 Sacheen Littlefeather was a Native American icon. Her sisters say she was an ethnic fraud(サチーン・リトルフェザーはアメリカ先住民の象徴だった。彼女の姉妹は、彼女は民族的な詐欺師であったと言う)と題した、2022年10月25日付けサンフランシスコ・クロニクル紙電子版の衝撃的な記事に出くわした。
リトルフェザーはクロニクル紙の最後のインタビューで、アカデミー賞のステージに立った理由を「インディアン女性である私自身のためではなく、私たち、すべてのインディアンの人々のために心を語った...。私は真実を語らなければならなかったのです。それが受け入れられるかどうかは別として、ネイティブの人々の代表として話さなければならなかったのです」ととクロニクル紙に語った。しかしリトルフェザーはその夜、真実を語らなかった。実の姉妹であるロザリンド・クルスとトゥルーディ・オルランディは、リトルフェザーがアメリカ先住民ではないと暴露したのである。「嘘だ」とオルランディは同紙独占インタビューに答えた。「私の家族はメキシコから来た。そして父はオックスナードで生まれたんだ」。そして「詐欺だ」とクルスも同意した。「部族民の遺産に嫌悪感を抱く。それに......私の両親を侮辱するものです」と。姉妹は別のインタビューで、自分たちはネイティブ・アメリカン/アメリカン・インディアンの末裔ではないと語っている。彼女たちは父方の血を引くヒスパニックであり、自分たちの家族は部族のアイデンティティを主張することはないと語っている。
オルランディは、姉が詐称したことについて「つまりメキシコ系アメリカ人ではプリンセスにはなれないということです」「彼女の中では、ヒスパニックであることよりも、アメリカン・インディアンであることの方が格上だったんです」と分析している。個人的な利益のためにネイティブであることを捏造したプレテンディアンと呼ばれる人々がいて、リトルフェザーはその中の一人であるようだ。アリゾナ州にある連邦政府公認の部族で、スペイン植民地支配から隔離された長い歴史を持つホワイトマウンテンアパッチの血を引くという彼女の主張は興味深い。リトルフェザーは1946年『怒りの葡萄』の著者ジョン・スタインベックの故郷であるサリナスで、マリー・ルイーズ・クルーズという名前で生まれた。両親はマヌエル・イバラ・クルスとジェロルディン・バーニッツである。妹たちは、自分たちの家族はこの遺産を主張することなく育ってきたと話してくれた。姉の話を聞いて、クルーズはホワイトマウンテンアパッチ当局に、自分や家族の誰かが部族に属しているかどうか確認した。しかし登録の記録はなかったという。またリトルフェザーが語った自分たちの暴力的で貧しい生い立ちについても、明らかに虚偽であると主張している。彼らの家族には、何百年も前の先住民の血が混じっているのだろうか? メキシコ系住民の多くはそうである。しかし先住民のアイデンティティはそれ以上に複雑である。
遠いフランス人の血を引く米国市民が、フランス国籍を主張することはできない。そしてその人がアカデミー賞のステージでベレー帽をかぶり、フランス国家を代表して発言することは馬鹿げている。ホワイトマウンテンアパッチは、非常に特殊な部族であり、メンバーシップのルールも非常に特殊である。その遺産を偽り、スポークスパーソンになるために利用し、その寓話を補強するために、虐待するインディアンの父親に関する危険な表現に頼ったことは、実際に損害を与えたのである。リトルフェザーがアメリカン・インディアンであることを主張しなければ、リトルフェザーの人生やキャリアはもっと良くなっていたと思うかと尋ねると、オルランディは「サチーンは自分のことが好きじゃなかった。メキシコ人であることが嫌だったんです。だから、そう、他の人を演じた方が彼女にとって良かったんだ」と語りは「彼女はファンタジーの中で生き、ファンタジーの中で死んでいった」と続けた。なお英国ガーディアン紙がクロニクル紙のインタビュー記事を転載して ‘I promised Brando I would not touch his Oscar’: the secret life of Sacheen Littlefeather(ブランドと約束したんだ、オスカーには触れないって」:サチーン・リトルフェザーの秘密の生活)という記事を掲載している。現代史こそ実は複雑で理解が難しいと言われるが、サンフランシスコ・クロニクル紙のインタビューの内容を見ると、誠に残念ながらサチーン・リトルフェザーの出自に疑問を持たざるを得ない。
Sacheen Littlefeather wasn't Native American, say her sisters | San Francisco Chronicle
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