2019年6月25日

高額で売買される生け捕りのイルカ


ザ・コーヴ (2009年)
静岡新聞によると伊東市のいとう漁協が水族館などで展示飼育するための「生体捕獲」に限定した上で、本年度漁期(10月1日~来年3月31日)にもイルカの追い込み漁を再開する方針を固めたという。国内で追い込み漁を行うのは同市と和歌山県太地町の2カ所になる。いとう漁協には毎年、同庁からの捕獲枠が付与され、昨年はバンドウイルカ34頭、オキゴンドウ11頭などの捕獲が認められた。だが2004年を最後に、捕獲数ゼロが続いているそうだ。その追い込み漁だが、2015年、世界動物園水族館協会(WAZA)がを残酷だと批判、日本動物園水族館協会(JAZA)に除名勧告を行った。映画『ザ・コーヴ』(The Cove 2009)の影響が背景にある。

ピーター・シンガー(1986年)
これを受け JAZA は追い込み漁で捕獲されたイルカの購入を禁止した。会員資格がなくなった場合、希少動物の繁殖などで海外の情報を得にくくなる恐れがあるからだという。ところがこれに反発した新江の島水族館などが、JAZA を退会するという騒ぎに発展した。水族館ではイルカの人気が高く、イルカショーを目玉にしているところも多いようだ。追い込み漁で捕獲されたイルカは、国内ばかりではなく、中国などの水族館も購入しているという。朝日新聞によると昨年6月オープンした新潟県上越市の市立水族博物館は、シロイルカ2頭とバンドウイルカ4頭入手のため9325万円を投じたようだ。集客力を期待した投資なのだろう。いとう漁協のイルカ漁再開は、生きたイルカは水族館などから一定の需要が見込めるという計算があるようだ。イルカの飼育とそのショーに関しては「人工プ―ル飼育では野生状態より寿命が短い」「狭い水槽に閉じ込めるのは可哀そうだ」「イルカに芸をさせることは動物虐待だ」「そもそもヒトが他の動物を飼育展示するのはその権利を奪っている」などの意見があることを留意しておくべきだろう。動物の権利に関し指導的かつ先鋭的な役割を演じてきた、プリンストン大学のピーター・シンガー教授は、動物が痛みを感じたり、喜びを味わったりすることができるかが鍵だという。そして苦痛を感じる動物の範疇の中に魚を入れている。魚を食べるなと言われたらきっと困惑するだろうけど、看過できない警鐘だ。京都水族館で観たことがあるが、イルカショーは反対である。単なる娯楽に過ぎなく、水族館が持つべき本来の目的に反すると感ずるからだ。

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