6月15日午前7時30分(日本時間正午)のホルムズ海峡周辺の船舶
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タンカーの消火にあたるイラン海軍艇 |
船舶追跡サイト
VesselFinder でチェックした、現地時間6月15日午前7時30分現在のホルムズ海峡付近の様子である。オレンジ色がタンカーで、ペルシャ湾からオマーン湾にかけて夥しい数の船舶が航行している。13日朝、ホルムズ海峡を通ってアラビア海に向かっていた2隻の船が何ものかによって攻撃を受けた。アラブ首長国連邦のアブダビを出港したノルウェー所有のフロント・アルタイル号と、サウジアラビアのジュバイルを出港した、日本の国華産業が運行するコクカ・カレイジャス号で、現場はイラン南部のバンダルジャスク港沖25カイリ(約46キロ)だった。トランプ米大統領は、米FOXニュースとのインタビューで「イランがやった」と名指しで批判した。ポンペオ米国務長官も会見で「収集した情報や使用された武器などを総合的に分析した結果、イランに責任がある」と断言した。米中央軍はイランの最高指導者直属の精鋭部隊「イスラム革命防衛隊」の船舶が日本のタンカーに接近したとするビデオ映像を公開し「不発だった吸着型の水雷を回収している様子」と主張した。回収した「不発弾」をどの港に運んだかを明かせば、何処の国の作業船か判明する。当然追跡したと思われるので、主張を裏付けたいなら発表すべきだろう。日本経済新聞6月14日付け電子版によると、英政府も「イラン革命防衛隊の一派が2隻を攻撃したことはほぼ間違いない」と発表した。米国同様「独自の情報分析に基づき、確実にイランに責任がある」と結論づけたという。しかし決定的な証拠をまだ示していない。
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ハーメネイー師(右)に仲介提言を一蹴された安倍首相 |
奇しくも安倍首相が「緊張緩和のため」と称してテヘラン訪問中に起きたわけだが、トランプ米大統領と親密であることはイランでもよく知られている。やすやすと提言を受けるはずはない。安倍首相と会談した最高指導者ハメネイ師は「トランプがメッセージを交換するに値する人物だとは思われない」「彼への返事はない。回答しない」と述べて、安倍首相のトランプに依頼された米国との関係修復のための特使としての務めを一蹴したのである。結局なんの外交成果を得られず帰国したが、きょう15日付けの米紙ウォールストリート・ジャーナル日本語版は「両国の対立が一段と不安定さを増すなど、中東和平の調停役としてのデビューは厳しい結果に終わった」と報道。首相の中東外交デビューが、痛い教訓になったと皮肉っている。井筒俊彦『イスラーム文化―その根柢にあるもの』(岩波文庫1991年)で、著者は「接近するイスラームと受け止めない日本、イスラームが歴史的現実としてわれわれに急に近づいてまいりました」と書いている。第2次オイルショックからホメイニー師のイラン革命、そして約8年間も続いたイラン・イラク戦争。これらによってイスラームの政治への関心が高まり、日本人、とりわけ経済人に影響を及ぼし、中近東への注目を促すものとなった。こうして培われた相互理解を、イランと敵対するトランプ米大統領の使い走りになり果てた、安倍首相自身の政治的延命あるいはレガシーのために、友好関係を台無しにして欲しくないと痛感する。
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