9月。和歌山県太地町のイルカ漁が解禁された。同町のイルカ漁が海外に知られるようになったのは、アカデミー賞を受賞した映画
「ザ・コーヴ」がきっかけだった。私は国内での公開が待ちきれず、米国盤の DVD を購入して鑑賞、血で赤く染まった入江の光景にギョッとした記憶がある。公開以来、映画に刺激された自然保護運動家が同町を訪れるようになり、漁民との軋轢が生じるようになった。しかし8月27日付け毎日新聞によると、来町する反捕鯨団体の活動家が減っているという。その要因のひとつとして反捕鯨団体シー・シェパードがメンバーを派遣しなくなったからだという。イルカのような小型鯨類は
国際捕鯨委員会(IWC)の管轄外である。外房和田浦のツチクジラ漁は、解体作業を公開しているが、残酷という非難の声は聞かない。にも関わらずツチクジラよりも遥かに小さいイルカの捕獲がやり玉に挙がったのは、映画の影響を受けただけの知識だったと思われる。血の海といえばフェロー諸島のゴンドウクジラ漁を思い出す。上掲のイラストから Pilot Whale を探して欲しい。ゴンドウクジラが小型鯨類に属していることが理解できると思う。8月16日、フェロー諸島のひとつ、スヴロイ島の入江が血で真っ赤に染まった写真が
BBC 電子版に掲載された。
撮影したのは英国ケンブリッジ大学の学生、アラステア・ワード君で、苛酷な写真が含まれていたため、自然保護運動家や動物愛護活動家らが怒りの声を上げたようだ。翌日の8月17日付け
CNN 電子版によると、同諸島自治政府当局は反対運動に対し「ゴンドウクジラの肉と脂肪は、島民の食生活にとって重要な部分を占めている」と反論したという。イルカと同様ゴンドウクジラも IWC の規制対象外だし、
北大西洋海産哺乳動物委員会(NAMMCO)も、2012年にフェロー諸島の捕鯨は持続が可能と結論している。というわけで捕鯨が続いているのだが、反対運動もまた執拗に続いている。確かに動物を殺すことはできれば避けたい。動物もまた当然のことながら生きる権利があるからだ。しかし
ヴィーガン(絶対菜食主義者)にならない限り、殺した動物を食べることは避けられない。殺生は生きものを殺すという意味だが、殺して生きることと思うことがある。いわば人間が人間として生きてゆくための不条理ではないだろうか。
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