2018年8月25日

ニコンがミラーレスカメラ Z に新マウントを採用

フランジバック 16mm 内径 55mm のニコン Z マウント

株式会社ニコンイメージングジャパンが8月23日、大口径の新マウントを採用したフルサイズのミラーレスカメラ Z7 と Z6 および NIKKOR Z レンズを発売すると発表した。ミラーレスというのは文字通りミラーがない一眼カメラである。一眼レフカメラのファインダーは 45°のミラーで光線をペンタプリズムに送るシステムになっている。従ってミラーを外せば、プリズムの分だけ軽くなり、ミラーが跳ね上がる際の衝撃や音が皆無になる。しかもミラーボックスがなくなるので筐体を小型化できるメリットがある。レンズマウント面と撮像素子の距離をフランジバックと呼ぶが、これが短くなるのでレンズ設計の自由度が増す。デジタルカメラの特性を考えればミラーレスが一番合理的だと思うが、大手カメラメーカーはやや消極的だったと思われる。スポーツ写真撮影などの場合、やはり光学ファインダーのほうがレスポンスが早かったからである。ところが積極的にミラーレスカメラの開発に取り組んだのが、コニカミノルタの技術遺産を受け継いだ「第3のカメラメーカー」ソニーだった。その成功によりカメラ業界が動き出したと言えるだろう。

フランジバックとレンズマウント内径の比較
マウント名カメラの分類フランジバックマウント内径撮像素子サイズ
NIKON Zミラーレス16mm55mmフルサイズ
NIKON F一眼レフ46.5mm46mmフルサイズ
SONY Eミラーレス18mm46mmフルサイズ
CANON EF-Mミラーレス18mm47mmAPS-C
CANON EF一眼レフ44mm54mmフルサイズ
FIJIFILM Xミラーレス17.7mm43.5mmAPS-C
LEICA SLミラーレス20mm48.8mmフルサイズ
LEICA Mレンジファインダー27.8mm43.9mmフルサイズ

表はレンズマウントを比較したものだが、ニコン Z シリーズが新たなマウントを採用したことにある種の驚きを感ずる。F マウントのままでもフルサイズのミラーレスカメラを作ることができる。そうすれば従来のニッコールレンズ所有者が容易にミラーレスカメラに移行できるからだ。それではスペックを見てみよう。F マウントのフランジバックは 46.5mm だが、Z マウントでは 16mm と大幅に縮まっている。内径は 46.5mm から 55mm と一気に大きくなっている。フランジバックの縮小は冒頭に書いたようなメリットがあるし、マウント内径の拡大は大口径レンズの設計を可能にする。ニコンは開放F値 0.95 焦点距離 58mm の明るいレンズを開発しているそうだが、新しいマウントゆえに可能になったのだろう。従来の F マウント一眼レフがただちに消えるわけではないが、ユーザーに戸惑いが生ずるかもしれない。そのリスクを跳ねのけた大英断と言えるだろう。ニコンは F マウントを死守して生き長らえてきたと言っても過言ではない。初代ニコン F からのユーザーにとっては感慨を禁じ得ない。なおライバル社キヤノンの EF-M マウントは APS-C 用で、フルサイズセンサーには厳しいらしい。キヤノンの開発者が「デジカメWatch」のインタビューで「EF-M マウントでフルサイズセンサーを搭載するのは難しい」と回答しているからだ。フルサイズカメラは従来の EF マウントのままになるという観測もあるようだ。しかし今回のニコンの発表が何らかの影響を与えるのではないだろうか。

camera  報道資料:フルサイズミラーレスカメラ「ニコン Z7」「ニコン Z6」を発売(2018年8月23日)

0 件のコメント: