2017年9月7日

レンズを通した恋:アンリ・カルティエ=ブレッソンとマルティーヌ・フランク

Henri Cartier Bresson and Martine Franck ©1971 Josef Koudelka

ポール・ヒル&トーマス・クーパー著『写真術―21人の巨匠』(晶文社1988年)は写真界のレジェンドとの貴重な対話集である。「なぜ写真に撮られることを拒み続けてきたのですか」という問いに対し、アンリ・カルティエ=ブレッソン(1908-2004)が「目だったり気づかれたのでは観察できない。それ以上の理由はない」と答えているのが非常に興味深い。とはいえ、ネット検索してみると、確かに若いころの写真はごく僅かだが、歳を重ねてからのものは結構目にすることができる。その多くはライカを構えた写真だが、この写真を偶然ソーシャルメディア Facebook で見つけた。ブリオデジャネイロ在住の写真編集者フェルナンド・ラベロ氏のタイムラインに「マルティーヌ・フランクとアンリ・カルティエ=ブレッソン1971年」と題して掲載されている。ソ連軍がプラハに侵攻、所謂「プラハの春」の写真でロバート・キャパ・ゴールドメダルを受賞したことで知られる、マグナムのヨゼフ・コウデルカが撮影した写真である。パリ郊外だろうか、腕を組んで傍らに寄り添う女性、マルティーヌ・フランク(1938-2012)もマグナムに所属していた著名な写真家だった。2014年、編集者のリチャード・コンウェイが「レンズを通した恋」と題した記事をタイム誌 LightBox に寄せている。それによると2010年、マルティーヌ・フランクはテレビ司会者のチャーリー・ローズのインタビューを受けたが、どのようにして二人が恋に落ちたか語ったという。「マルティーヌ」と声をかけた彼は「コンタクト・シート(密着焼き)を持って来て見せて欲しい」という殺し文句を囁いたというのだ。意気投合した二人は1970年に結婚したが、ブレッソンの二人目の妻となった彼女は、なんと30歳も年下だった。しかしその年齢差は恋の障害にならなかった。ブレッソンが他界した2004年まで、仲睦まじい暮らしを共にしたのである。

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