2017年9月11日

左利きミュージッシャンの不思議な物語


台所の冷蔵庫を移動したのはよいが、困ったことに扉が開け難くなってしまった。把手が左側にある、右開きの扉なのだが、大きく開かないと中のものを取り出せない。一般にトイレその他の片開きの扉はこのようになっている。この形式は、右手で開けるのが便利なので、きっと右利き用なのだろう。左右で分からないのは自動車道である。米国はじめ多くの国が右側通行を採用しているが、日本は左側通行である。これに合わせて国産車は運転席が右側にある。今はAT車が増えたが、私は変速シフトレバーは左手のほうが良いような気がする。すると国産車は右利き用と思うが、そういう議論は余り聞いたことがない。同じような理屈で考えると、楽器は不思議である。フィドルやチェロ、ギターなど、左指で弦を押さえるものを右利き用としているからだ。利き腕のほうの指で弦を押さえても良いのではとは思うが、そうでもないようだ。

John and James Kelly:
ジョンとジェイムス兄弟はふたりともアイルランドの首都ダブリン生まれだが、父親のジョン・ケリー・シニアは西クレア地方でよく知られたフィドラーだった。従ってふたりはクレアスタイルのフィドル奏法を継承している。このジャケットで分かる通り、ジェイムスは左利き用のフィドルを使っている。フィドルは左右対称に作られていない。表板の振動を裏板に直接伝える魂柱(サウンドポスト)が高音弦寄りにあるからだ。この位置がフィドルをフィドルたらしめてるキーポントであろうと思う。だから左利き用は単にブリッジの形状や、糸巻きの位置を変更するだけでは済まない構造になっていると思うのである。楽器自体を見たこともないので、だからそれを使ってる演奏者を実際に見たことがない。クラシックのオーケストラなどの場合、隣の奏者と弓がぶつかってしまうのではといらぬ心配をしてしまう。余談ながら左利きが有利な楽器はホルンだそうである。左手でレバ―を押して演奏するからだろう。

Live at the Fillmore East
左利きといえばジミ・ヘンドリックスを思い出さずにはいられない。このアルバムは1969年の大晦日から、翌元旦にかけてのライブをピックアップしたものだ。肝心のギターだが、手にしてるフェンダー・ストラトキャスターは、糸巻きの位置で分かるように右利き用である。つまり弦の上下を逆さまに張り替えて使っているようだ。アコースティックギターの場合だと、ナット(上駒)やブリッジの形状が違うので、右利き用をそのまま左利き用にできない。私は電気ギターは触ったことがないのでよく分からないのだが、なんらかの改造はしたのではと想像している。

右利き用のギターの弦を張り替えずに、そのまま演奏したのがエリザベス・コットンだ。彼女は1893年、ノースカロライナに生まれたが、有名になったのは晩年である。民謡研究家チャールズ・シーガーの娘ペギーが迷子になったが、家に届けたのがエリザベスだった。その縁でマイク・シーガーが1958年、Folkways のために録音をした。マイクの異母兄弟がピート、そして父親はチャールズ・シーガーである。そのピート・シーガーが1960年代に司会を務めたテレビ番組「レインボウ・クエスト」にゲスト出演したエリザベス・コットン。絶妙なフィンガーピッキングを聴くことができる。

YouTube  Elizabeth Cotten live on Pete Seeger's Rainbow Quest TV Show

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