上賀茂神社で市バスを降り、明神川沿いに東に向かって歩く。この辺りは社家(しゃけ)町という街並みを形成している。それぞれの門前に石の小橋がかかり、独特の雰囲気を醸し出している。やがて道は川と別れ、しばらく歩くと京都市指定有形文化財の井関家に着いた。門をくぐると鳥居型の内玄関があり、ちりめんを使った香袋や匂い袋などの手作り商品が並んでいる。竹の井戸蓋の上に何気なく置かれたちりめん作りの椿が心憎い。視線を落とすと、鉢植えのフタバアオイ(双葉葵)が見えた。この葉は葵祭に使われるので、カモアオイ(賀茂葵)という別名がある。井関家は代々上賀茂神社に仕えていた社家で、賀茂十六流のうち「直」の流れに属するそうだ。上賀茂神社の摂社、大田神社はすぐ近くにある。境内東側の池は「大田の沢」と呼ばれ、国の天然記念物、野生のカキツバタ(杜若)の群生で有名だ。
井戸と賀茂葵 井関家(京都市北区上賀茂北大路町)Fujifilm Finepix X100
大田の沢の杜若 大田神社(京都市北区上賀茂本山)
平安時代の和歌の大家で『千載和歌集』の編者として知られる藤原俊成がこのカキツバタを「神山や…」と標題のように歌っているいるが、これまた有名な話である。英文のウェブサイト The Tale of Genji は次のように英訳している。
平安時代の和歌の大家で『千載和歌集』の編者として知られる藤原俊成がこのカキツバタを「神山や…」と標題のように歌っているいるが、これまた有名な話である。英文のウェブサイト The Tale of Genji は次のように英訳している。
Mountain of gods, irises of Ota marsh,池畔に着くと早速愛用のX100を取り出した。カメラを右に振ると、今様の風情がない民家が写り込むし、左に振ると参詣客の派手な色のジャンパーが入ってしまう。これはやはり単焦点レンズと欠点といってよいだろう、ズームレンズのように撮影段階でトリミングができないからだ。路上のキャンディッドなら、自分自身が動いて距離を縮めたり伸ばしたりすればよいが、撮影場所が固定され勝ちの風景写真はそうはいかない。あれこれ思案しているうちに、俄かに空が暗転、激しい雨になってしまった。慌てて隣の児童公園に仮設されてるテントに逃げ込んだが、雷鳴が響きわたり、霰(あられ)が降ってくる始末。しかし、いわば通り雨。しばらく待つと雨が上がったので、大急ぎで池に戻った。人影がないほうが良いからだ。再びカメラを構えると、雲が切れて一条の光線が池を走り抜けた。写真は光線次第、光画とは言い得て妙ではある。(写真はいずれも画像をクリックすると拡大表示されます)
people's deepest wishes
can be seen in their color
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