2022年4月23日

ロシアのプーチン大統領に反故にされたブダペスト覚書

Vladimir Putin
Vladimir Putin, President of Russia, Illustrator unknown

ロシア軍のウクライナ侵略以降、別の世界を生きるようになった人々が増えているようだ。反新型ワクチンを訴える過激な団体の「陰謀論」にはまった人々と共通している。ウラジ―ミル・プーチン大統領はネオナチの暴力と支配からウクライナの人々を解放する英雄であり、ブチャをはじめとする民間人の大量虐殺はウクライナの自作自演であり、アメリカはウクライナと致死性の生物兵器や化学兵器を開発している、といったような。ロシアのディスインフォメーションがじわじわと効いている証拠である。そしてまた「どっちもどっち論」を正当化する格好の材料になっている面がある。首都キーウ近郊のブチャでの大量虐殺についても、自作自演説が出回った。「ネットの言論空間の方は、右と左が斉唱で『どっちもどっち論』叩きに血道を上げ『ロシアを一方的に非難せよ』と咆吼の声を上げている。ヒステリックな絶叫の嵐が一段とボルテージを上げている」というブログ記事を最近目にした。以下のツイートなどが伏線にあるようだ。どこがヒステリックなのだろうか。

石垣のりこは立憲民主党の国会議員だが「しかし残念ながら『憲法を守ろう』『戦争をやめよう』という掛け声で野党共闘を支援される人々の中には「ロシアもウクライナもどっちもどっち」論に陥ってしまった方が散見されます。極めて残念です。日本国憲法の崇高な理念を毀損していると言わざるをえません」という主張を支持したい。ところでウクライナ情勢を巡り、多国間による2つの「合意」が焦点となっている。ロシアはウクライナ東部紛争の和平への道筋を示した「ミンスク合意」の履行を迫る。一方の欧米はロシアこそが過去に結んだウクライナの安全を保証する「ブダペスト覚書」に違反していると批判している。拙ブログエントリ―「ミンスク議定書Ⅱ合意を巡る魑魅魍魎」で書いたように、2021年10月末のウクライナ軍のトルコ製攻撃ドローンによるドンバス地域への攻撃がプーチン大統領による開戦の口実となった。

Budapest Memorandum
The Budapest Memorandum on Security Assurances for Ukraine ©2017 Oleh Smal

ウクライナ戦乱が勃発した直接の原因が、ゼレンスキー大統領による「ミンスク議定書Ⅱ」を履行しない方針の明示だったという見解はやはり苦しいと思う。ブダペスト覚書(ウクライナの核兵器不拡散条約への加盟に伴う安全保障に関する覚書)とは、1994年12月5日にハンガリーの首都ブダペストで開催された欧州安全保障協力機構(OSCE)会議において、アメリカ合衆国、ロシア、イギリスの核保有3カ国が署名した覚書である。ベラルーシ、カザフスタン、ウクライナが核不拡散条約に加盟したことに関連して、協定署名国がこの3国に安全保障を提供する、という内容のものであった。しかしロシアのウラジーミル・プーチン大統領は、2014年の最初のウクライナ侵攻で、ブダペスト覚書を死文化した。だがウクライナ政府は、ブダペストの裏切りを忘れていない。ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は2022年2月、ミュンヘンで行った演説でその点を厳しく指摘していた。覚書の概要邦訳はインターネット百科事典「ウィキペディア」で読むことができるが、下記リンク先の国連の条約部門ページに原文などの詳細な記述がある。

United Nations  ウクライナの核兵器不拡散条約への加盟に伴う安全保障に関するブダペスト覚書(英文)

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