スミソニアン誌電子版2017年2月13日付けの記事「知られざるアフリカ系アメリカ人カウボーイの歴史」によると、カウボーイの4人に1人はアフリカ系アメリカ人だったという。アフリカ系アメリカ人のカウボーイを描いた数少ない作品としては、ピューリッツァー賞を受賞したラリー・マクマートリー(1936–2021)の小説を原作とした、1989年のテレビ映画『ロンサム・ダブ』がある。名優ダニー・グローヴァー(1946-)が元奴隷からカウボーイになったジョシュ・ディーツを演じた。黒人カウボーイは、19世紀に奴隷から派生したもので、農場や牛の世話をするための安価な土地を探していた白人入植者によってもたらされのである。カウボーイの存在は15世紀にまで遡る。奴隷が主人と一緒に現在のテキサスに渡ってきたのは、19世紀の1800年代になってからであった。テキサスは、スペイン領、メキシコ領を経て、最終的に米連邦の一部となった。メキシコ人は1820年代には奴隷制度を禁止していたが、白人入植者は報復の恐れもなく奴隷を連れてきた。入植者たちが南北戦争に参戦している間、奴隷たちは土地を維持し、牛の世話をしていた。
Nat Love in his autobiography (1854–1921) |
奴隷解放宣言により、元奴隷たちには労働に対する報酬が求められるようになった。エレベーターの運転や配達人など、数少ない職業の選択肢があったが、開拓地に行ってカウボーイになることを選んだ人も多かった。カウボーイの需要がピークに達したのは、牧場主が北方で自分の牛を提供し始めた時だった。
Smithsonian Folkways SFW40224 |
鉄道が整備されていなかったため、牛はカンザス、コロラド、ミズーリなどの州に物理的に輸送されなければならなかったのである。アフリカ系アメリカ人のカウボーイたちは、馬に乗ったまま荒々しい地形でこれらの群れを寄せ集めるスキルを持っていた。そして土地を守っている先住民族から侵略者と思われこともあったようだ。しかし彼らは、白人のカウボーイたちとお互いに心を通わせていた。奴隷生活の後、厳しい現実に直面した後には、仲間意識が必要だったのである。元奴隷でカウボーイになったナット・ラブ(1854-1921)は、自叙伝『ナット・ラブの人生と冒険』 の中で「彼らは恵まれない仲間に毛布や最後の食料を分け与える準備が常にできていて、カウボーイの生活で絶えず起こる多くの困難な状況において、常にお互いに助け合っていました」と述べている。なお、アフリカ系アメリカ人のシンガー&ソングライター、ドム・フレモンス(1982-)が2018年にCDアルバム『ブラックカウボーイ』をリリースしている。西部開拓時代の黄金期の音楽、文化、そして複雑な歴史に敬意を表した作品。この種のものとしては初めてとなる音楽アルバムで、フレモンズはアメリカ人のアイデンティティの重要な部分を探り、再分析している。紹介されている歌と詩は、リスナーを旧西部のトレイルからレールへの明るい旅へと誘う。アメリカ合衆国の建設に貢献した何千人ものアフリカ系アメリカ人の開拓者たちの足跡を辿っている。
The Lesser-Known History of African-American Cowboys | Smithsonian Magazine
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