Edward Weston: Nudes by Charis Wilson (Author) Edward Weston (Photographer) 1977
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晶文社(1988年) |
写真に関する本を読むのが好きだ。とりわけポール・ヒルおよびトーマス・クーパー著『写真術―21人の巨匠』(晶文社)は近代写真史を考察する上で示唆に富み、座右の一冊と言っても過言ではない。登場するのはマン・レイ、ブラッサイ、アンリ・カルティエ=ブレッソン、アンドレ・ケルテス、ジャック=アンリ・ラルティーグ、ユージン・スミス、イモジェン・カニンガム、ポール・ストランドなど21人。彼らと実際に会い聞き書きしたインタビュー集である。写真との出会いから手法や思想、人生哲学にいたるまで、20世紀写真史の生きた証言集と言っても過言ではない。何よりも一般の歴史書が掬い取れそうもない、エピソードに溢れているのが最大の魅力になっている。ブレッド・ウェストンは父エドワードについて「いつも身近にいて、何年もの間、一緒に旅し、一緒に撮影した。何度か同じ女の子を追いかけたことさえあった」と述懐している。エドワード・ウェストンは私が最も敬愛する写真家のひとりだが、やはりこの下りは興味深い。ウェストンの名声は、たぶんにモデル兼助手となった作家のカリス・ウィルソンの功績が大だと私は想像している。カリスがモデルになったときは、ウェストンは結婚していたが、ふたりは一緒に住むようになる。1939年に出版された『エドワード・ウェストンとカリフォルニアを見る』のテキストはカリスが執筆した。この本によって財政的に救われたウェストンはカリスと結婚する。ウェストンは1958年に他界したが、彼女は写真集1977年に出版された『エドワード・ウェストン・ヌード』に素晴らしい解説文を寄せている。
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Imogen Cunningham - Nude (1932) |
マン・レイによると、ユジューヌ・アッジェに新式の印画紙でプリントするから乾板を貸して欲しいと頼んだ。ところが「長持ちさせるものではない」と断られる。アッジェのプリントは食塩水で定着、光に晒すと褪色するものだった。というのはいつまでも客に長持ちする写真を持っていては困るという理由だった。マン・レイによれば、アッジェは単純な男で、ほとんど世間知らずだったという。だから「神話を作るつもりはない」と断言している。ウェストンやアンセル・アダムスが結成した「グループf/64」について、イモジェン・カニンガムは「あれはそんなに素晴らしい展覧会ではなかった」と振り返っている。今日、伝説のグループとして名高いが、内部にいたカニンガムは、サンフランシスコで見た作品展を「あんまりいい気分になれなかった」と証言しているのである。斯々然々(かくかくしかじか)で話は尽きない。ところで私は見損なってしまったが、勅使河原宏監督作品『十二人の写真家』と題した映画がある。すでに廃刊になっているが、写真雑誌『フォトアート』創刊6周年を記念して制作された作品で、木村伊兵衛、三木淳、大竹省二、秋山庄太郎、林忠彦、真継不二夫、早田雄二、浜谷浩、稲村隆正、渡辺義雄、田村茂、土門拳の12人の仕事現場を捉えたドキュメンタリーだった。すでに全員が他界しているが、一時代を築いた日本の写真家の証言が、書籍として残されなかったことが惜しまれる。
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