2019年12月9日

ジョージ・オーウェル『カタロニア讃歌』『動物農場』『一九八四年』の系譜

ジョージ・オーウェルは1941年8月から1943年11月まで BBC で働いた

岩波文庫(1992年)
ジョージ・オーウェル(1903-1950)は1941年から43年の間にスタッフ番号 9889 としてBBC(英国放送協会)の従業員として勤務した。東洋部インド課のトークプロデューサーで宣伝番組の制作に従事した。1984年にオーウェル自身が作成したトークの原稿や番組台本や書簡などが収録されている『戦争とラジオ―BBC時代』が発見された。これは偶然だが『一九八四年』と重なる。この本には、戦時下の BBC の検閲がどういったものか、ということも書かれている。また『一九八四年』に出てくる、真理省のモデルとされている、ロンドン大学の総合図書館セネット・ハウス・ライブラリー(Senate House Library)の写真も載っている。オーウェルの作品の中で、最も著名な小説『動物農場』(1945年)『一九八四年』(1949年)がこの頃の体験をもとに創造されたことがわかる。1998年から2014年まで「BBCラジオ4」のプレゼンターだった英国人ジャーナリスト、マーク・ローソン(1962-)は「オーウェルの散文の平易、明快さは BBC に従事する前に培われたが、放送に課せられた時間制限と、読者の目と放送の聴取者の耳に引っ掛かるように、言葉と骨組みを簡略化することで完成した」と書いている。その下地になっているのは、ルポルタージュ『カタロニア讃歌』(1938年)ではないだろうか。アーネスト・ヘミングウェイ(1899–1961)の小説は、英語力が多少不足でも、原文でも読めるはずだと言われている。ジャーナリストとしての体験が、平易で簡潔な文章をもたらしてと言うのである。オーウェルの『カタロニア讃歌』はスペイン内戦での人民戦線義勇軍への従軍体験を描いたもので、マルセー・ルドゥレダ(1908–1983)の『ダイヤモンド広場』(1962年)は、夫をアラゴン戦線に送ったものの、主人公は戦場を知らない。一方は外国人ジャーナリストが英語で書き、一方はカタルーニャに生まれ育った作家がカタルーニャ語で書いた。その対照的とも言えそうなスタンスの差が興味深い。

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The Real George Orwell: A journey exploring the man Eric Blair and the writer George Orwell (BBC)

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