2015年6月11日

マンション建設で撤去される糺の森の樹木

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赤い部分が建設予定地(クリックすると拡大表示されます)

マンション建設予定地の樹木
(京都市左京区下鴨泉川町)
京都市左京区にある下鴨神社(賀茂御祖神社)が式年遷宮の費用を捻出するため、境内の一部を高級分譲マンション用地として事業者に貸し出すと発表したのは3月2日だった。京都新聞によると、50年間の期限付きで貸し、年間約8,000万円の地代収入を境内の整備や文化財の保存事業などに充てるそうである。さらに6月6日付同紙電子版によると、建設予定地に自生するエノキやムクノキなどニレ科の樹木95本のうち、マンションの本体や駐車場にかかる45本を、伐採するか別の場所に移植する形で撤去することが分かったという。近くに所用があったので、建設予定地を歩いてみた。現場は糺の森を東西に横切る御蔭通の南側で、裁断された倒木などが置かれていた。Googleの衛星写真で見ると、有料駐車場や研修道場があり、過去に住宅によって森が浸食されているのが分かる。神社は世界遺産に登録されている史跡区域とは違うと強調しているフシがあるが、紛れもなく糺の森の一部である。山城原野の樹林を構成していたニレ科の樹木の半数が撤去されるは余りにも惜しい。遷宮といっても伊勢神宮のように社殿を造り替えて神座を遷すわけではなく、社殿の一部を修復するだけである。約30億円が必要で、国から8億円の補助を受け、残りは募金で集める予定だったが、約10億円しか集まっていないという。神社の台所事情には疎いが、集まった費用だけで修復作業をしたらどうなんだろうと思ってしまう。ごく少数の金持ちに千年の自然遺産を明け渡すのはいかがなものだろうか。蛇足ながら上賀茂神社も今年は式年遷宮の年に当たるが、このような話は聞かない。糺すとは、奇しくも物事の理非を明らかにする、罪過の有無を追及する、という意味である。大きな反対運動がないのが不思議である。もしかしたら「白足袋には逆らうな」ということだろうか。

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