2024年1月11日

ドイツのイノシシはなぜ放射能に汚染されているのか

 Germany's Wild Boar
A close up of photograph of a wild boar. A wild boar in Bavaria, Germany. Levels of radioactive contamination in the animals have not declined significantly since the Chernobyl disaster of 1986.

核兵器実験から発電所の破壊的事故まで、人類の核活動は放射性物質で地球を汚染してきた。これらの不安定な粒子は長距離に拡散し、何百年もの間環境中に留まり、植物や動物の体内に蓄積されている。ドイツでは、南部の森を歩き回るイノシシに高濃度の放射性セシウムが含まれることを、科学者たちは以前から知っていた。特定の地域で狩猟されたイノシシは放射能検査を受けなければならず、中には食べるには危険と判断されたものもある。これまで研究者たちは、チェルノブイリ原子力発電所の爆発による放射性物質がイノシシの被曝の主な原因だと考えていた。1986年にウクライナで起きたこの事故では、放射性物質がヨーロッパ、アジア、アフリカ、北アメリカに拡散した。しかしアメリカ化学会の "Environmental Science and Technology"(環境科学と技術)に発表された新しい研究によれば、チェルノブイリより数十年も前の核実験による放射性降下物が、イノシシの放射性セシウム濃度に大きく影響しているという。「チェルノブイリと比べても、核実験による放射線がまだ残っているという事実は注目に値する」とドイツのフライブルク大学の放射線研究者、ミヒャエル・フィーデルは語っている。この研究の共著者で、オーストリアのウィーン工科大学の放射化学者であるゲオルク・シュタインハウザーは「放射能汚染という一般的な原因が、いまだにどれほど関連しているのかを理解したとき、私の心は吹き飛んだ」と語っている。20世紀後半、世界各国は定期的に核爆弾実験を行い、1945年から1996年の間に2,000回以上の核爆発を起こした。国連によれば、これらの核実験のおよそ半分はアメリカが行ったものである。これらの実核験は、映画『オッペンハイマー』で描かれた1945年のトリニティ実験から始まった。

BikiniAtol
A mushroom cloud rises above Bikini Atoll, Marshall Islands, during a nuclear weapons test in 1946

地上核実験では放射性物質が大気圏上層部に放出され、その粒子は風や気象パターンによって拡散された後、降水によって、あるいは単に地上に落下することによって地球に戻ってきた。国連によれば、1963年の米英ソ間の条約で大気圏内核実験は禁止されたが、フランスと中国はその後も実験を続けた。現在、これらの核実験は終了しているが、核実験によって放出された放射性物質の一部は環境中に残留している。今日のイノシシに対する核実験の影響を測定するため、新しい研究者らは、イノシシの肉のサンプル中のセシウム135と137の同位体の比率を測定した。比率が高ければ兵器実験による放射性セシウムの割合が高いことを示し、比率が低ければチェルノブイリの物質に被曝していることを示す。研究者たちは2019年から2021年にかけて、ドイツ南部のバイエルン州の11箇所から食肉を採取した。分析の結果、核実験による汚染が検査したサンプルの放射性物質の10~68%を占めていることが判明した。それだけでなく、サンプルの88%の汚染レベルがドイツの食品規制値を超えていた。サンプルの約4分の1では、核実験による汚染だけで、食肉が人間にとって安全でないことを示すに十分であった。チェルノブイリ事故以来、他の動物種の汚染レベルは低下しているが、イノシシの汚染レベルは高いままである。シュタインハウザー氏はニューヨーク・タイムズ紙に、イノシシが他の動物に無視されているシカトリュフを食べる習慣が、その理由の一部である可能性を語っている。このキノコは地下数センチに生え、土壌からセシウムを吸収するため、他の自然食品よりも汚染されている。イノシシが冬にトリュフを食べると、放射能レベルが上昇すると『ポスト』紙は伝えている。以上は2023年9月13日付けのスミソニアンマガジン電子版に掲載された、ワシントンD.C.を拠点とするサイエンスライター、ウィル・サリヴァンの記事の抄訳である。下記リンク先でその原文を読むことができる。

Smithsonian  Why Germany's Wild Boars Are Radioactive by Will Sullivan | The Smithsonian Magazine

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