オリンピック開催強行を批判してきたので、テレビ観戦とは無縁だったが、閉会式だけは例外だった。しかし余りにも冗長な演出に呆れ、途中でスイッチを切ってしまった。ただネットニュースだけは目を逸らすわけにもいかず、溢れかえる「美談」に辟易とした。競歩やマラソン会場では沿道に人が溢れ、閉会式では中に入れるわけでもないのに、大勢の人たちが競技場周辺に詰めかけたようだ。これは予想通りではあった。メダル獲得数より、大谷翔平のホームラン数のほうが気になる人がいるかもしれない。やはりオリンピックは日本人にとって大きなスポーツ催事であることが、改めて示されたわけだが、アスリートのお祭りに終わったという感も否めない。近代オリンピックは教育の革新とスポーツ教育の重要性を主張した、フランスのピエール・ド・クーベルタン男爵(1863-1937)の提唱によって、第1回大会が1896年にアテネで開催された。
第5代国際オリンピック委員会の会長に就任したエイベリー・ブランデージ(1887-1975)はアメリカ合衆国のスポーツ選手で、親ナチス的、反ユダヤ的な態度をとった、人種主義者とも取れる問題が多い人物だった。第7代会長はスペインのフアン・アントニオ・サマランチ侯爵(1920-2010)で、オリンピックの商業化とプロ化を推し進めた。スペインの独裁者フランコの支持者で、ファシスト政党の党員だった。彼が推薦したのがトーマス・バッハ(1953年生まれ)の現会長である。新型コロナウィルス感染拡大を恐れる人々の心情を逆撫でする言動が顕著だった。追随した日本政府も含め、この事実は負のレガシーとして忘れてはならない。大会開催が人々の気を緩め、東京の医療崩壊の導火線となった可能性も否定できないだろう。今後維持できなくなる新設競技会場も多く、ネガティブな遺産となるだろう。当初の予算を大きくオーバーした費用が大会につぎ込まれたがこのツケは税金となって跳ね返ってくる。つまり「やって良かった」は大いなる勘違いなのだ。
東京オリンピックは成功したのだろうか? | 東京大学講師 フィリップ・パトリック(英文)
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