Vladimir Putin by ©psolodov
昨日1月22日、モスクワで日露首脳会談が開かれたが、ニューヨーク・タイムズ紙は「プーチンは領土紛争を終わらせるとの日本の希望を打ち砕いた」とする論評を掲載、領土交渉で日本が後手に回っているとの見方を伝えていた。安倍晋三首相の不用意な発言を警戒してか、質問拒否の共同記者発表が行われた。ウラジミール・プーチン大統領は、日露平和条約締結の前提となる、北方領土帰属交渉の進展には触れなかった。ロシアは返還後に米軍が配備されるのではという懸念を示していたが、安倍首相は「米軍基地は作らせない」とトンデモ発言をした。前エントリーで触れたように、プーチン大統領は沖縄県のアメリカ軍基地を挙げ「知事も住民も反対しているのに基地は増強されている」と核心を突いたのである。安倍首相は6月に大阪で開かれる予定の20カ国地域首脳会議(G20)で、来日するプーチン大統領と北方領土問題で大筋合意を演出し、7月に公示される参院選を乗り切ろうと考えてるようだ。ところが今回の首脳会議を受け、パノフ元駐日ロシア大使は、G20での合意は「絶対にありえない」と否定、領土問題の解決をレガシーにしたい安倍首相の思惑を遮る見解を示した。ところで1945年8月15日、昭和天皇は「玉音放送」によって降伏を公表した。ところが国際法上の太平洋戦争の終結は、戦艦ミズーリ号の上で日本が降伏文書に調印した日、1945年9月2日ということになる。この8月15日から9月2日までの空白の約半月間、旧ソ連軍が千島列島を侵攻し南下、島々を次々と占領した。しかし歯舞群島と色丹島は9月2日以降、戦争が終わったあとに占拠したものだ。それゆえに1956年の「日ソ共同宣言」で二島を平和条約締結後に譲渡するとしたのである。だからといって、その二島を返還するとプーチン大統領は公言していない。一方、1951年のサンフランシスコ平和条約で千島列島を放棄したが、北方四島は千島列島に含まれていないというのが日本の一貫した主張であった。同条約への署名を旧ソ連は拒否したが、今日に至るまで日本は四島返還に拘ってきた。80%が「一島も引き渡すべきではない」という国内世論の圧力が言動を鈍らせているようだ。プーチン大統領はクリミア自治共和国併合もそうだが、北方領土問題の法的な解釈を熟知しているはずである。名門レニングラード大学法学部を卒業しているので、法律を遵守する政治家と信じたい。しかし旧ソ連国家保安委員会(KGB)の諜報員であったという経歴が、不安材料として払拭できずに残っているが、そこにプーチン大統領の二面性を嗅ぎ取ることができる。記者会見で安倍首相は「平和条約の問題をじっくり話し合った」と語ったが、領土交渉は1ミリたりとも動いていない。いずれにしても、北方領土問題の解決は不透明なままで、二島はおろかゼロ島になってしまう可能性も否定できない。
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