2019年1月13日

孤高の剥製師ロン・ピッタードのフィッシュ芸術

Trout Salmon and Char of North America by Ron Pittard (W58xH95cm)

独自の技術で塗装するピッタード
東京で一人暮らしをしていた1980年代半ば、部屋に飾ってあった、北米の鱒、鮭、岩魚のポスターである。確かアラスカの釣具店で購入したもので、京都に舞い戻る際に、引越しのどさくさで失ってしまった。最近、ふとこのポスターのことを思い出したが、ネット通販店で入手可能なことが分かった。さっそく注文し、額装して飾ってみた。エドワード・グレイ著の『フライ・フィッシング』について書いたばかりだが、釣りをしない釣り師、私はアームチェア・アングラーの典型かもしれない。この大型図鑑ともいえるポスターを眺めていると何故か心が鎮まるのである。それにしても30年以上の時を経た邂逅、このポスターが超ロングセラーであることに驚く。当時ははおそらく作者について情報不足だったと思われるが、インターネットのお陰でその片鱗を窺い知ることができた。剥製技術に長年関わってきた、編集者ケン・エドワーズのブログ記事「孤高の名人」によると、ポスターを描いたのは魚類剥製師ロン・ピッタードだった。2012年11月に他界した魚の芸術家だったが、ごく少数の友人や顧客を除いては、会った人が稀有だったという。そして何と何年もの間、パソコンはおろか、電話機すら持っていなかったという。彼は優れた画家だったが、空間芸術ともいえる剥製あるいはレプリカ制作者だった。大物を釣った場合、日本の釣り師は魚拓を作る。ところが欧米では剥製にする。またレプリカは、魚を複製した精密模型であるが、ピッタードのそれは芸術の高みに達していたという。コンベンションに参加しなかったのも、孤高の芸術家たる所以かもしれない。

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