2012年2月28日

マグナムと暗室プリント技術の死

海外のサイトの写真関連記事は実に勉強になる。最近読んだ"Magnum and the Dying Art of Darkroom Printing"(マグナムと暗室プリント技術の死)という一文は実に興味深い。ニューヨーク在住の作家兼編集者、セイラー・コールマン女史の手になるものだ。コダックの倒産報道を機会に、マグナムの暗室プリント主任技術者パブロ・イニリオに会って書いたもので、非常に興味深い。デジタル時代、銀塩写真のプリント技術者の存在は、コダック同様ひん死状態にあるが、かつて、特にフォトジャーナリズムの世界では重要な役割を担っていた。マグナムの創設者のひとりであるアンリ・カルティエ=ブレッソンは「もう何年も自分でプリントしていない。観察にもっと時間を割きたいからだ。こんなことができるのは、私の指図どおりにやってくれるプリント業者を何人か知っているからだ」(ポール・ヒル、トーマス・クーパー著、日高敏訳『写真術』晶文社1988年)と述懐している。自らプリントするのも尊いが、優れた技術者に依頼するのも一方法である。それは画家と彫師、摺り師が分業、高品質を築いた浮世絵の世界に似ている。さて、それはともかく、デジタル化の波によって暗室技術が失われて逝くのは誠に寂しい。ただフォトジャーナリズムの世界では死滅しつつあるものの、ファインアートの世界ではまだまだ健在である点が救いではあるが。

2012年2月24日

ままならぬ「次はMacに決めた」宣言


今年に入ってからメインに使っているWindowsXPデスクトップ機が絶不調に陥ったままである。起動時、数回リセットしないとうまく動かない。最後の手段としてハードディスクを初期化、OSを再インストールしたけど、相変わらず不安定なままである。早晩討ち死にしそうな気配である。昨年暮れにXPマシンの寿命が尽きたら「次はMacに決めた」と書いた。その時に視野にあったのがデザインに優れたiMacであった。たいへん魅力的だが、売りものにしている一体型が逆にちょっと気になりはじめている。要するに製品としての完成度が高い代わりに、拡張性に乏しいという不満である。やはり本格的なタワー型のMacProに食指が動いてしまうが値段が問題である。ヨドバシカメラではMC560J/A Mac Pro Intel Xeon 2.8GHzが22万円である。これにモニター、さらにソフトウェアとなると溜息ものである。臨時策として安価なミニタワーのWindows7機をつなぎに、というのはどうだろうか考え始めた。ところが、そうなると気になり始めたのがWindows8の存在である。この秋あるいは暮れまでに発売されるようなので、それを見てから判断しようかと思うのだがいかがだろうか? Windows8に関してはマイクロソフトのエンジニアリングチームによるブログに詳しい。クラッシックなスタイルの画面に併せて搭載される、タブレットPCを意識したスタートメニューMetroに惹かれる。ままならぬ「次はMacに決めた」ではある。

2012年2月23日

今年の世界ピンホール写真デーは4月29日です


Promote poster by John Neel

毎年4月の最終日曜日にピンホール写真を制作した方は、世界中のどこからでも、その作品のスキャンを、このウェブサイトにアップロードすることが出来ます。あなたの作品は、世界ピンホール写真デーを讃えるオンラインギャラリーに展示されます。今年の世界ピンホール写真デーは4月29日です。

公式サイト:http://www.pinholeday.org/

2012年2月18日

フリーの画像編集ソフトGIMPを試用


GIMP 2.6 の画面  (クリックすると拡大表示されます)  入手先:http://www.gimp.org/

画像編集といえばアドビ社の Photoshop が有名で、定番ソフトといえるだろう。かつてはどのバージョンからもアップグレードできたが、いつの間にか直近3バージョンからのみとなった。さらに昨年、直近1バージョンからしかできないとアナウンス、さすがにユーザーから不満の声が上がったはいうまでもない。風当たりの強さに困惑したのだろう、今年リリースされる予定といわれている CS6 に関しては CS3、CS4 からもアップグレードできると修正発表をした。しかしそれも今年末までという。このソフト使ってバンバン稼いでるプロの写真家やデザイナーにとっては十分投資に値するだろうけど、趣味で写真を撮ってる人たちにとってはちょっと高嶺、いや高値の花かもしれない。新たに導入するなら、機能を限定した Photoshop エレメンツが手ごろと言えそうだ。同じ価格帯のコーレル Paint Shop Pro は、若干機能が上回っているようだが、Windows 版のみである。さて、ところで Mac 版も用意され、廉価、いやタダのソフトがある。GIMP というフリーウェアで、嬉しいことに日本語にも対応している。Windows 版をダウンロード、試用してみたところ、かなり高性能である。本質的に Photoshop の無料版と呼んでも過言ではないと感じた次第である。本家は重装備で重いし、多機能に過ぎる。画像処理にお金を注ぎたくない人には超お勧めのソフトと言えそうだ。

2012年2月17日

写真から遠ざかった写真の行方

ansel meets vincent shot from a car window at 60mph somewhere in PA by sueph

写真用のフィルターといえば光学フィルターを思い出すが、その発想は古いらしく、昨今のデジタル写真の世界では電子的なそれを意味するようだ。また画像処理ソフトにも様々なフィルターが用意されていて、なんでもない普通の写真が異質な姿に変身する。この写真はアドビ社の Pixel Bender プラグインを使用して作成されたものである。写真から遠ざかった写真の典型といえよう。写真術の黎明期にピクトリアリズム(絵画主義写真)が一世風靡したが、やがて「写真に帰れ」となりストレート写真が舞い戻った。今まさにそれが繰り返されてるようで、私はこれをコンテンポラリー・ピクトリアリズム(現代絵画主義写真)と呼んでいるが、この流行がいつまで続くか注目している。

2012年2月14日

聖ヴァレンタインデー異聞


ヴァレンタインデーギフト 京都市中京区新京極通四条上る Fujifilm Finepix X100

今日2月14日は聖ヴァレンタインデーである。キリスト教の聖職者ウァレンティヌスの殉教日に由来するようだが、史実上は諸説があるようだ。この日、欧米では親しい人や恋人に贈り物をする習慣があるが、日本では女性が男にチョコレートを贈る習慣が定着してしまっている。写真家の田中長徳氏がFacebokで「日本でーおそらく最初の奇習である、チョコレート押し付け運動は1981にあたしは見た。某スーパーであり合わせのチョコをパックして売ってたが、売れず。店員さんが、こんなの売れるわけねーよな、とーぼやきつつ、またパッケージをバラしてた。それが今ではこのざまだ」と嘆いていた。インターネット百科事典ウィキペディアによると、この習慣の起源については、1936年の神戸モロゾフ製菓説、1958年のメリーチョコレート説、1960年の森永製菓説、1965年の伊勢丹説、1968年のソニープラザ説と諸説あるが判然としないという。それはともかく、いまや1個も届かなくなってしまったが、一時は山ほどいただいたこともある。1980年代半ば、東京で某週刊誌のフォトエディターをしていたころで、女性カメラマンや編集者をはじめ、アルバイト諸嬢などから「義理チョコ」が届いたものである。ところでこの日を巡っては痛恨の思い出もある。娘がまだ小さい頃、彼女からチョコレートを贈られた。ところがそれに手をつけず、書棚に放置したまま忘れてしまった。これを発見した娘は、ある種のショックを受けたのだろうか、今でもそのことを口にする。単に「義理」と片付けては駄目である、どんな形であれ貴重な「愛」のメッセージなのだから。

2012年2月12日

子どもたちよ!-いのちは生きるほうへ向かう-開催案内

東日本大震災から一年。みんなで見て、話して、つながっていこう。なかのZEROに集った一人ひとりが、いのちのメッセージを確認し合い、それぞれの場所へ持ち帰るはじまりの時。出会いの言葉は「子どもたちよ!」。


日時:2012年2月18日(土) 開場18:20/開演18:50
会場:なかのZERO・大ホール(JR・東京メトロ東西線/中野駅南口徒歩8分)全席自由
前売:おとな(高校生以上) 1,500円 子ども(小・中学生) 1,000円 親子券(おとな1名・子ども1名) 2,200円

映 画 『大丈夫。-小児科医・細谷亮太のコトバ-』上映
トーク 「いのち」によりそって いせひでこ、細谷亮太、柳田邦男、伊勢真一、斉藤ともこ(司会)

主催:子どもたちよ!実行委員会(公益財団法人そらぷちキッズキャンプ/いせフィルム/MOCプロジェクト)

2012年2月8日

バイバイ原発3.10きょうと


2012年3月10日(土)円山公園 ★雨天決行

周辺イベント---円山公園しだれ桜周辺
11:00-設営 12:00-開始
ライブパフォーマンス/バイバイ原発レンジャーショー
エコマルシェ/フリースピーチスペースetc

メイン集会---円山公園野外音楽堂
13:00開場 13:15アトラクション 14:00開会
小出裕章さん(京大原子炉実験所助教)スピーチほか

デモ出発---円山公園~市役所前まで 14:45~出発

主催:バイバイ原発3.10京都実行委員会
TEL:075-255-5700 FAX:075-251-1003 Email:bye_npp_310@yahoo.co.jp

2012年2月7日

写真展『「生きる」- 東日本大震災から一年 -』開催のお知らせ


公益社団法人 日本写真家協会 東日本大震災復興支援事業

3月11日の東日本大震災発生以降、あらゆるメディアが被災地の現状を次々と克明に伝えています。そこではメディアに係る写真家たちの活躍は目を見張るものがありました。協会では、4月末に富士フイルムフォトサロンで東日本大震災チャリティー写真展を開催。売上金を朝日新聞厚生文化事業団を通して、被災地に贈りました。被害状況を世界中の写真家が取材した写真展や写真集での発表が増え、写真による記録の意義や役割を世間に知らしめる働きがありました。そこで協会では、写真で何ができるかを検討した結果、被災から1年後の平成24年3月に写真展の開催と写真集の出版を行うことにしました。「生きる」- 東日本大震災から一年 - 特設サイト

東京展
会 期:2012年3月2日(金)~3月15日(木)会期中無休 10:00~18:00 (木・金20:00まで)
会 場:富士フォトギャラリー新宿 新宿区新宿1-10-3 太田紙興新宿ビル1F

仙台展
会 期:2012年3月27日(火)~4月8日(日)月曜休館 9:00~16:45 (入館は16:15まで)初日のみ12:00より
会 場: 仙台市博物館ギャラリー 仙台市青葉区川内26番地<仙台城三の丸跡>

構 成:
第一章:「被災」今まで目にしなかった、地震直後に襲ってきた津波による悲劇的状況の写真を、現地に住む方々の協力を得て展示。
第二章:「ふるさと」 震災前に撮られた、風光明媚な東北やそこに住む人々、自然界と共存して心豊かに生きてきた姿や美しい風土を表現する。
第三章:「生きる」被災者が必死に生活を立て直そうとする現況や互いに励ましあう姿、「生きる」ことの素晴らしさ。明日への希望を胸に秘めながらの暮らしぶり、記録を超えた人間の本質に迫るドキュメンタリーで締めくくる。

写真は、被災地に在住する日本写真家協会会員を中心に、各写真家に参加を呼びかけ、現地で撮影された作品、約120点を予定。被災直後から逞しく生きる人々、以上の三部構成を基本に、真摯に事態と物事を見つめ、被災地の事実と真実を捉え、記録していくことで、「写真の力」の素晴らしさを伝えたい。

主 催:公益社団法人 日本写真家協会
特別協賛:株式会社タムロン
協 賛:富士フイルムイメージングシステムズ株式会社

2012年2月1日

きかんしゃトーマスがやって来た


プラレールのトーマス  Fujifilm Finepix X100

プラレールは幼児向けの玩具だが、大のオトナでも結構凝ってる人が多いらしい。レールの配置を複雑に組み合わせるのが面白いのだろう。車体は新幹線や在来線など様々だが、きかんしゃトーマスを模したものに惹かれる。人間のマスクを機関車の前面にしたユニークなものだが、イギリス及びカナダ制作の幼児向けテレビ番組のキャラクターである。原作はウィルバート・オードリー牧師による、1945年から続く人気絵本シリーズ「汽車のえほん」だという。私は絵本を読んでいないが、アニメーションの断片をいくつか動画共有サイトYouTubeで見た。機関車を擬人化したゆえ不気味だという意見もあるようだが、結構興味深い内容になっている。機関車が衝突したり、橋が壊れて脱線転覆、川に落ちるシーンなどは残酷と言えなくもない。それをレスキューするクレーン車があるのが救いであるが、要するに汽車を借りた人間ドラマなのである。オトナがプラレールを幼児と違った方法で遊べるように、トーマス物語もまた、幼児向けでありなながら、一緒に見るだろう親たち、すなわちオトナに対しても含蓄あるメッセージが込められているような気がする。