昨年暮れ京都在住のアーティスト、渡辺チカラさんの個展に伺ったところ、オヤ?と思う作品が目に止まった。京都タワーである。チカラさんの作品ジャンルは多岐に渡るが、私にとっては映画「アメリカン・グラフィティ」をと彷彿とさせる作品群が印象深い。だから京都の風景、例えば東寺の五重塔や龍安寺の石庭などのテーマはちょっと意外だったが、独特のタッチで魅力に溢れている。さて京都タワーだが、この建築物、私はどうしても好きになれない。昭和39(1964)年というから東海道新幹線開通とほぼ同じ時期に開業したことになる。建設計画に対しては侃侃諤諤(かんかんがくがく)の議論があったという。というより京都の景観論争の原点になったものである。蝋燭(ろうそく)を模したものだという説が一般的だが、実は和歌山県の潮岬灯台をモデルにしたものだという。そういえばかつて京都の目印は東寺の五重塔だったが、今ではこのタワーが灯台の役割をしている感がある。それはともかく、私はやっぱり好きになれない。それをチカラさんは絵にした。そして私はこの絵がすっかり気に入り、今は我が家の壁に掛かっている。不思議である。絵は写真と違って、作者が自由にデフォルメできる。私がピンホールやゾーンプレート写真に惹かれるのは、写真の不自由さから脱出したいという潜在意識があるからもしれない。密かにコンテンポラリー・ピクトリアリスム(現代絵画主義写真)じゃないかと思っている。チカラさんに触発されて京都タワーを撮ってみたが、やはり及ばないようだ。
0 件のコメント:
コメントを投稿