2017年12月13日

吉野源三郎『君たちはどう生きるか』を再読する

大垣書店(京都市北区小山上総町)

書店を覗いてみたら吉野源三郎『君たちはどう生きるか』(岩波文庫版)が平積みになっていた。帯には125万部と書いてあるが、他の出版社発行分を合わせると相当な数だろう。羽賀翔一の手になるマンガ版も空前の売れ行きのようだ。小学校だったろうか、中学校だったろうか、国語の教科書に一部が掲載されていたのを憶えている。主人公潤一君が「コぺル君」というあだ名がつく冒頭の下りだった。叔父さんと銀座の百貨店の屋上から地上を眺めているうちに心が沈んでしまう。そして「人間て、叔父さん、ほんとに分子だね。僕、今日、ほんとうにそう思っちゃった」と打ち明ける。その晩、叔父さんはノートに書き記す。昔の人は太陽や星が地球のまわりをまわっていると信じていたが、コペルニクスは地球のほうが太陽のまわりをまわっていると考えた。コペルニクス的転回である。つまり「発想や考えを逆転して根本から変えること、変えたことによって新たな道が見出されること」 という教えだが、これを機会に叔父さんは潤一君をコぺル君と呼ぶようになったのである。私にはこの書籍の神髄を語る力量がないので、内容に関するこれ以上の言及は避けたい。ただ1936年に執筆を開始され、それから80年余り経た今、ベストセラーになった今日的意味の大きさを強調しておきたい。岩波文庫版の巻末には、著者の没後追悼の意をこめて丸山真男が書いた「『君たちはどう生きるか』をめぐる回想」が復刻付載されているので、ぜひ手に取って欲しい。なお引退宣言を翻した宮崎駿監督が制作中の新作が、同名であると公表している。「この本が主人公にとって大きな意味を持つという話」だという。公開が待ち遠しい。

amazon  吉野源三郎『君たちはどう生きるか 』(岩波文庫) – 1982/11/16

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