2025年10月6日

日本初の女性首相誕生へ:高市早苗の台頭と今後の展望

Sanae Takaichi

日本は歴史的な政治転換期を迎えている。強硬保守派で長年自由民主党議員を務めてきた高市早苗が、日本初の女性首相に就任する見込みだ。自民党は土曜日、彼女を新総裁に選出した。戦後日本政治における自民党の圧倒的な役割を踏まえると、高市の首相就任は事実上確実となった。首相は伝統的に自民党総裁にしか与えられない地位だ。自民党主導の連立政権は過去1年間で両院で過半数を失ったものの、強力な衆院では依然として最大政党であり、10月中旬の国会議員投票で高市氏の国会承認はほぼ確実となっている。高市の台頭は、日本が政治的再編の時期を迎えている中で起こった。自民党は経済停滞、有権者の信頼低下、そして党内の派閥争いといった批判に直面している。国家主義的な見解と強硬な防衛姿勢で知られる高市は、より強硬な安全保障政策の推進、米国との緊密な連携、そして中国と北朝鮮に対する積極的な外交姿勢を公約している。高市の任命は、女性首相が未だ誕生していない数少ない先進民主主義国の一つである日本にとって、象徴的な躍進となるだろう。彼女のリーダーシップは、男性優位の日本の政治文化におけるジェンダーの代表性や保守的なフェミニズムに対する認識に影響を与える可能性がある。しかし、彼女の政治的スタンスは自民党の右派国家主義としばしば一致するため、首相としての立場が進歩的な社会改革に結びつくとは限らない。むしろ、彼女の政権は防衛力の拡充、憲法改正、そして地域の脅威への対応として抑止力の強化を優先する可能性がある。

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高市の首相就任は、日本の外交政策の軌道を一変させ、地域情勢や国際情勢においてより積極的な姿勢を示す可能性を秘めている。国内においては、彼女のリーダーシップは保守政治を活性化させる可能性があるが、社会改革や経済改革が進展しない場合には、イデオロギー間の亀裂を深めるリスクもある。今後数ヶ月で、彼女がイデオロギーと実利主義のバランスを取り、自民党政権への信頼を再構築できるかどうかが明らかになるだろう。高市の台頭は、継続性と変革の両面を象徴している。継続性とは、戦後日本の政治体制が自民党に根ざしているという意味で、また、アジアで最もジェンダーバランスの崩れた政治体制の一つにおいて、女性がついにトップに立つという変革である。彼女の保守的な経歴は、党内における安定的な存在となる可能性を秘めている。しかし、彼女の課題は、国民の懐疑心を払拭し、国際舞台における日本のイメージを近代化することにある。彼女が日本との戦略的同盟関係を維持しながら、経済改革とジェンダー関連の改革をうまく進めれば、21世紀における保守派指導者のあり方を再定義する可能性がある。しかし、もし彼女の在任期間が派閥争いやイデオロギーの硬直化に飲み込まれれば、彼女の歴史的瞬間は変革をもたらすというよりは象徴的なものにとどまるかもしれない。下記リンク先はル・モンド紙の「高市早苗氏が日本初の女性首相誕生へ」です。

  Sanae Takaichi set to become Japan's first woman prime minister | Le Monde with AFP

モデルからファッション写真家に転じたスリランカ系英国人ナイジェル・バーカー

Untitled Artwork by Nigel Barker
Nigel Barker

ナイジェル・バーカーは、英国のリアリティ番組のパーソナリティ、ファッション・フォトグラファー、作家、スポークスマン、映画製作者、そして元モデルである。リアリティ番組『アメリカズ・ネクスト・トップモデル』の審査員兼カメラマンとして最もよく知られており、同番組のアメリカ版リアリティ番組『ザ・フェイス』の司会者も務めた。バーカーは1972年4月27日、ロンドンで生まれた。スリランカ出身の彼の母親は、英国に移住する前はミス・スリランカに出場していた。母親は彼が成長するにつれてモデルという職業への尊敬心を育む上で重要な役割を果たし、モデルとしての成功を機に家族を英国に呼び寄せたと語っている。5人兄弟の家庭に育ち、18歳までそこで暮らした。彼は寄宿学校のブライアンストン・スクールに通い、そこで生物学、化学、物理学の A レベルを取得した。 バーカーは医学の勉強を続けるつもりだったが、母親の勧めでテレビのモデル募集番組「ザ・クローズ・ショー」に出演することになった。

この番組でファイナリストに残り、モデルとしてのキャリアをスタートさせる。ロンドン、ミラノ、パリ、ニューヨークで約10年間モデルとして活躍した。若いモデルとして、彼はファッション業界の変化を感じていた。「モデルの体格は小さくなり、身長 190cm のたくましい男性モデルは売れない」と感じていた。1996年、彼はモデルからファッション・フォトグラファーに転身した。バーカーは、マンハッタンのミートパッキング・ディストリクトに写真スタジオ "StudioNB" をオープン した。彼は『GQ』『Interview』『Seventeen』『Town and Country』『Luck』『Tatler』『Cover』などのエディトリアルを撮影したほ『Land's End』『Levie』『Nicole Miller』『Nine West』『Ted Baker』『Jordache』『Pamella Rollan』『Beefeater』『Ford』『Sony』などの広告キャンペーンも手掛けた。

Chin Twins

バーカーはタイラ・バンクスのリアリティ番組『アメリカズ・ネクスト・トップモデル』で17回にわたり審査員を務めた。リアリティ番組の審査員を退任後は、化粧品ブランドや男性用スキンケアラインの開発、テレビ復帰など、他の事業に集中する時間が増えると述べている。また、2007年のミス・アメリカ・コンテストと2012年のミス・ユニバース・コンテストの審査員も務めた。写真リアリティ番組『ザ・ショット』のエグゼクティブ・プロデューサーも務める。2013年、バーカーは『ザ・フェイス』の司会者に就任した。バーカーは、カナダの『ネクスト・トップ・モデル』第3期とニュージーランドの『ネクスト・トップ・モデル』第1期の第10話に写真家として特別出演した。メキシコの『ネクスト・トップ・モデル』第1期にはゲスト審査員兼写真家として出演し、ベネルクスの『ネクスト・トップ・モデル』第2期にもゲスト出演した。

彼の監督デビュー作は、自身もプロデュースを手掛けたドキュメンタリー『A Sealed Fate?』である。その後『Generation Free』と『Haiti: Hunger and Hope 』を制作し、米国動物愛護協会、エリザベス・グレイザー小児エイズ財団、エデヨ財団と提携して、それぞれの問題に光を当てている。バーカーは、メイク・ア・ウィッシュ財団、国連財団のガールアップ・イニシアチブのセレブリティ・アンバサダーを務め "Fashion Targets Breast Cancer"(ファッションが乳がんを撲滅する)のキャンペーンカメラマンも務めている。バーカーはテイラー・スウィフトとタッグを組んで、彼女の写真集 "8 Hours"(8時間)を撮影した。同集は2012年11月にデビューした。2013年9月、バーカーは「ベッドタイム・ストーリーズ」でナディア・ラッカ、リリアンヌ・フェラレジ、ジョーダン&ザック・ステンマークを撮影し、Numero Russiaの9月号に掲載された。

2016年、バーカーはアメリカ合衆国ネバダ州ラスベガスのT-モバイル・アリーナで開催された "Miss USA 2016"(ミスアメリカ2016年)決勝のゲスト審査員を務めた。またその年に Adorama と共同で、人気テレビ番組「トップモデル」からインスピレーションを得た新ウェブシリーズ「トップ・フォトグラファー」を制作した。このシーズンの優勝者は、アカデミー・オブ・アート大学の卒業生スコット・ボレロだった。2017年、2018年、2019年には "Holland's Next Top Model"(オランダのネクスト・トップ・モデル)の審査員を務めた。バーカーは1999年からモデルでカバーガールの代表を務めるクリステン・チンと結婚している。夫婦は2人の子供とともにニューヨークに住んでいる。

adobe  Nigel Barker (born 1972) Fashion photographer, spokesperson, filmmaker, former model.

写真術における偉大なる達人たち

New Mothers
Sally Mann (born 1951) The New Mothers, Lexington, Virginia, 1989

2021年の秋以来、思いつくまま世界の写真界20~21世紀の達人たちの紹介記事を拙ブログに綴ってきましたが、2025年10月6日現在のリストです。右端の()内はそれぞれ写真家の生年・没年です。左端の年月日をクリックするとそれぞれの掲載ページが開きます。

21/10/06多くの人々に感動を与えたアフリカ系アメリカ人写真家ゴードン・パークスの足跡(1912–2006)
21/10/08グループ f/64 のメンバーだった写真家イモージン・カニンガムは化学を専攻した(1883–1976)
21/10/10圧倒的な才能を持ち現代アメリカの芸術写真を牽引したポール・ストランド(1890–1976)
21/10/11何気ない虚ろなアメリカを旅したスイス生まれの写真家ロバート・フランク(1924–2019)
21/10/13作為を排した新客観主義に触発されたストリート写真の達人ロベール・ドアノー(1912–1994)
21/10/16大恐慌時に農村や小さな町の生活窮状をドキュメントした写真家ラッセル・リー(1903–1986)
21/10/17日記に最後の晩餐という言葉を残して自死した写真家ダイアン・アーバスの黙示録(1923–1971)
21/10/19フォトジャーナリズムの手法を芸術の域に高めた写真家ユージン・スミスの視線(1918–1978)
21/10/24時代の風潮に左右されず独自の芸術観を持ち続けたプラハの詩人ヨゼフ・スデック(1896-1976)
21/10/27西欧美術を米国に紹介した写真家アルフレッド・スティーグリッツの功績(1864–1946)
21/11/01美しいパリを撮影していたウジェーヌ・アジェを「発見」したベレニス・アボット(1898–1991)
21/11/08近代ストレート写真を先導した 20 世紀の写真界の巨匠エドワード・ウェストン(1886–1958)
21/11/10芸術を通じて社会や政治に影響を与えることを目指した写真家アンセル・アダムス(1902–1984)
21/11/13大恐慌を記録したウォーカー・エヴァンスの被写体はその土地固有の様式だった(1903–1975)
21/11/16写真少年ジャック=アンリ・ラルティーグは個展を開いた 69 歳まで無名だった(1894–1986)
21/11/20ハンガリー出身の世界で最も偉大な戦争写真家ロバート・キャパの短い人生(1913–1954)
21/11/25児童労働の惨状を訴えるため現実を正確に捉えた写真家ルイス・ハインの偉業(1874–1940)
21/12/01マグナム・フォトを設立した写真家アンリ・カルティエ=ブレッソンの決定的瞬間(1908–2004)
21/12/06犬を人間のいくつかの性質を持っているとして愛撮したエリオット・アーウィット(1928-2023)
21/12/08リチャード・アヴェドンの洗練され権威ある感覚をもたらしたポートレート写真(1923–2004)
21/12/12デザインと産業の統合に集中したバウハウスの写真家ラースロー・モホリ=ナジ(1923–1928)
21/12/17ダダイズムとシュルレアリスムに跨る写真を制作したマン・レイは革新者だった(1890–1976)
21/12/29フォトジャーナリズムに傾倒したアラ・ギュレルの失われたイスタンブル写真素描(1928–2018)
22/01/10ペルーのスタジオをヒントに自然光に拘ったアーヴィング・ペンの鮮明な写真(1917-2009)
22/02/25非現実的なほど歪曲し抽象的な遠近感を生み出した写真家ビル・ブラントのカメラ(1904–1983)
22/03/09男性ヌードや花を白黒で撮影した異端の写真家ロバート・メイプルソープへの賛歌(1946–1989)
22/03/18ニューヨーク近代美術館で写真展「人間家族」を企画したエドワード・スタイケン(1879–1973)
22/03/24公民権運動の影響を記録したキュメンタリー写真家ブルース・デヴッドソンの慧眼(born 1933)
22/04/21社会的弱者に寄り添いエモーショナルに撮影した写真家メアリー・エレン・マーク(1940-2015)
22/05/20早逝した写真家リンダ・マッカートニーはザ・ビートルズのポールの伴侶だった(1941–1998)
22/06/01大都市に変貌する香港を活写して重要な作品群を作り上げたファン・ホーの視線(1931–2016)
22/06/12肖像写真で社会の断面を浮き彫りにしたドキュメント写真家アウグスト・ザンダー(1876–1964)
22/08/01スペイン内戦取材で26歳という若さに散った女性戦争写真家ゲルダ・タローの生涯 (1910–1937)
22/09/16カラー写真を芸術として追及したジョエル・マイヤーウィッツの手腕(born 1938)
22/09/25死と衰退を意味する作品を手がけた女性写真家サリー・マンの感性(born 1951)
22/10/17北海道の風景に恋したイギリス人写真家マイケル・ケンナのモノクロ写真(born 1951)
22/11/06アメリカ先住民を「失われる前に」記録したエドワード・カーティス(1868–1952)
22/11/16大恐慌の写真 9,000 点以上を制作したマリオン・ポスト・ウォルコット(1910–1990)
22/11/18人間の精神の深さを写真に写しとったアルゼンチン出身のペドロ・ルイス・ラオタ (1934-1986)
22/12/10アメリカの生活と社会的問題を描写した写真家ゲイリー・ウィノグランド(1928–1984)
22/12/16没後に脚光を浴びたヴィヴィアン・マイヤーのストリート写真(1926–2009)
22/12/23写真家集団マグナムに参画した初めての女性報道写真家イヴ・アーノルド(1912-2012)
23/03/25写真家フランク・ラインハートのアメリカ先住民のドラマチックで美しい肖像写真(1861-1928)
23/04/13複雑なタブローを構築するシュールレアリスム写真家サンディ・スコグランド(born 1946)
23/04/21キャラクターから自らを切り離したシンディー・シャーマンの自画像(born 1954)
23/05/01震災前のサンフランシスコを記録した写真家アーノルド・ジェンス(1869–1942)
23/05/03メキシコにおけるフォトジャーナリズムの先駆者マヌエル・ラモス(1874-1945)
23/05/05文学と芸術に没頭し超現実主義絵画に着想を得た台湾を代表する写真家張照堂(1943-2024)
23/05/07家族の緊密なポートレイトで注目を集めた写真家エメット・ゴウィン(born 1941)
23/05/22欲望やジェンダーの境界を無視したクロード・カアンのセルフポートレイト(1894–1954)
23/05/2520世紀初頭のアメリカの都市改革に大きく貢献したジェイコブ・リース(1849-1914)
23/06/05都市の社会風景という視覚的言語を発展させた写真家リー・フリードランダー(born 1934)
23/06/13写真芸術の境界を広げた暗室の錬金術師ジェリー・ユルズマンの神技(1934–2022)
23/06/15強制的に収容所に入れられた日系アメリカ人を撮影したドロシア・ラング(1895–1965)
23/06/20劇的な国際的シンボルとなった「プラハの春」を撮影したヨゼフ・コウデルカ(born 1958)
23/06/24警察無線を傍受できる唯一のニューヨークの写真家だったウィージー(1899–1968)
23/07/03フォトジャーナリズムの父アルフレッド・アイゼンシュタットの視線(1898–1995)
23/07/06ハンガリーの芸術家たちとの交流が反映されたアンドレ・ケルテスの作品(1894-1985)
23/07/08家族が所有する島で野鳥の写真を撮り始めたエリオット・ポーター(1901–1990)
23/07/08戦争と苦しみを衝撃的な力でとらえた報道写真家ドン・マッカラン(born 1935)
23/07/17夜のパリに漂うムードに魅了されていたハンガリー出身の写真家ブラッサイ(1899–1984)
23/07/2020世紀の著名人を撮影した肖像写真家の巨星ユーサフ・カーシュ(1908–2002)
23/07/22メキシコの革命運動に身を捧げた写真家ティナ・モドッティのマルチな才能(1896–1942)
23/07/24ロングアイランド出身のマルクス主義者を自称する写真家ラリー・フィンク(born 1941)
23/08/01アフリカ系アメリカ人の芸術的な肖像写真を制作したコンスエロ・カナガ(1894–1978)
23/08/04ヒトラーの地下壕の写真を世界に初めて公開したウィリアム・ヴァンディバート(1912-1990)
23/08/06タイプライターとカメラを同じように扱った写真家カール・マイダンス(1907–2004)
23/08/08ファッションモデルから戦場フォトャーナリストに転じたリー・ミラーの生涯(1907-1977)
23/08/14ニコンのレンズを世界に知らしめたデイヴィッド・ダグラス・ダンカンの功績(1907-2007)
23/08/18超現実的なインスタレーションアートを創り上げたサンディ・スコグランド(born 1946)
23/08/20シカゴの街角やアメリカ史における重要な瞬間を再現した写真家アート・シェイ(1922–2018)
23/08/22大恐慌時代の FSA プロジェクト 最初の写真家アーサー・ロススタイン(1915-1986)
23/08/25カメラの焦点を自分たちの生活に向けるべきと主張したハリー・キャラハン(1912-1999)
23/09/08イギリスにおけるフォトジャーナリズムの先駆者クルト・ハットン(1893–1960)
23/10/06ロシアにおけるデザインと構成主義創設者だったアレクサンドル・ロトチェンコ(1891–1956)
23/10/18物事の本質に近づくための絶え間ない努力を続けた写真家ウィン・バロック(1902–1975)
23/10/27先見かつ斬新な作品により写真史に大きな影響を与えたウィリアム・クライン(1926–2022)
23/11/09アパートの窓から四季の移り変わりの美しさなどを撮影したルース・オーキン(1921-1985)
23/11/15死や死体の陰翳が纏わりついた写真家ジョエル=ピーター・ウィトキンの作品(born 1939)
23/12/01近代化により消滅する前のパリの建築物や街並みを記録したウジェーヌ・アジェ(1857-1927)
23/12/15同時代で最も有名で最も知られていないストリート写真家のヘレン・レヴィット(1913–2009)
23/12/20哲学者であることも写真家であることも認めなかったジャン・ボードリヤール(1929-2007)
24/01/08音楽や映画など多岐にわたる分野で能力を発揮した写真家ジャック・デラーノ(1914–1997)
24/02/25シチリア出身のイタリア人マグナム写真家フェルディナンド・スキアンナの視座(born 1943)
24/03/21パリで花開いたロシア人ファッション写真家ジョージ・ホイニンゲン=ヒューン(1900–1968)
24/04/04報道写真家として自活することに成功した最初の女性の一人エスター・バブリー(1921-1998)
24/04/20長時間露光により時間の多層性を浮かび上がらせたアレクセイ・ティタレンコ(born 1962)
24/04/2820世紀後半のイタリアで最も重要な写真家ジャンニ・ベレンゴ・ガルディン(born 1930)
24/04/30トルコの古い伝統の記憶を守り続ける女性写真家 F・ディレク・ウヤル(born 1976)
24/05/01ファッション写真に大きな影響を与えたデヴィッド・ザイドナーの短い生涯(1957-1999)
24/05/08社会の鼓動を捉えたいという思いで写真家になったリチャード・サンドラー(born 1946)
24/05/10直接的で妥協がないストリート写真の巨匠レオン・レヴィンシュタイン(1910–1988)
24/05/12自らの作品を視覚的な物語と定義している写真家スティーヴ・マッカリー(born 1950)
24/05/14多様な芸術の影響を受け写真家の視点を形作ったアンドレアス・ファイニンガー(1906-1999)
24/05/16芸術的表現により繊細な目を持つ女性写真家となったマルティーヌ・フランク(1938-2012)
24/05/18ドキュメンタリー写真をモノクロからカラーに舵を切ったマーティン・パー(born 1952)
24/05/21先駆的なグラフ誌『ピクチャー・ポスト』を主導した写真家バート・ハーディ(1913-1995)
24/05/24グラフ誌『ライフ』に30年間投稿し続けたロシア生まれの写真家リナ・リーン(1914-1995)
24/05/27旅する写真家として20世紀後半の歴史に残る象徴的な作品を制作したルネ・ブリ(1933-2014)
24/05/29高速ストロボスコープ写真を開発したハロルド・ユージン・エジャートン(1903-1990)
24/06/03一般市民とそのささやかな瞬間を撮影したオランダの写真家ヘンク・ヨンケル(1912-2002)
24/06/10ラージフォーマット写真のデジタル処理で成功したアンドレアス・グルスキー(born 1955)
24/06/26レンズを通して親密な講釈と被写体の声を伝えてきた韓国出身のユンギ・キム(born 1962)
24/07/05演出されたものではなく現実的なファッション写真を開発したトニ・フリッセル(1907-1988)
24/07/07スウィンギング60年代のイメージ形成に貢献した写真家デイヴィッド・ベイリー(born 1938)
24/07/13著名人からから小さな町の人々まで撮影してきた写真家マイケル・オブライエン(born 1950)
24/07/14人々のドラマが宿る都市のカラー写真を制作したコンスタンティン・マノス(born 1934)
24/08/04写真家集団「マグナム・フォト」所属するただ一人の日本人メンバー久保田博二(born 1939)
24/08/08ロバート・F・ケネディの死を悼む人々を葬儀列車から捉えたポール・フスコ(1930–2020)
24/08/13クリスティーナ・ガルシア・ロデロが話したいのは時間も終わりもない出来事だ(born 1949)
24/08/30ドキュメンタリーと芸術の境界を歩んだカラー写真の先駆者エルンスト・ハース(1921–1986)
24/09/01国際的写真家集団マグナム・フォトの女性写真家スーザン・メイゼラスの視線(born 1948)
24/09/09アパルトヘイトの悪と日常的な社会への影響を記録したアーネスト・コール(1940–1990)
24/09/14宗教的または民俗的な儀式に写真撮影の情熱を注ぎ込んだラモン・マサッツ(1931-2024)
24/09/23アメリカで最も有名な無名の写真家と呼ばれたエヴリン・ホーファー(1922–2009)
24/09/25自身を「大義を求める反逆者」と表現した写真家マージョリー・コリンズ(1912-1985)
24/09/27北海道の小さな町にあった営業写真館を継がず写真芸術の道を歩んだ深瀬昌久(1934-2012)
24/10/01現代アメリカの風変わりで平凡なイメージに焦点を当てた写真家アレック・ソス(born 1969)
24/10/04微妙なテクスチャーの言語を備えた異次元の写真を追及したアーサー・トレス(born 1940)
24/10/06オーストリア系イギリス人のエディス・チューダー=ハートはソ連のスパイだった(1908-1973)
24/10/08映画の撮影監督でもあったドキュメンタリー写真家ヴォルフガング・スシツキー(1912–2016)
24/10/15芸術のレズビアン・サブカルチャーに深く関わった写真家ルース・ベルンハルト(1905–2006)
24/10/19ランド・アートを通じて作品を地球と共同制作するアンディ・ゴールドワージー (born 1956)
24/10/29公民権運動の活動に感銘し刑務所制度の悲惨を描写した写真家ダニー・ライアン (born 1942)
24/11/01人間の状態と現在の出来事を記録するストリート写真家ピータ―・ターンリー (born 1955)
24/11/04写真を通じて現代の社会的状況を改善することに専念したアーロン・シスキンド(1903-1991)
24/11/07自然と植物の成長にインスピレーションを受けた写真家カール・ブロスフェルト(1865-1932)
24/11/09ストリート写真で知られているリゼット・モデルは教える才能を持っていた(1901-1983)
24/11/11カラー写真が芸術として認知されるようになった功労者ウィリアム・エグルストン(born 1939)
24/11/13革命後のメキシコ復興の重要人物だった写真家ローラ・アルバレス・ブラボー(1903-1993)
24/11/15チリの歴史上最も重要な写真家であると考えられているセルヒオ・ララインの視座(1931-2012)
24/11/19イギリスのアンリ・カルティエ=ブレッソンと評されたジェーン・ボウン(1925-2014)
24/11/25カラー写真の先駆者ソール・ライターは戦後写真界の傑出した人物のひとりだった(1923–2013)
24/11/25サム・フォークがニューヨーク・タイムズに寄せた写真は鮮烈な感覚をもたらした(1901-1991)
24/11/29ゲイ解放運動の活動家だったトランスジェンダーの写真家ピーター・ヒュージャー(1934–1987)
24/12/01複数の芸術的才能に恵まれていた華麗なるファッション写真家セシル・ビートン(1904–1980)
24/12/05ライフ誌と空軍で活躍した女性初の戦場写真家マーガレット・バーク=ホワイト(1904–1971)
24/12/07愛と美を鮮明に捉えたロマン派写真家エドゥアール・ブーバの平和への眼差し(1923–1999)
24/12/10保守的な政治体制と対立しながら自由のために写真を手段にしたエヴァ・ペスニョ(1910–2003)
24/12/15自然環境における人間の姿を研究することに関心を寄せた写真家マイケル・ぺト(1908-1970)
24/12/20ベトナム戦争中にナパーム弾攻撃から逃げる子供たちを撮影したニック・ウット(born 1951)
25/01/06記録映画の先駆者であり前衛映画製作者でもあった写真家ラルフ・スタイナー(1899–1986)
25/01/10アメリカ西部を占める文化の多様性を反映した写真家ローラ・ウィルソンの足跡(born 1939)
25/01/15フランスの人文主義写真運動で活躍したスイス系フランス人ザビーネ・ヴァイス(1924–2021)
25/02/03サルバドール・ダリとの共作でシュールな写真を創出したフィリップ・ハルスマン(1906–1979)
25/02/06ベトナム戦争に対する懸念を形にした写真家フィリップ・ジョーンズ・グリフィス(1936-2008)
25/02/18芸術に複数の糸を持っていたシュルレアリスムの写真家エミール・サヴィトリー(1903-1967)
25/03/19シュルレアリスムの先駆的な写真家でピカソのモデルで恋人だったドラ・マール(1907-1997)
25/03/25ホロコースト前の東欧のユダヤ人社会を記録した写真家ローマン・ヴィスニアック(1897-1990)
25/04/01ソーシャルワーカーからライフ誌の専属写真家に転じたウォレス・カークランド(1891–1979)
25/04/04写真家ビル・エプリッジは20世紀で最も優れたフォトジャーナリストの一人だった(1938-2013)
25/04/25ロバート・キャパの弟で総合施設国際写真センターを設立したコーネル・キャパ(1918-2008)
25/05/01激動1960年代の音楽家たちをキャプチャーした写真家エリオット・ランディの慧眼(born 1942)
25/05/23生まれ故郷ブラジルの熱帯雨林アマゾン川流域へのセバスチャン・サルガドの視座(1944-2025)
25/06/22風景への畏敬の念と激動の気象現象への驚異が伝わるミッチ・ドブラウナーの写真(born 1956)
25/07/26ティンタイプ写真でアパラチアの伝承音楽家に焦点を当てたリサ・エルマーレ(born 1984)
25/08/03色彩の卓越した表現を通して写真というジャンルを超越したデビッド・ラシャペル(born 1963)
25/08/20ヨーロッパ解放やコンゴ紛争などでの勇敢な取材で知られるドミトリ・ケッセル(1902–1995)
25/08/25長大吊り橋を撮影したピーター・スタックポールはライフ誌創刊の写真家になった(1913-1997)
25/09/08アパラチアや南東部の農村地帯の人々の肖像写真で知られているドリス・ウルマン(1882-1934)
25/08/25長大吊り橋を撮影したピーター・スタックポールはライフ誌創刊の写真家になった(1913-1997)
25/09/15指導者であり預言者であり歴史家であり学者だった写真家ジョン・ローエンガード(1934-2020)
25/09/17女性を客体ではなく主体として描写した写真家エレン・フォン・アンワースの視線(born 1954)
25/09/22精巧に演出された赤ちゃんたちの愛らしい写真で世界的に評価されるアン・ゲデス(born 1956)
25/09/26エロティックで都会的なスタイルの頂点を極めた写真家ヘルムート・ニュートン(1920-2004)
25/10/06モデルからファッション写真家に転じたスリランカ系英国人ナイジェル・バーカー(born 1972)

子供の頃「明治は遠くなりにけり」という言葉を耳にした記憶がありますが、今まさに「20世紀は遠くなりにけり」の感があります。掲載した作品の大半がモノクロ写真で、カラー写真がわずかのなのは偶然ではないような気がします。20世紀のアートの世界ではモノクロ写真が主流だったからです。しかしデジタルカメラが主流になった21世紀、カラー写真の台頭に目覚ましいものがあります。ジョエル・マイヤーウィッツとサンディ・スコグランド、ジャン・ボードリヤール、 F・ディレク・ウヤル、マーティン・パー、コンスタンティン・マノス、久保田博二、ポール・フスコ、エルンスト・ハース、エヴリン・ホーファー、アレック・ソス、アンディ・ゴールドワージー、ウィリアム・エグルストン、ソール・ライタ、などのカラー作品を取り上げました。

photographer  Famous Photographers: Great photographs can elicit thoughts, feelings, and emotions.

2025年10月4日

高市早苗はマーガレット・サッチャー型右翼政治家

高市自民党新総裁
自由民主党の新しい総裁に選出された高市早苗 (中央)©2025 共同通信

マーガレット・サッチャー

1955年の結党から70年の節目に、初めて女性の自民党総裁が誕生した。高市早苗は10月中旬に召集される臨時国会で日本史上初の女性首相に就く公算が大きい。政治と無縁のサラリーマン家庭で育ち、保守の論客が「ガラスの天井」を破った。高市は長年、英国初の女性首相マーガレット・サッチャーを崇拝してきた。彼女は今、鉄の女という野望の実現に一歩近づいた。しかし多くの女性有権者は彼女を民主主義の擁護者とは見ていない。就任の挨拶で「ワーク・ライフ・バランス捨てる」と述べたことが批判を浴びているし、憲法改悪を標榜しているのも要注意である。イギリスのBBC放送デジタル版によると東京にあるテンプル大学のアジア研究ディレクター、ジェフ・キングストン教授は、高市が党内の溝を癒すことに大きな成功を収める可能性は低いと語ったという。「彼女は自らを日本のマーガレット・サッチャーと称している。しかし財政規律という点では、彼女はサッチャーとは全く異なる」「しかし、サッチャーと同じく、彼女はヒーラーとしてはあまり役に立たない。女性のエンパワーメントにはあまり貢献していないと思う」と教授は述べたというのだ。高市は強硬な保守派であり、女性が結婚後も旧姓を名乗ることを認める法律は伝統に反するとして長年反対してきた。また、同性婚にも反対している。彼女がマーガレット・サッチャー型右翼政治家というのはその通りだろう。公式サイトで「信念を貫き、ポピュリズムに抗する」と主張しているが「新自由主義右翼」という言葉とも整合する。新自由主義とは、政治や経済の分野で「新しい自由主義」を意味する思想や概念。なお日本では以下の複数の用語の日本語訳として使われている。ネオリベラリズム:1930年以降、社会的市場経済に対して個人の自由や市場原理を再評価し、政府による個人や市場への介入を最低限とすべきと提唱する経済学上の思想。1970年以降の日本では主にこの意味で使用される場合が多い。ニューリベラリズム:初期の個人主義的で自由放任主義的な古典的自由主義に対して、より社会的公正を重視し、自由な個人や市場の実現のためには政府による介入も必要と考え、社会保障などを提唱する。高市は新保守主義と新自由主義を兼ね備えた1980~90年代的な新古典的な右翼だ。テレビにデビューした頃からずっとそういう類型だった。小泉進次郎陣営が「ステマ」で「ビジネスエセ保守」と流していたらしいが、保守ではなく右翼である点を除いて妥当な評価だったと思う。しかしそれをすっぱ抜かれたあたり小泉陣営の選挙戦はどうしようもなく拙劣だった。下記リンク先はロイター通信の記事「サッチャーに触発され、日本の次期首相の高市はガラスの天井を打ち破る」です。

Reuters  Inspired by Thatcher Japan's PM-in-waiting Takaichi smashes glass glass ceiling | Reuters