2021年9月26日

アンゲラ・メルケルを首相の座に導いた漁師たち

November 1990
リューゲン島の小屋で漁師たちと語り合うアンゲル・メルケル(1990年)

リューゲン島の漁師たちが小屋の外に立っている女性に気づいたのは、1990年11月の霧のかかった寒い朝だった。バルト海で漁をしていた彼らは、それが誰なのかを確かめるために岸に近づいた。ハンス・ヨアヒム・ブルは、見知らぬ人が政府から派遣された漁獲割り当ての検査官ではないかと心配した。「私たちは魚を降ろした後、彼女に用件を尋ねた。「彼女は国会議員に立候補していて、私たち漁師がどうしているかを知りたいと言った。それで、自然に彼女を小屋に招き入れて、一緒にシュナップスを飲んだんだ」とブル。その若い候補者とは、アンゲラ・メルケルであった。そして、ドイツ北東部の煙と酒に満ちた漁師小屋が、彼女の最初の選挙活動の場となったのである。青い作業服を着た5人の漁師が2つのテーブルを囲んで煙草を吸い、メルケルはそのうちのひとりと会話をしているというものだ。背景には髭を生やした漁師が座り、煙草を吸いながら窓の外を眺めている。小屋の中に光が差し込み、オランダの古い絵画のような絵になっている。

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ジーンズに白いシャツ、栗色のカーディガンを羽織った36歳のメルケルは、まるでタイムトラベラーのように遠い昔の漁師を訪ねているかのようだ。ある意味、彼女はそうであったのである。この選挙はドイツ統一後初の選挙であった。共産主義の東ドイツで育った5代目の漁師であるブルは、西欧諸国がもたらす変化に不安を感じていた。「メルケルは、私たちの懸念を議会に訴えると言ってくれた」と彼は言う。そして12月2日の連邦議会選挙で故郷メクレンブルク=フォアポンメルン州から出馬して初当選した。2000年2月にヤミ献金問題によりショイブレCDU党首が辞任すると、メルケルは4月の党大会で承認されCDU党首に就任した。2005年9月18日に行われた総選挙では、メルケル率いるCDU/CSU連合が勝利、11月22日、メルケルは第8代連邦首相に就任したのである。ブルは当時メルケルに投票し、それ以来、メルケルに投票し続けた。この海辺の地域の他の多くの人々も同様である。リューゲン島の猟師小屋は、彼女の政治活動の原点であり、首相の座はここから導かれたのである。アンゲラ・メルケル首相は、きょう26日の総選挙に立候補せず引退する。

aperture 写真で見る アンゲラ・メルケル独首相 在任16年で引退 | BBC ニュース日本語電子版

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