2018年2月17日

岩波文庫「ロバート・キャパ写真集」を手にして


宝島社文庫(2000年)
書店をうろついていたら、ロバート・キャパの写真をカバーにした文庫本が目にとまった。手に取って見ると、帯に「ロバート・キャパが撮影した約7万点のネガから236点を精選して収録」とある。印象的なのは「岩波文庫初の写真集」と強調していることだ。ちょっと待て、1950年代に名取洋之助が編集していた「岩波写真文庫」があったじゃないか、と内心突っ込みかけてしまった。岩波書店の編集者が知らない筈はないだろうし、B6判で、文庫本のA6判とは違う。要するに今の文庫本では初めての写真集ということなのだろう。私は数年前から余程の理由がない限り、文庫版、あるいは新書版の書籍しか買わなくなってしまった。書斎兼寝室に隠遁状態の現在ではあるが、オーディオ装置で音楽は聴くものの、本は滅多に読まない。なぜか分からないが、集中できず、わざわざ喫茶店などに出かけて読むことが多い。写真集は大型本が一般で持ち歩けない。書棚を占有するし、だから小型本は有難いのである。ところで写真集ということで紙質を良くしてあるが、これはキャパの弟でファインプリント志向だった ICP の創設者のコーネルの遺志を継いだものだろうか。キャパの戦争写真はザラ紙の新聞やグラフ誌に発表されたもので、綺麗すぎる印刷が気になるのは私だけかもしれない。キャパの写真集は2000年暮れ、宝島社が「戦争・平和・子どもたち」と題した文庫本を出版している。キャパの伝記で知られるリチャード・ウェーランが編纂しただけに素晴らしい。写真は大きいほうが確かに見栄えがするが、真に優れた写真は小さくても価値は落ちない。岩波文庫が更なる写真集を発行することを期待したい。

amazon  ICPロバート・キャパ・アーカイブ編『ロバート・キャパ写真集 』(岩波文庫) 2017/12/16

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