2017年11月3日

ピンホール現象に関する「アリストテレスの難題」を解いてみよう

Annular Eclipse Shadows on May 20 in 2012 by ©Justin Soffer

木漏れ日の針孔現象
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ピンホールカメラの原理について訊かれると、私は「光の直進性を利用したもの」と答えることにしている。これで何となく納得してしまうらしく、例えば「どうして光は直進するのか」という突っ込みを受けたことがない。中国の経書によれば、紀元前5世紀に光の直進性が知られていた。墨子や荘子らは影について語っている。衝立にピンホールを開けて倒立した像を作ることを最初に記述したのは墨子である。墨子は物体が光をあらゆる方向に反射することも、物体の頂点がから発せられた光線が針孔を通過すると像を作りだすことを知っていたし、針孔を通過した光だけが像を結ぶことに気づいていた。ピンホール現象が人の手によらず発生するのを最初に観察したのは紀元前4世紀、古代ギリシアの哲学者アリストテレスだと言われている。日蝕のとき木陰になった地面に三日月形の像が浮き上がってるのを見て、葉と葉の小さな隙間がそれを作りだしていることに気づいた。像が倒立することに対しては、アリストテレスは頭を悩ますことはなかったようだ。太陽からくる円錐状の光を想定して単純に説明した。すなわち円錐の頂点が孔の位置にあり、それが反対側にもうひとつの円錐を作りだし、これが太陽の像を結ぶと考えた。彼が関心を抱いたのは、孔の形がなんであれ、太陽の像が日蝕時には必ず三日月形になることだ。これは「アリストテレスの難題」として残り、16世紀まで解決されることがなかったという。

光の直進性を証明する実験装置
10世紀、アラビアのアルハゼン(イブン・アル・ハイサム)がカメラオブスクラを作って視覚の研究をした。3本の蝋燭を一列に並べ、壁との中間に孔を開けた衝立を置いた。彼は右側にある蝋燭の光が壁の左側に像を結び左側の蝋燭の像は右に出ることに気が付いた。このことからアルハゼンは光の直進性を導き出したが、像を結ぶのが小さな孔だけであることに注目した。形のまちまちな孔が、同じ太陽の円形の像、あるいは日蝕時に三日月形の像を結ぶのはなぜか? この「アリストテレスの難題」を16世紀になって解いたのが、ギリシャのフランチェスコ・マウロリコだったという。マウロリコはヨハネス・ケプラーの先駆者とも言える数学者であった。眼球が作る像とレンズのない小さな隙間が作る像、その両方に関する理論に没頭した、と歴史書は説明している。前置きが長過ぎたようだ。ここまで読んでいただいたあなたは、マウロリコがどのように「アリストテレスの難題」を説明したか知りたくなりませんか? 実は私がそうなのである。ところが、彼が解いたということが分かったものの、どのように説明したかは見つからないのである。私はピンホール、あるいはカメラオブスクラ関係の書籍をそれなりに持っている。しかしその中からは答えが出ずじまいだ。もしやと思い、インターネットで検索してみたが、やはり見つからなかった。仕方ない、それではということで、自分で考えることにした。あなただったらどう説明しますか?

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