2015年2月16日

イスラーム国の呼称変更統一の困難


中東のテロ組織IS(イスラーム国)に対しNHKが「過激派組織IS=イスラミックステート」と呼ぶようにしたそうである。理由は「この組織が国家であると受け止められないようにするとともに、イスラム教についての誤解が生まれないように」とウェブサイトで説明している。国名でないことは十分に浸透していると思われるし、それにイスラミックステートはイスラーム国を意味する英語をカタカナ表記にしただけで、真の意味での呼称変更とは言えない。イスラーム国という呼称は、例えば中国では「伊斯兰国」と呼ぶように、依然多くの国で使われている。日本で問題になっている背景には、東京ジャーミイの「犯罪者、テロリストたちをイスラム国と呼ぶことは、あたかもイスラームという宗教がテロを行う怖い宗教という間違ったメッセージを日本の方々に伝えかねません。いやすでにそういったイメージを持たれた日本人の方々も少なくないのではないかと思われます」という、マスメディアに対する呼びかけがあり、日本在住のムスリムへの配慮があるのだろう。それではどう呼べばいいのか? 駐日トルコ大使は「DAESH、ISIL等の表現を用いる例がある」と指摘している。イラクとレバントのイスラーム国の略語ISILは国連、日本政府、米国が正式に使用している用語だが、略称としてはイラクとシャームのイスラーム国を意味するISISもある。実はISILもISISも旧称で、昨年6月にIS(イスラーム国)と改めたという事実を押さえておく必要があるだろう。DAESHは「ダーイシュ」と読むが、アラビア語داعشの翻字 "al-Dawla al-Islamiya fi Iraq wa ash-Sham" の略称である。これはISISのことで、フランスで使われているという。固有名詞の現地音主義に沿えば、アラビア語 الدولة الإسلاميةの翻字 "ad-Dawlah al-ʾIslāmiyyah" のカタカナ表記「ダウラ・アルイスラミーヤ」が一番相応しいと思われるが、これは日本では普及しないのではないだろうか。アラビア語の「アル=カーイダ」が浸透した先例があるが、いささか時期を失した感がある。というわけで決定打が見当たらず、呼称の変更統一の困難を感ずる。

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