2013年8月3日

映画「風立ちぬ」とヘンミ式計算尺


スタジオジブリ(2013)
スタジオジブリの宮崎駿監督の長編アニメーション映画『風立ちぬ』を観た。零式艦上戦闘機、いわゆるゼロ戦の設計主任として有名な堀越二郎の物語がタテ糸なら、映画のタイトルになった堀辰雄の自伝的小説がヨコ糸。それが見事に綾織られた作品である。この映画ではふたつの小道具が印象的だった。ひとつは煙草。喫煙シーンがやたらと登場するが、宮崎駿監督は愛煙家なのだろうか。もうひとつはヘンミ式計算尺。飛行機の設計図を書く場面に登場するのだが、愛する人と手を握りながら、片手で操作するシーンまである。

私はできの悪い工学部の学生だったけど、まだ電卓はなく、歯車を使ったタイガー式手回し計算機にお世話になった。1923(大正12)年から販売が開始され、翌年、改良を重ねた3台が呉海軍工廠へ納入されたという。従って堀越二郎もこの計算機を使ったのではないかと思うのだが、映画ではそうではなく、スライド式の計算尺が使われている。時代考証をしているだろうから間違いないのだろう。私が初めてヘンミ式計算尺を使ったのは、確か中学生の時だったと記憶している。私は竹製の計算尺を持っているうが、流石に今は製造中止になっているようだ。電卓の登場によって今や歴史的遺物となったしまったが、現物を見たことがない人は、映画を理解できただろうか。

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