2022年1月10日

ペルーのクスコのスタジオをヒントに自然光に拘ったアーヴィング・ペンの鮮明な写真

Veiled Women
Three Veiled Women of Rissani, Morocco, 1971

Self-Portrait 1986

アーヴィング・ペンは、1917年6月16日にニュージャージー州ペイン・フィールドで生まれた。静物、ポートレート、ファッションで知られるアメリカの写真家である。1934年から1938年にかけて、フィラデルフィア工業美術学校に入学。そこでアレクセイ・ブロドヴィッチ(1898–1971)に師事し、絵画、デッサン、工業美術、グラフィックを学んだ。この間『ハーパーズ・バザー』誌にペンのドローイングが多数掲載された。2年間フリーランスのデザイナーとして活躍した後、1940年にアレクセイ・ブロドヴィッチの後任としてニューヨークのマンハッタンの5番街 を拠点とする、高級百貨店チェーン「サックス・フィフス・アベニュー」のアートディレクターに就任した。その後、メキシコやアメリカで写真や絵画の制作を行う。ニューヨークに戻ったペンは、アレクサンダー・リバーマン(1912–1999)から『ヴォーグ』誌のアート部門の仕事を依頼された。当初は雑誌のレイアウトを担当し、後に写真にも挑戦した。1983年、彼の写真は初めて『ヴォーグ』誌の表紙を飾った。

JeanPatchett
Woman with Handkerchief, New York, 1951

前後するが、1948年12月、ペンはペルーのクスコに滞在した。そこで傾斜した天井と、壁がガラス張りの自然光を使った写真スタジオを見つけ、幼い兄妹を撮影した。これをヒントに欧米の自然光スタジオで労働者を撮影、そして同じような自然光が差す場所で1964年、クレタ島の人々、1965年にスペインのエストレマドゥーラのロマ(ジプシー)を撮影した。その後、アフリカのダホメの人々を撮るために、テント式の移動スタジオを考案した。1967年になるとサンフランシスコでバイカーギャング地獄の天使、若きヒッピー家族、そしてロックグループを撮っている。この撮影シリーズはネパール、ニューギニア、モロッコと続いたが、1974年に出版された。数ある著書の中での最高傑作だと私は思う。そのキャリアは、著名人やクリエイターのポートレート、世界を歩き回り文化現象を発見する写真、ファウンド・オブジェを含むモダニズムタッチの静物画など多岐にわたる。 グレーや白の無機質な環境に被写体を置くことで、独自のシンプルなスタイルを確立する。

Hell's Angels
Hell's Angels Group, San Francisco, 1967

また直角に曲がった背景のセットを構成し、渋くシャープなコーナーを形成している。この手法でマルセル・デュシャン(1887–1968)ジョージア・オキーフ(1887–1986)イーゴリ・ストラヴィンスキー(1882-1971)マーサ・グレアム(1894–1991)W・H・オーデン(1907–1973)などのポートレートを撮影している。アーヴィング・ペンの静物画は、線とボリュームで構成され、抽象的な相互作用を表現するものだった。写真のディテールを非常に重視し、いくつかの印刷技法を試みている。最も注目すべきは、鮮明で清潔に見える白黒のプリントである。"Earthly Bodies"(この世の身体)は、ぽっちゃりからガリガリまで、さまざまな体型の女性のヌードがポーズをとっている写真展だった。1949年から1950年にかけて撮影されたものだが、展示が行われたのは1980年になってからだった。

Shepherdess
Young Berber Shepherdess, Morocco, 1971

ペンの写真アーカイブはシカゴ美術館に所蔵されていたが、1995年にライアソン&バーナム図書館の写真部門に移管された。しかしシカゴ美術館は200点のファインアートのプリントを所蔵している。2013年には、スミソニアン美術館がアーヴィング・ペン財団から写真100枚を贈与された。ペンの作品は死後も1975年から2013年まで、欧米を中心に各地で展示されている。ロンドンのフォトグラファーズ・ギャラリーで開催された「プラチナプレート」展(1975年) ニューヨーク・メトロポリタン美術館「街路の素材」(1977年)ニューヨーク・ペースギャラリー「モンテカルロ芸術の春」(1986年)ヒューストン美術館「ダホメ」(2004年)ニューヨーク・モーガン図書館&美術館「出会いの閉鎖」(2008年)スウェーデン近代美術館「多様な世界」(2012年)など多数。ペンは2009年10月7日、マンハッタンの自宅で92歳の生涯を閉じた。

museum  Irving Penn (1917-2009) Biography, Artworks & Exhibitions | The Art Institute of Chicago

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