2018年4月19日

再考:スピーカ-の慣らし運転


強制慣らし運転(片方のスピーカーの極性±を逆にして繋ぐ)
前エントリー「北欧デンマーク DALI 社の小型スピーカーに痺れる」で慣らし運転について触れた。新品のスピーカーは使い込むことによって性能が向上するという現象で、日本では老化、劣化を意味する「エイジング」(aging)という奇妙な呼び方をされている。英語では文字通り慣らし運転を意味する Running in である。スピーカーのボイスコイルはダンパーを介して、振動板はその外周を取り巻くように張られたエッジと呼ばれる柔軟な膜を介して、それぞれフレームに固定されている。ダンパーは蜘蛛の巣と形が似ているので Spider と呼ばれている。エッジは縁のことだが、海外ではでは同じ意味の Surround という用語が一般的である。振動板をフレームに固定するサスペンションで、ゴムやウレタンが素材である。いずれのサスペンションも新しいうちは硬い。ところが慣らし運転によってほぐれ、信号に対するレスポンスが向上し、良い音が手に入るようになるという。新しい革靴は硬いけど履き続けると足に馴染む、という喩え話を読んだ記憶があるが、言い得て妙である。音質向上の関する科学的根拠に関して、納得できる説明をネットで見つけることができなかったと前述したが、例えば周波数特性が Before After で差が出るなら可視化できると思う。しかしそのようなデータも残念ながらお目にかかっていない。以前使っていたスピーカーが、カサカサした乾いた音から潤いのある音に変化したのを記憶しているが、数値測定したわけではないので、あくまで主観であり客観的な説明とは言えない。ダリ社の取扱説明書によると、最大性能に達するまでおおむね100時間を要するという。1日1時間なら100日、2時間なら50日、4時間でも一カ月近くもかかってしまう。せっかちな人向けには強制慣らし運転をする方法が知られている。片方のケーブルの極性を逆にして繋ぎ、スピーカを向かい合わせてピンクノイズを流すのであるが、下手をするとスピーカを壊してしまうリスクがあるようだ。ピンクノイズというのはすべての周波数の信号が入っている音のことだが、普段聴いている好きな音楽が慣らし運転に向いているという説と矛盾する。しかし例えばロックで慣らし運転したら、クラシック音楽の再生に合わなくなるというのは俄に信じがたい。もっとも諸説紛々、異論が入り乱れるのがオーディオ談義の面白さかもしれない。

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