松田元著『祇園祭細見(山鉾篇)』より(クリックすると拡大表示されます)
今月1日八坂神社で長刀鉾の稚児らの「お千度の儀」があり、一か月にわたって繰り広げられる祇園祭の幕が開いた。生身の稚児が乗るのは、祭のハイライト、7月17日の山鉾巡行の際に先頭を行く長刀鉾だけで、今年は京都市立御所南小学校4年の林賢人君が選ばれた。ずいぶん前のことになるが、ボランティアを確保できず、函谷鉾を曳く大勢の外国人を見て驚いたことがあるが、今でもそうだろうか。今年は久し振りに見物しようと思っている。函谷鉾といえば上掲のイラストがその前掛けのタペストリー(綴れ織り)で、旧約聖書創世記第24章の説話に取材したものだ。画面上部はアブラハム家の老僕エリエゼルが処女リベカに水を求めている光景だ。聖書によると、アブラハムの息子イサクは40歳となったが、嫁を生まれ故郷のハランから迎えたいと言い、エリエゼルに探してくるようにと頼む。ハランの町外れの井戸へたどり着いたエリエゼルは「水を飲ませてください」と頼んだときに「どうぞお飲みください。駱駝にも飲ませてあげましょう」と答えた娘がイサクの嫁になるよう祈る。そこにリベカがやって来て、祈った通りになったので、婚姻話が進む。画面下部はふたりの結婚式の様子で、駱駝に乗っているのはイサクである。蛇足ながら、このふたりが愛し合い抱擁する場面を描いたのがレンブラントの代表作「イサクとリベカ」である。函谷鉾の前掛けがどのようにして日本に来たか不明だそうだが「寺井氏菊居随筆に云。前まくは天竺織といふ。西域の人物甚見事なり。当町沼津宇右衛門旧家にてむかし繁昌たりし時唐物黒船物いろいろ渡る時分買置たりしといふ云々」と増補に記されているそうだ。祭の期間中は重要文化財の指定を受けた前掛けは二階に飾り、復元新調された前掛けが巡行時に鉾に掲げ披露される。
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