シャリアは主に二つの文献資料に基づいている。一つはイスラム教の聖典であるクルアーン、もう一つは預言者ムハンマドの言行録であるスンナである。クルアーンは、7世紀のアラビアで大天使ガブリエルを通して預言者に23年間にわたって啓示された神の言葉であると信じられている。法的な問題に直面したときウラマー(学者)はまずクルアーンを参照する。しかしこの聖典は新約聖書よりも短く、主に法律に関するものではなく、具体的な命令に割かれているのは約10パーセントに過ぎない。クルアーンを参照しても法的な問題を解決できない場合は学者たちはスンナに頼る。スンナとは、 預言者に関するハディース、すなわち口頭伝承のことである。預言者の死後、 ハディースは編纂され、信憑性と主題に基づいて整理され、記録された。スンニ派とシーア派は、どのハディースが有効であるかについて意見が分かれている。法的な疑問に対する答えがクルアーンやスンナのどちらにも見つからない場合、学者たちはキヤースとイジュマーという2つの二次的な教義に頼る。キヤース(何かの長さ、重さ、または性質を測定または確認すること)は類推による推論である。キヤースの教義は、神がクルアーンの中で特定の行為を命じたり禁じたりしたのに理由があったいう考えに基づいている。キヤースの教義は、クルアーンまたはスンナの中で示された命令や立場が、元の事例から新たな事実関係へと拡張できるかどうかを検証する。イジュマー とは、預言者の「私の共同体(信者たち)は決して誤りを認めない」という宣言に基づき、法学者たちが確立した合意の原則である 。個々の学者の意見は決定的なものとはみなされないが、特定の事柄について合意が得られれば、それは最終的かつ拘束力のある法とみなされる。 イジュマーの法的権威は 、クルアーンとスンナに次ぐものである。預言者の死後最初の100年間で、特定の法体系を中心とする法学派や法思想の学派( マズハブ)が形成され始めた。当初は多数存在した法学派は、時を経て統合されていった。
スンニ派にはハナフィー派、シャーフィイー派、マーリキー派、ハンバル派の4つの主要な学派があり、シーア派ではジャアファリー派が主流となっている。イスラム教徒が多数を占める多くの国では、法制度が完全にシャリアによって規定されているという認識がある。これはごく少数の国に限った話である。しかし、イスラム教徒が多数を占める国のほとんどは、シャリアの要素をコモンローや大陸法の枠組みに取り入れた混合法制度を採用しており、その他多くの国は完全に世俗的な法制度を採用している。シャリアの古典的なモデルを採用している国々は、シャリアをコモンローとして取り入れるか、シャリアの原則に完全または部分的に基づく法典を持つか、あるいは関連する統制法が存在しない場合にはシャリアを適用する。シャリアは、裁判官(統治政府から法的事件を裁く権限を与えられた者)とシャリア学者の双方によって並行して解釈されることがある。このモデルを採用している国には、サウジアラビア、イラン、モルディブなどがある。イランの最高指導者は、シャリア学者でなければならない。最高指導者は、公選された役人からなる審議機関である専門家会議によって選出される。最高指導者は、司法行政を監督する司法長官を任命する。イランの法制度は審問制であり、裁判所は成文化された法律を執行し適用する。第一審裁判所は、民事、家庭、刑事の各部門に分かれている。中間控訴裁判所と最高裁判所がある。専門裁判所には、軍事裁判所、聖職者裁判所、行政裁判所、仲裁裁判所がある。革命裁判所は、国家および国際安全保障に対する犯罪、政府に対する陰謀、スパイ行為、密輸、麻薬、および特定の金融犯罪を裁くのである。下記リンク先はオックスフォード大学法学部の「シャリアと死刑に関する入門」です。
An introduction to sharia & the death penalty | The Faculty of Law, University of Oxford

0 件のコメント:
コメントを投稿