先の参議院選挙で、自民、公明両党と憲改定に前向きな維新と国民民主党で計85議席を確保し、改憲発議の条件となる3分の2(166議席)を維持した。岸田文雄首相はテレビ番組で、安倍晋三銃撃事件を受け「民主主義を守るためにも努力を続ける」と表明した。その上で選挙結果に関し「自民、与党にありがたい票が示されている。大きな責任を感じて政治を進めたい」と述べた。そして憲法改定に関しては「発議できる案をまとめる努力に集中していきたい」と意欲を示したという。衆議院でも昨年秋の選挙で、国会による改憲案の発議に必要な議席3分の2(310議席)を自民、公明、維新の3党で維持、衆参両院で改憲の国会発議ができる状態になっている。憲法改定の手順については日本国憲法第96条は
この憲法の改正は、各議院の総議員の三分の二以上の賛成で、国会が、これを発議し、国民に提案してその承認を経なければならない。この承認には、特別の国民投票又は国会の定める選挙の際行われる投票において、その過半数の賛成を必要とする。憲法改正について前項の承認を経たときは、天皇は、国民の名で、この憲法と一体を成すものとして、直ちにこれを公布する。
と規定している。憲法は簡単に改竄できないようになっているが、自民党は2013年4月に「日本国憲法改正草案」を発表し、憲法改正の手始め96条改定に取り組む方針を明言した。現行憲法が「各議院の総議員の3分の2以上の賛成」を憲法改定発議の要件と定めているのを「衆参各院の総議員の過半数」で発議できるように緩和しようとするものであった。安倍晋三前首相は、国会答弁で「まずは多くの党派が主張している96条の改正に取り組む」と明言した。これは、改定要件を緩和して憲法の改悪のハードルを下げ、その後に憲法9条や人権規定、統治機構等を随時改竄しようとの意図に基づくものと思われる。これは立憲主義の下での憲法改定のあり方として極めて不当であり、到底許されない。
ただ憲法改定を強行するには、最後の砦である国民投票のハードルを最終的に超える必要がある。国民投票が行われる場合、メディアを利用した広告宣伝活動が重要な意味を持つことになるが、これに対しては悲観的にならざるを得ない。壊憲勢力は金力とメディア支配力を活用して、国民を洗脳することを目論んでいるからだ。立憲民主、共産両党は国会での憲法論議自体に後ろ向きだったが、立憲民主党が問題解決の確約も取らずに憲法審議を進めることに同意してしまった。岸田文雄は党内の圧力に押されて、安倍晋三の「悲願」を継承するのではないだろうか。日本国憲法改竄の足音が聴こえてきた。
日本弁護士連合会パンフレット「憲法96条改正に異議あり」の表示とダウンロード(PDF 823KB)
0 件のコメント:
コメントを投稿