2016年10月26日

効果不明の電源ノイズリダクション機器


オヤイデ OCB-1 DXs
オーディオに凝ると「電線病」を患わる可能性があるという。より高音質を求めてケーブルを取っ替え引っ替えする病である。スピーカーのケーブルを交換したことがあるが、音質が向上したか、私の聴覚ではわからなかった。それはともかく音の違いが顕著に変化するのはスピーカーであることは言うまでもない。レコードプレーヤーのカートリッジも音質を左右する。CDプレーヤーの場合はD/Aコンバータかもしれないが、デッキを交換した際、私にはこれまた分からなかった。オーディオ愛好家がもうひとつ強調するのが電源である。オーディオ売り場には図太いケーブルが付いた電源タップ(写真左)が置いてあり目を丸くする。オーディオ用の壁コンセントまで売っている。発電所から家庭に届くまでに電気はノイズで汚れるという。さらに冷蔵庫や洗濯機、電子レンジ、照明器具などの電気製品が汚れを加速するそうである。その汚れを浄化すればオーディオ装置の音質が向上するというのである。

コンセントに挿すだけで屋内配線上のノイズを消去するという触れ込みの「NOISE HARVESTER」なる小さな電子機器を購入した。ノイズがあるとLEDが点滅する仕掛けになっている。早速オーディオ機器がつながっている電源タップに挿し込んだところ、間歇的に青いLEDランプが点灯した。試しに部屋のエアコンのスイッチをONにしたら激しく点滅した。しかしノイズの変化は自分の耳では分からない。電源ノイズリダクションシステムというのが謳い文句であるが、その効果が不明なのである。ネット通販サイトのレビューに「ミニコンポや普及価格帯の製品では効果が感じられないレベル」「オーディオはその僅かの差のために投資をしなければならない趣味です」とあった。なるほど、なるほどね。改めてオーディオに凝るのは危険と感ずる。ただ台所など、家中のコンセントに差してみたが、耳に聴こえない、目に見えない電気の汚れの存在が可視化されて見つかるのが結構面白い。ノイズ除去に関しては余り期待せず、その探知機と割り切れば、ひとつ持っていても決して無駄ではないアイデア商品と言えそうだ。ただしノイズに神経質になる余り、電線病ならぬ電源病を患わないよう、くれぐれも注意するのが肝要である。

* 当初(株)ヤザワコーポレーションの「雷バスター」と一緒に写した写真を掲載していたのですが、ちょっと紛らわしいので「NOISE HARVESTER」のみの写真と挿し替えました。(10/27)

2016年10月24日

法華寺十一面観音に潜む生身の観音像

入江泰吉「十一面観音菩薩立像」(和辻哲郎『古寺巡禮より)

澄み渡った秋空の下、奈良佐保路の門跡寺院法華寺を訪ねた。靴を脱ぎ畳敷きの本堂に入ると、スピーカーから解説が流れていた。内陣須弥壇に一対の厨子があり、左側の扉が開いている。国宝本尊十一面観音菩薩立像である。奈良国立博物館の正倉院展の日程に合わせて10月22日に開扉、特別公開されている。この十一面観音の厨子の扉はずっと開け放しにされていた。戦後、御分身像すなわちレプリカができてから閉められ、期間を限って公開するようになったという。厨子はやや遠く、中が暗いのでバッグから双眼鏡を取り出し、そのディテイルを観察する。衆生救済の手を差し伸べるため右手が長いという解説が耳に響く。1918年(大正7)5月、間近から厨子の中を覗き込んだ和辻哲郎は次のようにその印象を記している。
胸にもり上がった女らしい乳房。胴体の豊満な肉づけ。その柔らかさ、しなやかさ。さらにまた奇妙に長い右腕の円さ。腕の先の腕環をはめたあたりから天衣をつまんだふくよかな指に移って行く間の特殊なふくらみ。それらは実に鮮やかに、また鋭く刻み出されているのであるが、しかし、その美しさは、天平の観音のいずれにも見られないような一種隠微な蠱惑力を印象するのである。(和辻哲郎『古寺巡禮』岩波書店
確かに大和路ではこの観音像は異彩を放っていると思う。しかし、若きこの哲学者の言葉そのものに私は驚愕を覚える。唐変木には、仏像からこのようなイマジネーションが湧いてこない。残念ながらエロティシズムを感じないのである。御分身像と写真から、光明皇后をモデルにしたという伝説を持つ像を想像してみる。紗を透かした乳房に乳首は見えるだろうか。所詮人間は仮の姿だという。天上界には男も女もないという。しかし、隠微ならぬ淫靡な蠱惑を私は生身の女体に感じてしまう。横たえた裸身の尖った乳首に感じてしまう。
法華寺(奈良市法華寺町)
観音さまはだいたい女性の仏さまとして、人々から親しまれうやまわれてきています。奈良の法華寺の国宝十一面観音の美しさには誰でも魅せられますが、それは当時、天平時代に美人の代表のようにいわれていた光明皇后がモデルだったといわれています。(瀬戸内寂聴『観音経』中公文庫)
そんなことはない、まさか皇后が仏師のモデルになるはずはないだろう。というのが真相かも知れないが、この伝説は無碍に捨てることはできないだろう。北天竺乾陀羅(けんだら)国の見生王が問答師をつかわし、光明皇后をモデルに三体の観音像を刻み、一体を持ち帰ったのだそうだ。菩薩というのは大悟に向かう求道者の姿である。境内には、皇后が病者救済のために建立したといわれる蒸し風呂が残っている。我親(みずか)ら千人の垢を去らん、という誓いを実行し続けた皇后は、最後に癩病患者と対峙することになる。この伝説に対し和辻哲郎はきわめて饒舌だ。
信仰を捨てるか、美的趣味をふみにじるか。この二者択一に押しつけられた后は、不得己、癩病の身体の頂(いただき)の瘡(かさ)に、天平随一の朱唇を押しつけた。そうして膿(うみ)を吸って、それを美しい歯の間から吐き出した。(『古寺巡禮』)
これは菩薩である、観世音菩薩の姿である。伝説の糸を紡ぎ合わせると、私にも皇后の姿が機織れるような気がする。遥かかなたのガンダーラの王も、生身の菩薩の評判を耳にしたのだろう。立ち上がって私は堂内の安置物をもう一度見ることにした。平家物語に登場する横笛の像がある。高山樗牛の瀧口入道を読むと面白そうだ。病身に半身を起こした維摩居士坐像がある。仏典『維摩経』は変成男子の思想を越えているという。女性の仏道修行に関する大乗仏教側のひとつの回答を提示しているという。尼僧に礼を述べ、法華寺本堂を後にした。

2016年10月22日

時代祭の巴御前が醸し出す性の倒錯美

巴御前に扮した宮川町の芸妓さん(京都御所)

時代祭見物に出かけた。京都に移り住んでこの祭を初めて観たとき、ただの仮装行列じゃないかと落胆したことを憶えている。同じ意味で葵祭もそうだったし、祇園祭の山鉾巡行は岸和田の「だんじり」のような勇壮さがないと思ったものである。しかし歳をとったせいか、それとも見方が変化したのか、別の感想に次第に塗り替わるようになった。例えば葵祭は紫式部の『源氏物語』の重要なシーンになっている。時代祭は新しい祭だが、京都の歴史絵巻になっている。四、五年前から、この日は京都御所に出かけ、行列出発前の平安婦人列の装束を撮るようになった。平安時代の貴族の装束は十二単に象徴されるように、見事な「かさね色目」すなわち色重ねになっている。時代祭の装束が平安時代のそれを忠実に再現しているかは不明だが、考古学ならぬ考現学として興味深いものがある。ところで毎年花街の芸妓さんが扮する巴御前の甲冑姿、架空のものかもしれないが、その美しさに毎度のことながら見とれてしまう。女性の武者姿が醸し出す、いわば性の倒錯美なのだろう。

2016年10月21日

第42回2017年JPS展(日本写真家協会展)作品募集

応募受付期間:2016年12月10日(土)〜2017年1月15日(日)

公益社団法人日本写真家協会は、1950年に創立され、今年66年目を迎えた我が国有数のプロ写真家の団体です。2011年には公益社団法人として移行認定され、現在約1600名の会員を擁し、写真展をはじめ写真教育、講演会やセミナー など各種の公益性の高い事業を行っています。当協会の事業の核として毎年開催しているJPS展は 1976年にスタートし、おかげさまで今回42回を数えることができました。歴代の入賞・入選者からはプロ写真家を輩出し、写真愛好家にも人気の高い歴史のある公募展です。昨年は4歳から95歳とた いへん幅広い方に応募いただきました。特に18歳以下部門では、中学生、高校生の写真愛好家の育成、奨励に努めております。入賞、入選された作品は、5月の東京展を皮切りに、名古屋京都での巡回展を予定しています。作品のテーマは自由です。自然の姿、風景、都市の貌、人間 とその暮らし、動植物、海外の風俗や風景、心象的な表現など、ご自身の作品の中から、これは是非多くの人に観て欲しいと思 う作品をお寄せください。新鮮で想像力豊かな、オリジナリティーに溢れた作品を期待しています。みなさまのたくさんのご応募をお待ちしています。

公益社団法人日本写真家協会 写真展事業担当理事 熊谷 正

2016年10月19日

特別公開される京都ハリストス正教会

Deardorff8x10 Nikkor240mmF5.6 Neopan100Acros

日 時:10月28日(金)~11月7日(月)9:00~午後16:00 ※
場 所:京都市中京区柳馬場通二条上る
詳 細:http://www.kobunka.com/tokubetsu/

※10月30日(日)と11月6日(日)の午前中は礼拝があるので、京都非公開文化財特別公開の係員の説明がありません。静かに拝観してください。午後は通常通り公開されます。

2016年10月14日

お前さんディランのコトバわかるかい?

Bob Dylan at The Oracle Arena, Oakland, Calif. Feb 11, 1974 ©Tsutomu Otsuka

湾岸沿いに走るBART(Bay Area Rapid Transit)にサンフランシスコから乗り、対岸のオークランドに降り立った。会場のオラクル・アリーナ前にはすでに人だかりがしていた。若いカップルが寄ってきて何と「チケットいらない?」と言うではないか。どうやらプロのダフ屋ではなく、1枚余っているという。予約チケットなしで飛行機に乗ってしまった私にとっては渡りに船、飛びついたのは言うまでもない。1974年2月11日、私の眼前にザ・バンドを従えたボブ・ディランが現れた。1966年のバイク事故でディランは隠遁生活に入ったが、これは本格的復帰活動の始動でもあった。演奏が始まった。隣に座った先ほどの若者がこれを吸えという。
ディランの声が、ミゾを壊したレコードみたいに、耳の中で空転する。アブラムシみたいになったくしゃくしゃのマリファナに酔った男が「お前さんディランのコトバわかるかい?」と耳元で囁く。「いやぼくはわからないよ」「おいらも、さっぱりさ」――。ロビー・ロバートソンの指が大きく広がって、そのすき間に露出した無精ひげディランが、ぼーっとかすんで、ぼくの視界からゆっくり消えてゆく。
最後から二番目の曲の時だったろうか、客席を監視していた屈強そうなガードマンの列が切れた。私は席を離れ、舞台下に突進した。モノクロフィルムが入ったライカM5、カラーが入ったニコンF2、夢中でシャッターを落とす。宴は終わった。翌日、ロサンジェルスに移動した。新聞を広げると、ディランよりむしろザ・バンドの演奏を絶賛している。カリフォルニア大学のキャンパスに出かけたら、木の枝にぶら下がった「ディランのチケット」という紙が風に揺れていた。ディランの歌詞集を書店で買い、「アリスのレストラン」で食事を済ませ、ホテルに戻ると電話が鳴った。「ロス公演のチケット、入手できますよ」「いや、もう結構です」…。

2016年10月12日

過電圧60000ボルトに対応した雷バスター


雷サージについて前エントリー「雷ガード付タップは電子機器を守ってくれるか」で触れたが、実際に購入した電源タップは、コードが付いてない、壁コンセントに差し込むタイプだった。一番肝心と思われる「ひかり回線ルータ」の電源供給は、コード付タップで、これを雷ガード付きに交換しようと思ったが、コンセントが家具の裏に隠れている。交換には重い家具を移動する必要がある。躊躇っていたが、差し込むだけで使っているタップが雷ガード付きになる製品を知った。ヤザワコーポレーション「雷バスター60000V」である。購入後に気付いたのだが、その名の通り最大サージ電圧60000ボルトまで保護するという。通常の雷ガード付タップはせいぜい6000〜15000ボルトまでしか対応していない。1キロ離れた場所に、30000アンペアの中程度の落雷が発生した場合、地面から10メートルの高さに敷設された電線には、10000ボルト以上の誘導雷サージが発生すると言われているそうである。そういう意味ではより優れた耐雷サージ機器と言えそうだ。万が一落雷による過電圧を吸収した場合、雷ガード付タップは新しいものと交換する必要があるという。差し込み口が多いマルチタップは高価である。この「雷バスター」は実勢価格1000円強だから、安価で高性能と言えそうだ。

2016年10月7日

ファーブルの帽子


ファーブルの写真集(新潮社)
子どものころからファーブルの名は知っている。これはよくあることで知識という名の奸計である。彼の『昆虫記』は余りにも有名だが、有名の割に読まれているのだろうか。そのことを痛感、4~5年前、岩波文庫の10冊セットを購入した。しかし一冊目の半ばでストップしたままである。これを全部読了した人には大いなる尊敬の念を送りたいが、翻訳者にも賛辞を贈りたい。その代わりというのも変だが新潮社『ファーブルの写真集 』(新潮社2008年)はすんなり読み通すことができた。写真は息子のポールが撮影したもので、撮影機材が今日ほど発達していなかった時代にも関わらず、技術的にも素晴らしい。というわけでファーブルと接点はいささか乏しいのだが、私は『昆虫記』もさることながら、別の憧憬がある。彼が愛用していた帽子である。黒いつば広のフェルト帽だが、これはフランスの中央高地ルーエルグ地方の人であることの証であるという。流行なのだろうか、これに似た黒いフェルトのつば広帽子を昨年あたりから街中で見かけるようになり、遅れ馳せながら最近購入した。私はカウボーイハットを持っているが、逆立ちしてもカウボーイになれないと悟り、かぶるのをやめてしまった。おそらくファーブルの帽子もどきも同じ運命を辿るような予感が今からする。恰好だけで、ファーブル的な隠遁生活を送れない自分を恥じるばかり、いささか慚愧の念に堪えない。せめて急がずにゆっくり『昆虫記』に目を通そうかなと思っている。

2016年10月1日

没後150年 坂本龍馬 特別展覧会

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会 期:2016年10月15日(土)~11月27日(日)
時 間:火~木・日曜日 9:30~18:00 金・土曜日 9:30~20:00
会 場:京都国立博物館平成知新館(1F・2F)京都市東山区茶屋町527

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