巴御前に扮した宮川町の芸妓さん(京都御所)
時代祭見物に出かけた。京都に移り住んでこの祭を初めて観たとき、ただの仮装行列じゃないかと落胆したことを憶えている。同じ意味で葵祭もそうだったし、祇園祭の山鉾巡行は岸和田の「だんじり」のような勇壮さがないと思ったものである。しかし歳をとったせいか、それとも見方が変化したのか、別の感想に次第に塗り替わるようになった。例えば葵祭は紫式部の『源氏物語』の重要なシーンになっている。時代祭は新しい祭だが、京都の歴史絵巻になっている。四、五年前から、この日は京都御所に出かけ、行列出発前の平安婦人列の装束を撮るようになった。平安時代の貴族の装束は十二単に象徴されるように、見事な「かさね色目」すなわち色重ねになっている。時代祭の装束が平安時代のそれを忠実に再現しているかは不明だが、考古学ならぬ考現学として興味深いものがある。ところで毎年花街の芸妓さんが扮する巴御前の甲冑姿、架空のものかもしれないが、その美しさに毎度のことながら見とれてしまう。女性の武者姿が醸し出す、いわば性の倒錯美なのだろう。
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