2011年10月19日

寺紋に潜む貴族と仏教寺院の関係

御影堂向拝幕 東本願寺(京都市下京区烏丸通七条上る)Fujifilm Finepix X100

立ち牡丹
京都駅前のヨドバシカメラでフィルムを購入した帰り道、爽やかな秋晴れに誘われ、東本願寺(浄土真宗大谷派)に足を伸ばしてみた。同寺大谷婦人会の「親鸞聖人七百五十回御遠忌法要」が行われていて、御影堂は大勢の女性信徒で一杯だった。向拝、すなわち御影堂正面から張り出した庇(ひさし)の下に、大きな幕が掛かっている。蓮如上人五百回御遠忌の際に寄進されたものらしい。青紫の布地に大きな寺紋が染め抜かれている。通り掛かった寺務所の人に訊くと、真ん中の花は牡丹で、近衛家の家紋に由来するという。播磨屋.comの「名字と家紋」によると、牡丹紋は菊紋、葵紋につぐ権威ある紋章なんだそうである。そして仏教寺院に関しては「藤原氏の氏寺である興福寺、摂関家の子弟が入る大乗寺、近衛家の子女が相ついで嫁した東本願寺などが、牡丹紋を用いている」と解説している。築地本願寺(本願寺築地別院)輪番の職にあった豊原大成氏のブログ記事「輪番独語」には、東本願寺の寺紋が牡丹であることに対し、第20世達如上人(1780~1865)が近衛経熈の娘熈子姫を妃として迎え、近衛家の「抱き牡丹」がもたらされたであろうとの説があるが、もっと早くから用いられていたのではと推測している。しかし米原仏具店の「家紋帳」を見ると、東本願寺の寺紋が「立ち牡丹」であることが分かる。これで間違いないなら、豊原大成氏は「抱き牡丹」を寺紋としているが、どうやらそうではないということになる。しかしいずれにしても、日本の古代から近世までの貴族と寺院の関係が、寺紋に潜んでるいることが興味深い。

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