2026年2月21日

米最高裁はドナルド・トランプ大統領に「屈辱的な」贈り物を与えた

Trump tariffs
Trump vs Supreme Court ©2026 Saul Loeb / AFP

米最高裁判所は、ドナルド・トランプ大統領が昨年、世界各国に広範囲にわたる関税を課したのは権限を逸脱したとの判決を下した。裁判所は6対3の判決で、トランプ大統領が1977年の法律である IEEPA(国際緊急経済権限法)を利用して世界のほぼすべての国からの輸入品に税金を課すことはできないとの判決を下した。この判決により、関税によって生じた推定 1,300億ドルの損失が消費者と企業に返金される可能性が残された。最高裁はこの可能性については判断しなかったが、最終的に別の法廷闘争となる可能性が高い。判決が発表されてから数時間後、トランプ大統領は1974年の通商法第122条という代替法を用いて、すべての国からの商品に新たな10%の暫定関税を課すことを可能にする宣言に署名した。2月20日に発表された最高裁判決は、緊急事態に対応して貿易を規制する権限を大統領に与える IEEPA に基づいてトランプ大統領が施行した関税にのみ関係する。トランプ大統領は2025年2月、中国、メキシコ、カナダからのフェンタニル密売が緊急事態であるとして、これらの国からの製品に課税するために初めてこの法律を発動した。数ヶ月後、トランプ大統領が「解放記念日」と呼んだ日に、彼はさらに大きな措置を講じ、世界のほぼすべての国からの製品に 10% から 50% の関税を課した。この場合、米国の貿易赤字(輸入が輸出を上回る状態)は「並外れた、異例の脅威」をもたらしたとトランプ大統領は述べた。裁判所は、新たな税金を創設する権限は大統領ではなく米国議会にあるとし IEEPA に基づく規制は歳入増加には関係しないと述べた。それでもトランプ大統領が過去1年間に課した関税の多くは IEEPA に基づいて宣言した緊急事態の一部ではなく、最高裁の判決にかかわらず存続する可能性がある。

Donald Trump's worldwide tariffs
Different "Liberty" being brought by Trump's worldwide tariffs ©Mark Knight

これには鉄鋼、アルミニウム、木材、自動車に対する業界固有の関税が含まれており、トランプ大統領は国家安全保障上の懸念を理由に、1962年の通商拡大法第232条という別の米国法に基づいてこれを導入した。ボストンのアトランティック誌のデイヴィッド・フラム記者は4月に開始されたトランプ大統領の関税措置は、10年間で最大2兆3,000億ドルの増収につながると予測していると記した。ジョージ・W・ブッシュ大統領の元スピーチライターであるフラムは、本当の政治的影響はここから始まると語る。「2026年の皮肉な政治的問題は、米国最高裁判所がトランプ大統領を自らの手から救うために間に合うように行動したかどうかだ」とフラムは語った。「最高裁がトランプ大統領を助けようとして行動したかどうかはさておき、概してトランプ大統領に好意的な最高裁判所は、大統領に最も不人気な国内政策の一つからの出口を与えたのだ」と。アトランティック誌の記者によると、問題はトランプがそれを受け入れるかどうかだ。「大統領は援助を受け入れるだろうか? 受け入れるのは賢明だが、屈辱的だろう」とフラムは付け加えた。大統領は関税を「憲法第1条の制約から解放された歳入源」として宣伝していた。しかし最高裁がこの理論を却下したことで、フラムが「憲法革命」に等しいと警告していたものが頓挫した。下記リンク先はロサンジェルスタイムズ紙の「トランプは最高裁判決の挫折を受けて判事を愚か者と呼び新たな10%の世界関税を発表」です。蛇足ながら6年2月20日、米連邦最高裁がトランプ政権の相互関税を違憲と判断したため、日系企業を含む関連関税の還付(返還)請求の可能性が浮上している。最大2.9兆円規模の負担軽減が期待される一方、トランプ氏は「今後5年は法廷で争う」として当面の還付を拒否する姿勢を見せており、実質的な返還は長期間の法廷闘争になる見込みである。

LA_Times  Trump calls justices ‘fools, announces new 10% global tariff after Supreme Court setback

2026年2月19日

平和憲法第9条維持こそが最大の抑止力であり改竄は軍拡競争を招く

憲法9条
平和憲法第9条の改竄を阻止しよう

朝日新聞2月19日付けデジタル版によると、自民党の高市早苗総裁は18日召集の特別国会で第105代首相に選出され、日本維新の会との連立政権である第2次高市内閣を発足させた。衆院選圧勝を経て自民単独で3分の2の議席を持つ「高市1強」と呼べる情勢のもと、首相は同日夜の会見で、憲法改正について「少しでも早く改正案を発議して国民投票につながっていく環境を作れるよう、自民党として粘り強く取り組みたい」と意欲を示したという。憲法改定発議は、日本国憲法第96条に基づき、衆参両院の各総議員の3分の2以上の賛成を経て、国会が憲法改正案を国民投票へ提案する手続きである。発議には、衆院100人以上、参院50人以上の賛成により原案が提出される。発議後、60〜180日以内に国民投票が実施される。断固阻止したいが、雲行きは悲観的である。拙ブログ「平和憲法改竄を目論む高市早苗首相の危険」で述べた通り、記者会見で高市早苗首相(自民党総裁)は「2月9日、記者会見で「国の理想の姿物語るのは憲法」「改正に向け挑戦」と語り、憲法改定を問う国民投票早期実施の意思表明している。憲法k改定を推進する「改憲派」の主張は、時代の変化や安全保障環境の変容を背景に、多岐にわたっている。主に「今の憲法では現実に対応しきれない」という現実主義的な視点と「自前の憲法を持つべき」という主権意識が根底にある。改憲派が最も重視する項目自衛隊の明記(第9条)である。現行の9条は「戦力不保持」を掲げているが、現実には自衛隊が存在している。この「憲法と現実の乖離」を埋めるため、自衛隊の存在を憲法に明記し、違憲論争に終止符を打つべきだとしている。

憲法""

国防の法的根拠は国際情勢が緊迫する中、国の平和を守る組織の法的根拠を最高法規に記すことで、隊員の誇りや身分を保証すべきという主張である。日本において憲法改正に反対する人々(改憲反対派・護憲派)の主張は、主に「平和主義の維持」「立憲主義の守護」「国民の権利の変質への懸念」の3点に集約される。最も大きな争点となっているのが、憲法第9条の改定である。自衛隊を明記したり、集団的自衛権の行使を認めたりすることで、日本が米国の戦争に追従し、戦場になるリスクが高まると主張されている。戦後、日本が一度も直接的な戦争に関与してこなかったのは、第9条という「歯止め」があったからこそであり、これを変えることは国際的な信頼や独自の外交力を失うことになるとの見方だ。改憲の動機が「政府がやりたいことをやりやすくするため」であるならば、それは本来の憲法の役割(権力制限)に逆行するという主張である。そして災害や有事の際に政府に権限を集中させる「緊急事態条項」の新設に対し「内閣による独裁を許す恐れがある」「人権が過度に制限される」と強く警戒しざるを得ない。自民党の憲法改正草案(2012年)などを引き合いに出し、人権の在り方の変化を危惧する声がある。草案等で見られる「個人」という表現の変更や、家族の助け合いの義務化などが「個人の尊厳」よりも「国家や共同体」を優先する思想への転換ではないかと批判されている。「公共の福祉」を「公の秩序」と言い換えることで、政府にとって都合の悪い表現活動や権利が制限されやすくなるという懸念である。下記リンク先は総務省公式サイトの解説「国民投票の仕組み」です

総務省  国民投票制度の概要 | 国民投票の仕組み| 憲法改正の発議 | 国民投票の期日 | 総務省の公式サイト

2026年2月18日

ケンタッキー州の炭鉱産業の現状と炭鉱跡を巡るツアー

Field Trip
Field Trip to River View Coal Mine in Morganfield, Union County, Kentucky

ケンタッキー州の炭鉱産業はかつての黄金時代から大きく変貌し、現在は構造的な衰退とエネルギー転換の過渡期にある。2000年代初頭には約15,000人いた炭鉱作業員は、現在では4,000人を下回る規模(約3,500〜3,800人前後)まで減少している。これは統計開始以来、最低水準に近い数字である。かつてはアパラチア山脈側の東部ケンタッキーが主力だったが、現在は採掘コストの低い西部ケンタッキーが生産の主導権を握っている。しかし州全体の生産量は、安価な天然ガスや再生可能エネルギーへのシフトにより、2020年代に入っても減少が止まっていない。一般的な発電用の石炭(一般炭)が苦戦する一方で、ケンタッキー州、特に東部地域には製鉄用(コークス用)の高品位な石炭(メタ石炭/原料炭)が残っている。世界的な鉄鋼需要、特にアジア圏への輸出が現在の炭鉱経営の「命綱」となっており、エネルギー市場とは異なる動向で一部の鉱山が維持されている。石炭産業の衰退は、単なる経済の問題だけでなく、地域社会に深い影響を及ぼしている。炭鉱閉鎖に伴う失業者に対し、ITスキルや再生可能エネルギー関連の職業訓練を行うプログラムが進められている。過去の採掘による水質汚染や、炭鉱労働者に特有の「黒肺病(じん肺)」の再流行が深刻な社会問題となっている。これに対する医療支援や環境修復(ランド・リクラメーション)に予算が投じられている。2025年から2026年にかけて連邦政府による環境規制の強化と、それに対する州政府の反発という政治的な対立も続いており、業界の先行きには不透明感が漂っている。現在のケンタッキー州において石炭は「かつての経済の主役」から「特定の輸出需要に応えるニッチな産業」へと変化しているのである。州の経済政策も、石炭への依存を減らし、製造業やテクノロジー産業を誘致する方向へと大きく舵を切っている。

ケンタッキー州は「ブルーグラス・ステート」として知られているが、その歴史を語る上で石炭産業は欠かせない要素だ。かつての炭鉱跡を巡るツアーは、当時の過酷な労働環境やコミュニティの絆を体感できる非常に重厚な体験になる。 東部のリンチにある炭鉱跡はかつて世界最大の石炭埋蔵量を誇った場所の一つである。観光用のレールカー(トロッコ)に乗って、地下深くの坑道へと入って行く。1917年の創業時から閉山までの歴史を、最新の音響・映像演出(アニメトロニクスなど)を使って再現しているのである。当時の炭鉱夫たちの生活がリアルに伝わって来る。ビッグ・サウス・フォーク国立河川公園には、かつての炭鉱町を丸ごと保存した野外博物館がある。ゴースト・ストラクチャーと呼ばれる、かつての建物の骨組みを再現した展示があり、オーディオガイドを通じて住民の生の声(録音)を聞くことができる。炭鉱ツアーに参加する際の注意点気温: 坑内は一年中一定の気温に保たれていることが多い。夏場でも薄手のジャケットや長袖を持っていくことが奨められている。炭鉱といえば前エントリー「ドナルド・トランプ政権が気候変動対策における政府の権限を剥奪」に詳述した通り大統領は気候変動が人間の健康と環境を脅かすという科学的発見を消し去ると発表した。かつて私もカンバーランドの炭鉱を訪れたことがあるが、ラストベルト(赤錆地帯)だった。J・D・ヴァンス副大統領の回顧録『ヒルビリー・エレジー』に活写されている。かつて鉄鋼業などで栄えた地 域の荒廃、自らの家族も含めた貧しい白人労働者階層の独特の文化、悲惨な日常を描 いた本書は、トランプ現象を読み解く一冊 として世界中でセンセーションを巻き起こした。その半面アパラチア山脈は伝承音楽の宝庫であり、私が憧憬してやまない地域でもある。下記リンク先はカントリー歌手ロレッタ・リンの自伝的ヒット作品『炭鉱夫の娘』です。

YouTube  Coal Miner's Daughter by Loretta Lynn born in Butcher Hollow, Kentucky, United States

2026年2月16日

セルフサービス考現学

Self-Order Panel
セルフオーダーパネル(マクドナルド金閣寺店

キャプテン・クック(1728-1779)がハワイ諸島を「発見」した200周年記念行事があったのは1978年だったが、そのころ雑誌の取材でホノルルに比較的長い間滞在した。名前は忘れたがある日、大きなステーキハウスに入った。席についたが誰も注文を取りに来ない。厨房のカウンターで注文を取るシステムだった。肉の種類と焼き方を告げると、確か番号札を渡されたように記憶している。アナウンスがあり、再びカウンターに行って料理を受け取ったが、安かったという印象が残った。ホノルルで「ウェイターを介さず、自分でステーキを焼くスタイル」を楽しめるレストランは、かつて非常に人気があったが、現在は選択肢が限られているという。セルフサービス(料理を自分で運んだり焼いたりするスタイル)の増加は人口減少や深刻な人手不足と密接に関係しているようだ。特にハワイのような観光地や、日本国内の飲食業界においてこの傾向は顕著。少子高齢化や人口減少により、サービスを支える若年労働者が物理的に減少していること。そしてウェイターが各テーブルを回る「フルサービス」は、人件費が非常に高くつくこと。アメリカでは人手不足を背景に最低賃金が上昇し続けている。料理を客が運ぶスタイルにすることで、フロアスタッフの人数を最小限に抑え、料理の価格上昇を緩やかにしたり、利益を確保したりしている。といった点が理由になっているようだ。ウェイターといえばパリのカフェやレストランの(ャルソンは世襲制だと聴いたことがある。ではなぜ世襲制という「都市伝説」が生まれたのか。パリの老舗カフェのウェイターは単なる「アルバイト」ではなくギャルソン・ド・カフェという立派な専門職として認識されている。狭いテーブルの間をすり抜ける身のこなし、注文をすべて暗記する記憶力、独特の計算方法などは、長年の経験が必要な職人技である。終身雇用的な側面: かつては一つの店で何十年も勤め上げるのが一般的でした。そのため客側も「いつ行ってもあの人がいる」という印象を持ち、それが「家系で継いでいるのではないか」という錯覚を生んだ可能性がある。

self-service

昔ながらのフランス料理業界では、親から子へというよりは師匠から弟子へ技術を伝える徒弟制度が強く根付いていた。若い見習いがベテランの背中を見て育つ文化が、外から見ると伝統的な家系制度のように見えたのかもしれない。ギャルソンはもともと「男の子」を意味する言葉。かつて年配の給仕をボウヤ(ギャルソン)と呼んでいた名残があるが、これが家族経営的なニュアンスを与えた可能性も否定できない。 ところでユニクロのセルフレジシステムは、ユーザーから見れば「爆速で終わる魔法のレジ」だが、その裏側にある「人手不足」との関係はなかなか興味深いものがある。なぜセルフレジでも「人手不足」を感じるのか。会計が自動化されてスタッフが不要に見えるが、実際には「人の手」が依然として必要である。私のような現金派で、操作が苦手な客への個別対応に追われている。しかしユニクロはこのシステムで「レジ打ちという単純作業」を極限まで減らすことができた。近所にマクドナルドが改装後、セルフオーダーパネル(セルフオーダーレジ)が導入された。裏表6台、つまり6人が注文を受付けてくれるわけだから、行列に並ばず、自分のペースでカスタマイズを選べるのが最大のメリットだろう。ただ使ってみると、階層が深いのが難点である。マクドナルドがセルフオーダーを積極的に導入している背景には単なる「人件費の削減」だけでなく、顧客体験の向上と売上アップを両立させる緻密な戦略があるようだ。人間よりも「おすすめ(提案)」が得意。注文の最後に「ご一緒にポテトはいかがですか?」や「デザートもおすすめですよ」と画像付きで提案される。 店員を前にすると焦ってしまう人も、画面越しならゆっくり検討でき、結果としてトッピングの追加やセットへのアップグレードが増える傾向にあり、実際、有人レジよりもセルフオーダーの方が平均客単価が高くなるというデータも出ているという。下記リンク先はオランダ・アムステルダムを本拠とする国際的な出版社、エルゼビアの公式サイトに掲載されている研究論文「セルフサービスキオスクの革新的なフレームワーク:顧客価値知識の統合」です。

book Innovative framework for the self-service kiosks: Integrating customer value knowledge

2026年2月14日

ドナルド・トランプ政権が気候変動対策における政府の権限を剥奪

Rigorous scientific findings since 2009 have shown that greenhouse gases and global warming are harming public health ©Jeff Swensen/Getty Images

ドナルド・トランプ大統領は木曜日、気候変動が人間の健康と環境を脅かすという科学的発見を消し去ると発表し、地球を危険なほどに熱化させている汚染を制御する連邦政府の法的権限を終わらせる。この措置は、二酸化炭素、メタン、その他4つの温室効果ガスの制限を撤廃する重要な一歩であり、科学者たちはこれらのガスが熱波、旱魃、その他の極端な気象を加速させていると指摘している。気候変動を「でっち上げ」と呼ぶ大統領が率いる政権は、世界中の科学者の大多数が間違っており、数十年の研究が示すほど暑い地球は脅威ではないと主張しているのである。これは事実の否定であり、リチャード・ニクソン大統領は気候変動の危険性を警告し、ジョージ・H・W・ブッシュ大統領は国際気候条約に署名した。これは少数の保守派活動家や石油・ガス・石炭関係者が、化石燃料から太陽光、風力、その他の非汚染エネルギーへの移行を阻止しようとする長年の闘いの中で、決定的な一撃となった。トランプ大統領は「これがこれ以上ないほど大きな出来事だ」とホワイトハウスで発言し、環境保護庁の長官リー・ゼルディンは笑顔で見守っていた。「我々はオバマ時代の破滅的な政策である、いわゆる『危険行為認定』を正式に終了します」と彼は述べた。トランプはこれを「過激なルール」と呼び、「グリーン・ニュー・スキャンムの根拠」となり、大統領が排出削減や再生可能エネルギー開発のあらゆる取り組みに付けるラベルを付けた。ゼルディンはこれを「アメリカ史上最大の規制緩和措置」と呼んだ。民主党が気候変動に関する「イデオロギー的十字軍」を展開し「アメリカ経済の全部門、特に自動車産業を窒息させた」と非難した。政権は自動車メーカーやその他の企業に推定1兆ドルの節約ができると主張したが、その見積もりの経緯については説明を控えている。問題となっているのは、2009年に発表された「危険の発見」と呼ばれるもので、温室効果ガスの排出がアメリカ人の健康と福祉に危険をもたらすという科学的結論である。この発見は200ページ以上の研究と証拠に基づいている。気候科学者を「愚かな人々」と呼んだトランプは「この発見には事実に基づく根拠がない」と主張した。EPA(経済連携協定)は約17年間、基盤岩の発見を根拠に、石油・ガス井戸、排気管、煙突、その他の化石燃料燃焼源からの二酸化炭素、メタン、その他の汚染を制限する規制を正当化してきた。環境防衛基金によれば、この危険行為の撤回は今後30年間で同国の温室効果ガス排出量を10%増加させる見込みである。この追加の汚染は、2055年までに最大58,000人の早死と3,700万件の喘息発作増加につながる可能性があると同団体は述べている。しかし水曜日のフォックス・ビジネスで、内務長官ダグ・バーガムは、トランプ政権が主要な温室効果ガスである二酸化炭素をどう見ているかを要約するために、否定された神話を復活させたのである。

Despite decades of established science, the president has said climate change is a “hoax.”

二酸化炭素は植物の成長を助ける一方で、大気中の異常に高い濃度が自然のプロセスを圧倒し、旱魃や熱波、その他の有害な出来事の頻度と深刻さを増大させていると科学者たちは述べてい流にも関わらず「二酸化炭素は決して汚染物質ではなかった」「私たちが呼吸するとき、二酸化炭素を排出します。植物は生きて成長するために二酸化炭素を必要とします。彼らはより多くの二酸化炭素でよく育ちます」と。バラク・オバマ大統領はソーシャルメディアで、危険行為認定の撤廃は「私たちは安全で、健康も、気候変動と戦う力も低下する――すべては化石燃料産業がさらに多くの利益を得るためだ」と書いている。カリフォルニア州知事ギャビン・ニューサムは裁判での異議申し立てを約束した。「この無謀な決定が法的挑戦を乗り越えれば、さらなる致命的な山火事、極端な熱死、気候変動による洪水や干ばつの増加、そして全国的な地域社会への脅威の増加につながるだろう。この違法行為に異議を唱えるために訴訟を起こす」と温室効果ガスの規制を継続すると述べた。天然資源防衛評議会の会長マニッシュ・バプナは「法廷で彼らを見かけ、私たちは勝つだろう」「科学的にも法律的にも明確であり、EPAは法的根拠のない急ぎ足でずさんで非科学的な判断を下している」と述べた。危険行為の認定を取り消す際、トランプ政権はクリーンエア法が政府にアメリカ人に直接害を及ぼす汚染のみを制限できると法的主張を展開して、その被害が「汚染源の近く」にある場合に限るものだとした。しかし温室効果ガスは大気中に蓄積し、地球の周りに一種の毛布を形成して太陽の熱を閉じ込める。それは地球の気候を変え、熱波、旱魃、ハリケーン、洪水を激化させ、氷河を溶かして海面を上昇させているのである。ヨーロッパのコペルニクス気候変動サービスによると、産業時代以降、地球は平均して摂氏約1.4度(華氏2.5度)温暖化している。木曜日に発表された措置は、自動車が排出する温室効果ガスの制限を撤廃するものである。アメリカ合衆国における温室効果ガスの最大の単一排出源は交通である。バイデン政権は自動車メーカーにより多くの非汚染電気自動車の販売を促進するため、排気ガスの排出規制を厳格化しようとしていた。ただし自動車からの他の汚染物質、例えば窒素酸化物やベンゼンに対する規制は依然として適用されている。危険物認定を撤廃することで、EPAは発電所や石油・ガス井などの固定汚染源からの温室効果ガス規制を撤廃する道が開かれいる。このプロセスはすでに始まっていいる。アメリカ合衆国は現在、世界で2番目に大きな気候汚染国(中国に次ぐ)だが、産業革命以降、最も多くの温室効果ガスを大気中に排出している国でもある。この区別は重要だ。なぜなら過去の長寿命温室効果ガスの排出が現在の温暖化に大きく寄与しているからである。2009年以降、温室効果ガスや地球温暖化が公衆衛生を損ない、直接的な死者を出していることが明らかになった。

ransportation
Transportation is the largest single source of greenhouse gases in the United States

最近の研究によると地球が現在のペースで温暖化を続ければ、山火事の煙への曝露により2050年までに推定7万人のアメリカ人が死亡するとされており、これは温暖化による健康上の危険の一例に過ぎない。別の研究では、アメリカ合衆国での極端な高温による死亡者数は近年で倍以上に増加していることがわかっている。そして世界的に気温が暖かく湿潤になるにつれて、病気が広がっている。昨年、アメリカ合衆国からの旅行者が4,947人にデング熱に感染した。デング熱は熱帯および亜熱帯気候で多い蚊媒介性の病気で、海外では前年から30%増加したと疾病対策センターが報告している。2015年のパリ協定の下で、ほぼすべての国が温室効果ガスの排出削減に取り組み、地球温暖化を産業革命前水準より摂氏1.5度(華氏約2.7度)に抑えることに合意した。この目標は、気候変動の最悪の影響を避けるために極めて重要と見なされている。科学者たちは現在、今世紀末までに地球が摂氏平均約2.6度(華氏4.7度)温暖化すると予想している。トランプはパリ協定からアメリカを離脱させ、約200か国中で唯一脱退した国となった。また国連の気候条約やノーベル賞受賞グループからも脱退させ、世界有数の気候科学者たちで構成されたグループも結成した。ニューヨーク州のチャック・シューマー上院議員とロードアイランド州のシェルドン・ホワイトハウス上院議員(いずれも民主党)は、EPAが公衆衛生と環境を守る責任を放棄したと述べた。「この恥ずべき退位――経済的、道徳的、政治的な失敗――は、アメリカ人の健康、住宅、経済的福祉に害を及ぼす」「科学的事実や常識的な観察を無視し、大口の政治寄付者に奉仕している」と声明で述べた。ウェスヴァバージニア州の共和党上院議員シェリー・ムーア・カピトは石炭が経済の重要な要素であり、トランプの決定を公に称賛した数少ない議員の一人だった。「この廃止は、私の故郷ウェストヴァージニア州に変革的な影響をもたらすでしょう。これらの取り組みは、ウェストバージニア州民が長らく耐えてきた手頃なガソリン車に対する民主党の有害な攻撃を覆すものになるでしょう」とカピトは声明で述べた。トランプは2024年の選挙戦で石油・ガス業界から最大4億5千万ドルの支援を受け、太陽光や風力などのクリーンエネルギー源の建設を抑制しつつ、化石燃料の燃焼を安くしやすくするために取り組んできた。危険行為の判断を覆すことは、気候変動の科学を否定する人々にとって聖杯と見なされている。それは、もし廃止が裁判で支持されれば、将来の政権が温室効果ガス抑制の規制を復活させることも妨げられる可能性があるからだ。ゼルディンや他の政権関係者は、危険物認定が経済に足かせだと述べた。彼らは、EPAに気候変動対策を義務付けることが、購入可能な自動車の種類を制限し、消費者の選択肢を損なうと主張した。一部のビジネス団体は政権の行動を支持したが、他の団体は沈黙や控えめな反応を示した。

 Zeldin
EPA administrator Zeldin called for accelerated drilling

それはかつて危機認識に反対していた米国商工会議所のような業界団体が、近年気候変動の科学的現実を認めているからである。自動車メーカーを代表する自動車イノベーション同盟のジョン・ボゼッラ会長は、この動きを支持するかどうかについては明言を控えた。しかし声明で、バイデン政権が課した自動車排出基準は「現在の市場需要を考えると自動車メーカーにとって極めて困難なもの」であると述べた。他の業界関係者は、EPAの動きが電気自動車製造に打撃を与えると述べた。業界団体であるゼロエミッション輸送協会のディレクター、アルバート・ゴアは声明で危険行為の撤回は「米国全土で次世代車の製造に投資している企業の足を引っ張ることになる」「これらの車両の世界的な販売が記録的な年となった後にこれが起こったことは、ワシントンと市場の間に明確な断絶があることを示しています」と。複数の業界団体はEPAに対し、同機関の提案がもたらす法的影響を懸念していると述べた。彼らは一部の州がより厳しい温室効果ガス政策を導入し、企業が国内各地の断片的な法律に対応しざるを得なくなるのではないかと懸念している。石油・ガス会社を代表するアメリカ石油協会の会長マイク・サマーズは、業界は自動車に適用される規制を廃止したいと考えているが、政府は発電所や石油・ガス井からの二酸化炭素およびメタン排出の制限を継続すべきだと述べた。主要な石油・ガス会社の多くはすでに汚染防止に数百万ドルを投資している。「私たちがそれを支持しない理由の一つは、連邦によるメタン規制を支持しており、産業として排出削減に注力しているからです」とソマーズは最近の記者との電話会談で述べた。危険行為の撤回を求める動きは、トランプ大統領がホワイトハウスに再選されるずっと前から始まっていた。これは連邦政府の改革を目指す保守派の青写真であるプロジェクト2025の目標だった。「この危険の認定は、EPAによってクリーンエア法に適合しない規制を正当化するために悪用されている」と、化石燃料エネルギー推進を推進する保守系研究団体アメリカン・エナジー・アライアンスの会長トーマス・J・パイルは述べた。「議会がもしEPAが二酸化炭素を汚染物質として規制すべきだと考えるなら、法律で明確にそれを明記すべきであり、EPAに明確な権限を与えるべきだ」と。危険の認定を否定することで、ゼルディンは2019年から2023年までロングアイランド選出の議会議員として取っていた立場を覆している。その間、彼は気候変動対策に何度か賛成票を投じ、その中にはEPAが危険認定を適用することを禁止する支出法案の修正案に反対票を投じた。さらには、超党派の下院議員による気候解決コーカスにも参加した。2022年には、天然ガス掘削の許可と加速を公約してニューヨーク州知事選に立候補たが落選した。トランプ政権ののEPA長官に就任した後、ゼルディンは気候変動を嘲笑し、危険と判断を撤回することで「短剣を突き刺す」ことを望んでいると述べた。以上ニューヨーク・タイムズ紙で気候政策と政治を取材しているリサ・フリードマン記者の記事の抄訳で、下記リン先はその原文です。

New York Times  Trump Administration Erases the Government's Power to Fight the Climate Change | NYT

2026年2月12日

アイルランド・トラヴェラーの歴史と文化

Irish Traveller Family
Irish Traveller Family, Killorglin, County Kerry, 1954

アイルランド・トラヴェラー(インドを起源とするロマとは異なる)は先住の少数民族である。その名の通りアイルランド先住のトラヴェラーは遊牧民としての歴史を持ち、樽蓋付きの荷馬車やティンカーズ(鋳掛け屋)という名称で知られ、伝統的なブリキ細工の技術と結び付けられている。トラヴェラーは伝統的に工芸品や動物の売買、その他の創造的かつ肉体的な仕事によって場所から場所へと移動しながら生計を立ててきた。トラヴェラーたちは、アイルランドの伝統音楽、特にアイリッシュ・フィドル演奏とイリアン・パイプの発展において中心的な役割を果たしたことで知られている。何世代にもわたり、トラヴェラーたちは歌や物語を町から町へと伝え、独自の歌唱、物語の語り、楽器演奏のスタイルを発展させてきた。現在、アイルランドには全人口の0.7%を占める31,000人のアイルランド系トラヴェラーがおり、15,000人のアイルランド系トラヴェラーが英国に居住し、さらに10,000人のアイルランド系トラヴェラーが米国に居住している。文化は決して固定されたものではなく、古い伝統と新しいアイデアが融合し、時間とともに常に変化し進化する。トラヴェラー文化もまた、絶えず変化し、適応しています。いくつかの変化は、あらゆる文化に時間の経過とともに起こる変化と関連している。他の変化はコミュニティに強制的にもたらされました。例えば、法律の改正により、トラヴェラー遊牧民は事実上犯罪化された。また、市場取引や馬の所有に悪影響を及ぼす法律もあった。これは、長年受け継がれてきたトラヴェラーの伝統が非常に困難になっていることを意味している。これはコミュニティに深刻な影響を及ぼしているのである。それにもかかわらず、トラヴェラーは依然として自分たちをトラヴェラーであるとみなし、トラヴェラーとしてのアイデンティティ、文化、伝統に誇りを示している。今日のトラヴェラー文化の重要な要素には、遊牧民としての歴史と文化理解の共有、言語の共通使用、大家族を中心とした強固な価値観などが含まれます。馬の所有はトラヴェラー文化の強い伝統であり、象徴でもあるのだ。トラヴェラーの活動家と支持者による長期にわたるキャンペーンの結果、トラヴェラーは、ユニークで貴重な伝統、言語、文化、アイデンティティを持つ独特の民族グループとしてアイルランド政府に認められた。民族的承認は主に象徴的なものと考えられるかもしれないが、それはトラヴェラー文化の歴史的な否定に終止符を打ち、他の前向きな発展のきっかけとなった。カントまたはガモンとして知られるトラヴェラー言語は、トラヴェラーの錫細工技術と共に、2019年にユネスコ無形文化遺産に登録された。

Irish Travellers cooking
Irish Travellers cooking in rural Ireland, 1960s

これはアイルランド政府がこれらのトラヴェラー文化の要素を、アイルランドのより広範な文化的慣習と同様に保護、促進、そして称賛することに同意したことを意味する。もう一つのプラス面は、トラヴェラー文化と歴史を初めて公式の学校カリキュラムに取り入れるという国家的な取り組みである。しかしトラヴェラーはコミュニティとしても個人としてもアイルランドで高いレベルの偏見と排除を経験しているのである。多くの家族が、衛生設備、水、電気などの基本的な施設が利用できないトラヴェラー用居住地を含め、過密住宅や極めて劣悪な生活環境での生活を余儀なくされている。これはトラヴェラーのコミュニティに慢性的な健康問題をもたらしている。全アイルランド・トラヴェラー健康調査によると、トラヴェラーの男性は定住者よりも平均寿命が15年短く、女性は定住者よりも平均寿命が11年短いことがわかった。自殺率は全国平均の7倍で、トラヴェラーの死亡者の11%を占めている。差別と排除は、トラヴェラーにとって生涯にわたる経験である。トラヴェラーに対する差別は、アイルランドにおいて許容される最後の人種差別形態と呼ばれている。ミンキアは、アイルランドの伝統的な移動少数民族であり、アイルランド政府や定住民は彼らを「アイリッシュ・トラベラー」と呼ぶ。ミンキアとは、彼ら独自の言語であるキャント語またはギャモン語で「アイルランド移動民族のコミュニティー」を意味する。アイリッシュ・トラベラーは英語を話すが、彼らが時として互いに使用する言語はキャント/ギャモン語である。トラベラーという名前は、彼らの遊牧民としてのアイデンティティから付けられた。5世紀には彼らが錫鍛冶の技術を持つことから「ホワイトスミスと呼ばれていた。長年にわたり彼らは、定住者の一部からティンカー(鋳掛け屋)ナッカーズ(廃馬解体業者)アイティネランツ(移動労働者)、ジプシー、パヴィーなどと呼ばれ、彼らはこれらの呼称を人種差別的として嫌ってきた。人種差別主義者でない定住者であれば、政治的に正しい「アイリッシュ・トラヴェラー」や「トラヴェラー」という言葉を使うだろう。残念ながら、アイリッシュ・トラベラーの多くは、このような不快なレッテルを貼られ続けている。ロマ(ジプシー)、ロマ、アイルランドのトラヴェラーは豊かで多様な文化を持っている。下記リンク先はロンドンの全国的な市民社会組織トラヴェラームーブメントの解説「アイルランドのトラヴェラーとは誰なのか?」です。

romani  Who Are the Irish Travellers | Traditions and Language | Cork Traveller Women's Network

2026年2月11日

ソーシャルメディアの弊害(24)中道改革連合「ノダメ」野田佳彦の大罪

厳しい表情でインタビューの開始を待つ中道改革連合の野田共同代表と斉藤共同代表(2月8日)

そもそも「中道」とは仏教に由来する言葉だ。例えば日蓮宗の公式サイトは中道とは「それぞれに適した選択をする」ことで「常に真ん中というわけではない」と説明する。なぜこの「中道」を党名にいれたのか。野田佳彦は1月16日に記者会見を開き「右にも左にも傾かず、熟議を通して解を見いだしていくという基本的な姿勢」と話した。右でもない左でもないというのが右翼でもない左翼でもないというなら間違いだろう。この言葉はフランス革命期の「(憲法制定)国民議会」(1789年7月9日から1791年9月30日)における9月11日の会議において「国王の法律拒否権」「一院制・二院制」の是非を巡り、議長席から見て議場右側に「国王拒否権あり・二院制(貴族院あり)」を主張する保守・穏健派が、左側に「国王拒否権なし・一院制(貴族院なし)」を主張する共和・革新派が陣取ったことに端を発していて「中翼」はないからだ。道改革連合の野田佳彦共同代表は9日、党本部で記者会見を行い、8日投開票の衆院選で大惨敗を喫したことをめぐり、自身のトップとしての「器」についてどう考えるか問われ「みなさんのご判断です」とした上で「結果を出せないということは、器がダメだ、ということしか言いようがない」と述べ、自ら自分自身に「ダメだし」した 。

ところで第19代東京都知事の舛添要一が X(旧Twitter)で野田佳彦を「戦国の世なら野田はもう2回も首をはねられている」と痛烈批判した。以下に引用。

所謂「ノダメ」という言葉は二ノ宮知子による漫画・ドラマで有名な『のだめカンタービレ』の主人公、架空のキャラキター野田恵(のだめぐみ)に由来するが、野田佳彦にもオーバーラップする。中道改革連合共同代表を務める野田佳彦はさすがに辞意表明したが、民主党政権時代の2012年、首相として踏み切った解散総選挙で、安倍晋三の自民党に大敗し、政権を明け渡したことがある。これである、未だに「ノダメ」と揶揄され所以は。ソーシャルメディアの弊害分析してきたが、烏合の衆である高市早苗首相ネット応援団を侮った野田佳彦の責任は重い。とは言え「耄碌した舛添要一氏が、再度の反自民勢力結集などと夢想垂れ流してるが、日本政治の歴史はルビコンを渡ったんだよ、もう反日/左翼はいらないと国民は明確に意思表示、二大政党制なる左翼温存の擬制は雲散霧消、今後は対中姿勢が政権選択の要、媚中か対中抑止か、そして媚中も10年以内に滅び去る~🤣」といった異論が X に散見される。結局ソーシャルメディアは分断を製造するマシンなのだろう。

asahi  衆院選で惨敗した中道改革連合「人材難」に重鎮が軒並み落選し再建はいばらの道 | 朝日新聞社

2026年2月10日

平和憲法改竄を目論む高市早苗首相の危険

戦争放棄
日本平和委員会「あたらしい憲法のはなし」より

記者会見で高市早苗首相(自民党総裁)は「国の理想の姿物語るのは憲法」「改正に向け挑戦」と語り、憲法改定を問う国民投票早期実施の意思表明した。主権者の反応を窺う発言だろう。鉄のサッチャーの如き「強さ」を仰ぎ、烏合の衆向け「商売右翼」が人気の素、「類い稀なる嘘吐き」で、原子力空母でぴょんぴょん跳ねて「独裁者」トランプに媚びる恥ずかしさ。なんだかんだで、わたしゃイヤだと遠吠える。以下引用。

高市首相は9日、自民が歴史的大勝を収めた衆院選を受けて党本部で記者会見した。公約に掲げた2年間限定での食料品を対象とした消費税ゼロについて早期に超党派の国民会議で議論し、「夏前には中間取りまとめを行いたい」と表明した。憲法改正にも「挑戦」し、是非を問う国民投票の早期実施に向け、環境整備に取り組む考えを示した。(途中略)憲法改正は、衆参各院の3分の2以上の賛成で発議できる。首相は「国の理想の姿を物語るのは憲法だ。国の未来をしっかりと見据え、改正に向けた挑戦も進めていく」と述べた。

ただ憲法改定を強行するには、最後の砦である国民投票のハードルを最終的に超える必要がある。国民投票が行われる場合、メディアを利用した広告宣伝活動が重要な意味を持つことになるが、これに対しては悲観的にならざるを得ない。壊憲勢力は金力とメディア支配力を活用して、国民を洗脳することを目論んでいるからだ。立憲民主、共産両党は国会での憲法論議自体に後ろ向きだったが、立憲民主党が問題解決の確約も取らずに憲法審議を進めることに同意してしまった。高市早苗は党内の圧力に逆利用して、安倍晋三の「悲願」を継承するのではないだろうか。日本国憲法改竄の足音と軍靴の響きが聴こえてきた。リンク先のページで上掲のイラストが掲載されている、1947年8月2日文部省検査済「あたらしい憲法のはなし」青空文庫の全文を読むことができる。

book_bk  日本平和委員会「あたらしい憲法のはなし」 1972年(昭和47年)11月3日初版発行(青空文庫)

2026年2月9日

衆院選:日本国憲法改竄の足音と軍靴の響きが聴こえてきた

日本国憲法

衆院選は昨日8日に投開票され、自民党が圧勝。中道改革連合が壊滅的な惨敗したが、その前に時計の針を少し戻してみよう。朝日新聞2025年11月27日付の記事によれば、自民党と日本維新の会は、連立政権合意で設置を決めた憲法9条改定に関する「条文起草協議会」を開き、維新が考えを示した。維新案は戦力不保持を定めた9条2項の削除や「国防軍」保持の明記などを掲げる。高市早苗が首相就任前に「ベスト」と発言していた、自民の野党時代の9条改正案とも重なる。ただ9条改定に対する世論の賛否は割れており、自民内には維新案に慎重な意見もあるという。看過できないのはあくまで首相は改竄に突っ走る構えを見せていることだ。今回の衆議院選挙で自民党が単独で316議席を確保し、3分の2以上を占めることになった ことがわかった。一つの政党が衆院で3分の2以上の議席を獲得するのは戦後初。法案が衆院で可決後、参院で否決されても、自民単独で衆院での再可決が可能になる。また憲法改定の発議も維新の助力なしでできるようになった。憲法改定の手順については第96条は

この憲法の改正は、各議院の総議員の三分の二以上の賛成で、国会が、これを発議し、国民に提案してその承認を経なければならない。この承認には、特別の国民投票又は国会の定める選挙の際行われる投票において、その過半数の賛成を必要とする。憲法改正について前項の承認を経たときは、天皇は、国民の名で、この憲法と一体を成すものとして、直ちにこれを公布する。

と規定している。憲法は簡単に改竄できないようになっているのだが自民党は2013年4月に「日本国憲法改正草案」を発表し、憲法改竄の手始めに96条改定に取り組む方針を明言した。現行憲法が「各議院の総議員の3分の2以上の賛成」を憲法改定発議の要件と定めているのを「衆参各院の総議員の過半数」で発議できるように緩和しようとするものであった。かつて安倍晋三元首相は、国会答弁で「まずは多くの党派が主張している憲法96条の改正に取り組む」と明言した。これは改定要件を緩和して憲法の改悪のハードルを下げ、その後に憲法9条や人権規定、統治機構等を随時改竄しようとの意図に基づくものと思われる。これは立憲主義の下での憲法改定のあり方として極めて不当であり、到底許されない。

開票結果
出典:時事通信

ただ憲法改竄を強行するには、最後の砦である国民投票のハードルを最終的に超える必要がある。国民投票が行われる場合、メディアを利用した広告宣伝活動が重要な意味を持つことになるが、これに対しては悲観的にならざるを得ない。壊憲勢力は金力とメディア支配力を活用して、国民を洗脳することを目論んでいるからだ。かつての立憲民主、共産両党は国会での憲法論議自体に後ろ向きだったが、新党「中道改革連盟」が問題解決の確約も取らずに憲法審議を進めることに同意してしまった。高市早苗は選挙の大勝利用して、安倍晋三の「悲願」を継承するのではないだろうか。日本国憲法改竄の足音、軍靴の響きが聴こえてきた。下記リンク先は市民運動団体「憲法9条京都の会」の公式ウェブサイトです。

politics 平和を願い命を大切に生かそうと考えている皆さんに参加と賛同を呼びかけます | 憲法9条京都の会

2026年2月7日

ソーシャルメディアの弊害(23)生成 AI によるフェイク情報の氾濫

Ai Fake Cat
フェイク猫はどっちだニャン?

先月末「人工知能技術が米国の2026年中間選挙をどう左右するか」という一文を寄せた。政治の先駆者たちがこの技術を採用しており、それが党派を超えた溝を生んでいる。このギャップは拡大し、2026年の選挙ではAIが主に一つの政治勢力によって使われることになると予想される。AI がパーソナライズされたメッセージング、説得、キャンペーン戦略などの政治的タスクの自動化と効果向上を約束する部分が実現すれば、体系的な優位性を生み出す可能性があるからだ。現時点で共和党は中間選挙でこの技術を活用する態勢が整っているように見える。具体的にはどのような展開になるか興味深い。日本では2月8日、衆院選の投開票があるが、候補者ではなく第三者、あるいは選挙妨害者による AI 悪用の偽画像拡散が話題になっている。1月30日付毎日新聞電子版によると、虚偽投稿がソーシャルメディアで数多く広がっているという。動画投稿サイトのユーチューブでは、国民民主党の玉木雄一郎代表が更迭され、資産を没収されて国外に追放されるかのような虚偽動画がアップされた。

AI

事実無根で、玉木代表自身が X で「さすがにひどい」と指摘、名誉毀損として提訴を検討すると表明した。立憲民主党と公明党が結成した新党「中道改革連合」についても、複数のデマが広まっている。野田佳彦氏と斉藤鉄夫氏が笑顔で新党のボードを持つ写真が改変され、新党のロゴが中国の政党風のマークにすげ替えられたそうである。「中国の団体とそっくり」などとする虚偽の情報も拡散し、670万回以上も閲覧された投稿もあった。中道は改変画像への注意を呼びかけ、「法的措置を含め、厳正に対処する」としている。なおフェイク情報については、2025年夏の参院選でも問題となり、総務省はソーシャルメディアなどを運営する事業者に偽・誤情報の迅速な削除などの対応を要請したという。下記リンク先はテクノロジー文化を担当する記者アンジェラ・ヤンによる NBC ニュースの記事「AI はオンラインの信頼の "崩壊" を加速させていると専門家は言う」です。

NBC News  AI is intensifying a 'collapse' of trust online, experts say by Angela Yang | The NBC News

2026年2月5日

米法省が公開したこれまでで最大のエプスタイン文書が合計300万ページにのぼると発表

Epstein files that were included in the US Department of Justice ©2026 Jon Elswick/AP Photo

米司法省はジェフリー・エプスタインに関する調査ファイルからさらに多くの記録を公開し、政府が若い少女に対する性的虐待やドナルド・トランプやビル・クリントンといった裕福で権力のある人物との接触について政府が知っていたことを明らかにすることを目的とした法律の下で、開示を再開した。トッド・ブランチ副司法長官は、300万ページ以上の文書と2,000本以上の動画、18万点の画像を公開すると述べた。これらのファイルは同省のウェブサイトに掲載されており、当局が12月の最初の公開から差し止められたと述べた数百万ページに及ぶ記録の一部が含まれている。その中には、かつて英国のアンドリュー王子として知られたアンドリュー・マウントバッテン・ウィンザーなど、エプスタインの有名な側近に関する文書や、エプスタインとテスラの創業者イーロン・マスク、政治的スペクトラム全体にわたる著名な接触者とのメールやり取りが含まれていた。これらの文書はエプスタイン・ファイル透明性法の下で公開された。この法律は数か月にわたる世論と政治的圧力の末に制定されたが、金融業者と彼の信頼できる友人でありかつての恋人ギスレーヌ・マクスウェルに関するファイルを政府に公開することを義務付けている。先月、司法省が限定的な公開のみを行ったことに議員たちは不満を述べたが、当局は発見された追加文書の精査や被害者に関する機密情報の公開を防ぐためにさらに時間が必要だと述べた。金曜日の公開は、トランプ政権がエプスタインとの過去の関係のために立ち直れてきた一連の騒動に関する、これまでで最大の文書公開となった。金融業者に対する刑事捜査は長年にわたり、政府の隠蔽工作を疑うオンライン探偵や陰謀論者、その他の人々を刺激し、完全な説明を求めてきましたが、ブランチはこれらの要求が最新の公開で満たされないかもしれないと認めている。「情報への渇望、あるいは渇望があり、これらの文書の審査では満たされないだろう」と彼は語った。議会が設定した12月19日の全ファイルの公開期限を逃した後、司法省は数百人の弁護士に記録の精査を委託し、黒塗りや黒塗りの内容を判断させたと述べた。また、トランプが以前の友情の後、数年前にエプスタインとの関係を断ったと述べているにもかかわらず、潜在的な恥をかくことから守ろうとする試みを否定した。最新のリストには、エプスタインの友人たちとの、または彼についての書簡が含まれている。記録にはトランプに関する数千件の言及があり、エプスタインらが彼に関するニュース記事を共有したり、彼の政策や政治についてコメントしたり、彼や家族について噂話したりしたメールも含まれている。昨年8月に作成されたスプレッドシートも含まれており、FBIの国家脅威作戦センターや検察官が設立したホットラインへの電話を要約し、裏付けなしにトランプの不正行為を何らかの知識があると主張した。マウントバッテン・ウィンザーの名前は文書に少なくとも数百回登場し、時にはニュースの切り抜き、時にはエプスタインの私的なメールやり取りやエプスタインが主催した夕食会の招待客リストに現れている。

Email
An email that was included in the US Department of Justice release of the Jeffrey Epstein files

ニューヨークの検察官がエプスタインの性的人身売買捜査の一環として元王子にインタビューに同意させようとした記録もある。記録には、億万長者のテスラ創業者マスクが少なくとも2回、性的虐待の疑惑が起きたとされるカリブ海の島への訪問計画をエプスタインに相談したことも示されている。2012年のやり取りで、エプスタインはマスクに自分の所有する島までヘリコプターで何人送ってほしいか尋ねた。「たぶんタルーラと僕だけだよ」とマスクは答え、当時のパートナーで女優のタルーラ・ライリーを指していた。「この島で一番ワイルドなパーティーになる日や夜はいつだろう」と。マスクは2013年のカリブ海旅行を前に再びエプスタインにメッセージを送った。「休暇中はセントバーツ地域に滞在する予定です」と彼は書いている。「訪ねるのに良い時間はありますか」とエプスタインは新年の休暇後に招待状を出した。島への訪問があったかどうかはすぐには明らかではない。マスクの会社であるテスラと X の広報担当者はコメントを求めるメールに応答しなかった。マスクはエプスタインの申し出を繰り返し拒否したと述べている。「エプスタインは私に彼の島に行かせようとしたが、私は拒否した」と、2025年に下院民主党がマスク訪問の可能性を記載したエプスタインのカレンダーを公開した際、彼は X に投稿した。メールによると、エプスタインはニューヨーク・ジャイアンツの共同オーナー、スティーブ・ティッシュを女性と結びつけようとしたようである。あるやり取りで、ティッシュはエプスタインの助手の友人と昼食を共にしたと話した。彼は彼女を「とても優しい娘」と表現し、エプスタインに彼女について何か知っているか尋ねた。「いいえ、でも聞いてみます」とエプスタインは言い、ティッシュが他の女性と連絡を取ったかどうかを尋ね、粗雑に彼女の身体的特徴を説明した。ティッシュは声明で、エプスタインと「短期間の関係」があり、成人女性やその他の話題についてメールでやり取りしていたと述べた。彼は「自分の島に行ったことは一度もない」と語ってその関係を「深く後悔している」と述べた。文書によると、トランプ大統領の初任期にホワイトハウスの戦略家を務めた保守派活動家スティーブ・バノンが、資金提供者と政治的な話をし、朝食、昼食、夕食時に会う話をし、2019年3月29日にはエプスタインにローマでの迎えに行くための飛行機を用意してもらえるか尋ねた。エプスタインはパイロットと乗組員が「最善を尽くして」そのフライトを手配しているが、もしバノンが代わりにチャーター便を見つけられれば「喜んで支払う」と語った。記録によれば、2012年12月、エプスタインはトランプの商務長官であるハワード・ラトニックを自宅の私有島に昼食に招待した。ラトニックの妻は招待を受け入れ、子供たちと共にヨットで到着すると言った。

Jefferey Epstein

2011年の別の機会には、エプスタインと共有されたスケジュールによれば、二人は飲み会を共にした。ラトニックはずっと前にエプスタインとの関係を断ったと述べている。商務省の広報担当者は、ラトニックが「エプスタインと妻の前で接触したことは限られており、不正行為の疑いをかけられたことは一度もない」と述べた。記録に浮かび上がったもう一人のエプスタインの連絡先は、元オバマ政権のホワイトハウス法務顧問キャシー・ルームラーである。複数のやり取りのうちの一つで、エプスタインはルームラーにメールを送り、民主党がトランプをマフィア的な人物として悪魔化するのをやめるべきだと助言しつつ、大統領を「狂人」と嘲笑した。ルームラーが法務顧問兼最高法務責任者を務めるゴールドマン・サックスの広報担当者は声明で、ルームラーが「ジェフリー・エプスタインが私的弁護士だった頃に職業的な関係があった」と述べ、「彼を知ったことを後悔している」と述べた。公開された数万ページには、トランプが1990年代にエプスタインのプライベートジェットで飛行していたことを示す飛行記録や、クリントンの写真も複数含まれていた。エプスタインの被害者たちが公に話をした中で、共和党のトランプや民主党のクリントンを公に不正行為で非難した者はいない。両者とも、彼が未成年の少女を虐待していたことを知らなかったと述べている。2008年と2009年、エプスタインは18歳未満からの売春勧誘の罪で有罪を認め、フロリダ州で服役しました。当時、捜査官はエプスタインがパームビーチの自宅で未成年の少女を性的虐待した証拠を集めていた。米国検察庁は、彼のより軽い州の罪状に対する有罪答弁と引き換えに、彼を起訴しないことに同意した。その時期の起訴状草案は金曜日に発表され、検察側がエプスタインだけでなく、彼の個人秘書であった他の3人に対しても連邦起訴を検討していたことを示しており、彼らはエプスタインと共に未成年の少女を誘致してわいせつ行為を行う共謀に関与した疑いがある。2021年、ニューヨークの連邦陪審は、英国の社交界の名士マクスウェルが未成年の被害者の勧誘を手助けしたとして性的人身売買の罪で有罪判決を下しました。彼女は20年の刑期を服している。米国の検察はエプスタインの少女虐待に関して他の誰かを起訴したことは一度もない。被害者の一人、バージニア・ロバーツ・ジュフリーは、17歳と18歳の時に多くの政治家、ビジネス界の大物、学者などと性的関係を持つよう彼に手配したと訴訟で告発した。しかし彼らは皆、彼女の主張を否定した。告発された中には、スキャンダルの中で王室の称号を剥奪されたイギリスのアンドリュー王子も含まれていた。アンドリューはジュフリーとの性行為を否定したが、訴訟には金額を明かさずに和解した。エプスタインは2019年8月、連邦の性的人身売買容疑で起訴されてから1か月後のニューヨークの刑務所の独房で自殺した。66歳だった。下記リンク先は CBS ニュースの記事「司法省が公開した膨大なエプスタインのファイル、300万点の文書や写真が含まれている」です。

CBS Massive trove of Epstein files released by DOJ, including 3 million documents and photos

2026年2月3日

楽天市場遁走の不始末記

letterpack
日本郵便レターパックライト(楽天市場より)

日本郵便のレターパックが必要になったが、寒空の下、買いに行くのが面倒。そこで横着してネット通販サイトを探してみたが、これが「災いのもと」になってしまった。青いレターパック(430円)が日本郵便のサイトで20部セットが8,600円(送料別)なり。20部は多すぎるので、もっと少ない通販サイトを探してみた。ヒットしたのが楽天市場で10部セット、送料無料とある。即購買の手続きした。しばらくして値段を調べ直した。430円×10=4,300円 が 6,150円とはいかに送料無料とは暴利過ぎる。慌ててキャンセルしようとしたが、30分を過ぎたら駄目らしいということが分かった。仕方ないの連絡フォームでキャンセル願いを送信した。折り返し「問い合わせにショップから返信がありました」というメールが届いたが中身は空っぽだった。自動配信メールなので、これに対する返信もできない。切羽詰まったが、念のためクレジットカード情報を削除した。

Rakuten

すると今度は「支払い情報」を入力するようにというメールが届いた。メールのやり取り以外にも、ログインパスワードの変更など、煩雑な認証作業を強いられた。もともとは粗忽者の私のミスから始まった「内輪のトラブル」だったが、すっかり嫌気が差してしまった。一週間後「ご注文がキャンセルされました」というメールが届いたが、いささか後の祭り。どうも楽天市場は相性が悪いと痛感、アカウントを削除、遁走するというお粗末に終わった次第だ。これまさに自業自得とでも言うのだろう、やれやれ。蛇足ながらアマゾンの値段を調べてみたら 5,980円だったが、これでも高い。億劫からずに郵便局へ足を運ぶべきかもしれないが、ついネット通販に頼ってしまう。しかし原価を知るとずいぶん損した気になる。ただ例えばレターパックライトを下記リンク先の便局のネットショップから取り寄せるなら、1部あたり430円、定価通りの価格で手に入る。

Post Office郵便局のネットショップ | レターパックプラス | レターパックライト | スマートレター | ミニレター

2026年2月1日

ウィリアム・ヘンリー・ハドソン『はるかな国 とおい国』アルゼンチンの大草原への追憶

William Henry Hudson
William Henry Hudson (1841-1922) Anglo-Argentine author, naturalist, and ornithologist.

南アメリカ各国をスペインから独立させた英雄ホセ・デ・サン=マルティンが歴史的に国民アイデンティティの象徴的人物であるなら、ウィリアム・ヘンリー・ハドソンはアングロ・アルゼンチンのアイデンティティにおいて同じ役割を果たしたと言える。そのアイデンティティを二次元ではなく三次元で表現しているからである。1841年にアルゼンチンのブエノスアイレス州キルメスに生まれたが、両親がマサチューセッツ州ボストン出身であることで、大西洋英語圏の三角形を完成させている。ボストンでキルメスと取引することは、今日でも都市的な風景のように聞こえるかもしれないが、1841年はチャスコムスへの鉄道建設のほぼ四半世紀前だった。チャスコムスは田舎の田舎の中である。なぜ彼の両親があの活気あるニューイングランドの大学の中心地から広大なパンパスへ移ったのかはわからないが、当時の米国には自然環境での質素な生活のカルトがあった。ヘンリー・デイヴィッド・ソローが『ウォールデン』を執筆していた時代だった。とにかく偉大な博物学者は自然に囲まれて育ったと言えるだろう。ハドソンの幼少期はフロレンシオ・バレラにある家族の25本のオムブーの木がある牧場で過ごしたが、辺境は拡大し続け、彼が成人し始める頃には家族はチャスコムースに近い場所で農業を営んでいた。ガウチョやパルペリアを除けば、若きハドソンは鋭い観察力を発揮できる植物や動物を持っていた。多くの人は単調なパンパを、無限の自然を探検するには最も期待できない拠点と考えるかもしれない。しかしハドソンは違った。彼の最初の関心は鳥類であり、英国王立動物学会紀要に鳥類学の寄稿を行った。晩年、1889年にはすでに英国に移り住んでいたしていた彼は、王立鳥類保護協会の共同設立者となり、1916年の設立から死去までアルゼンチン鳥類協会の名誉会長を務めた。その研究はすでにハドソンをその順番にアングロ・アルゼンチン系と見なすべきだと示しており、実際彼の81年間のうちほぼ半世紀を英国で過ごし、専らベイズウォーターで過ごした。彼の人生はこのようにして、不平等で対照的な二つの半分に分かれたのである。第一はアルゼンチンの農村部、第二は英国と都市の二つである。

Spur-winged Lapwing

1874年に英国へ移り、ロンドンを拠点に執筆とジャーナリズムで生計を立て、1900年の米国独立記念日には英国の被写体となった。到着からわずか2年後、彼は11歳年上ですでに出産可能な年齢を過ぎていた大家のエミリー・ウィングレイブと結婚した。1922年、ベイズウォーターで亡くなる際、ハドソンはブロードウォーター墓地に埋葬され。妻は前年に92歳で亡くなっていた。キルメスで生まれた人やロンドンで亡くなった人は数多くいる。なぜ彼が記憶され、ブエノスアイレス大都市の一部が彼の名を冠したのだろうか。熱心な鳥類学者や博物学者はその答えを必要としないだろうが、死後に出版されたものも含む彼の50冊の著作の3分の1はタイトルに「鳥」や「アヴェス」という言葉を含んでおり、鳥類以外の「自然」も含まれていたが、中にははるかに幅広い読者層に届いたものもあった。『はるかな国 とおい昔』(1918年)、『緑の館』(1904年)などである。前者は22世紀に入った現代の私たちには遠く昔の話のように思えるだろうが、1世紀以上前に出版されたときも決してそうだった。第一次世界大戦末期にロンドンで執筆する77歳の男の視点から、最初の世界大戦では「神に油注がれた暴君」フアン・マヌエル・デ・ロサスが支配する空っぽのパンパスの風景はヴィクトリア女王の時代は、実に遠い時間のように感じられたに違いない。おそらく彼の執筆の秘密は、科学的かつ概念的な厳密さと文体的な技術を巧みに融合させつつ、感情を巧みに捉える才能にあるのだろう。しかし、ハドソンは過去の記録者や時代の人物としてだけでなく、心の底では鳥類学者であり、24巻にわたる彼の科学的業績は当時の完全な自然史の編纂に大きく貢献しているだけでなく、気候変動の時代に支配的となった生態学や環境問題の先駆者とも見なされるべきである。 彼の時代を何十年も先取りし、私たち全員に人類と地球の生物圏の未来について考えさせるきっかけとなったのである。ハドソンの著書は、邦訳に限ればおおむね読んだと思っていたが、寿岳しづ訳の自伝文学『はるかな国 とおい昔』(岩波文庫)は、ずいぶん前に購入したにも関わら全編を完読していなかった。遅ればせながら改めて手に取ってみた。幼年時代を活写した伝記文学の傑作だが、寿岳しづ(1901-1981)の訳も素晴らしい。下記リンク先はミズーリ州カンザスシティのリンダ・ホール図書館によるウィリアム・ヘンリー・ハドソンのバイオグラフィー及び所蔵書籍の図版です。下記リンク先はミズーリ州カンザスシティのリンダ・ホール図書館ウェブサイトに掲載のウィリアム・ヘンリー・ハドソンのバイオグラフィー及び所蔵書籍の野鳥の挿絵です。

bird red  William Henry Hudson (184-1922) Scientist of the Day | Linda Hall Library, Kansas City