2025年11月26日

ソーシャルメディアの弊害(10)高市早苗ネット応援団の穽陥

Sanae Takaichi Cartoon
高市早苗首相の風刺漫画「トラ・トラ・トラ!」©2025 Bart van Leeuwen

いわゆる「存立危機事態」を巡る高市早苗首相の発言が尾を引いている。中国政府は自国民に日本への渡航自粛を呼びかけた。今月18日には北京を訪れた外務省の金井正彰アジア大洋州局長に対し発言の撤回を求めたが、金井は応じなかった。さらにこの会談終了後、中国外務省の劉勁松アジア局長がポケットに手を突っ込んだまま金井と立ち話する映像が流れ、その態度が「不遜だ」などと日本国内で反発が起こっている。与党幹部は「日中の問題は長引く。高市首相は答弁を撤回しないし、中国も対応を変えないだろう」と言う。中国は今月再開されたばかりの日本の水産物の輸入についても事実上停止することを伝えてきており、高市発言に端を発した日中関係の緊迫化は経済にも影響を与え始めている。小泉純一郎政権で日朝交渉を担当した田中均元外務審議官は自身の YouTube チャンネルで「台湾問題は中国にとって核心的利益」だとして高市に「国会の場で発言を撤回するよう」促した。しかしネットを中心とした世論は高市の「勇み足」に寛容だ。むしろ今回の問題のきっかけを作ったのは衆議院予算委員会で質問に立った岡田克也元外務大臣ら立憲民主党の議員だとして、バッシングが起き始めているから驚く。まさに筋違いの批判である。

G20
ヨハネスブルクで開催されたG20首脳会議に出席した高市早苗首相(随行員撮影)

立憲民主党の本庄知史政調会長は「質問した岡田克也議員が間違っていたと。あるいはしつこかったと。こういった言説が SNS だけではなくて大手のメディア、テレビでもコメンテーターなども含めて取り上げられているということは、極めて問題があると思っています」と呆れる。参院選後の立憲は、国民民主党の玉木雄一郎代表を首班とする野党主導の非自民政権樹立を目指したものの、自民と維新の連立により頓挫。高市政権が驚異的な支持率を記録する中、本来なら国会で高市と真正面から対峙し論戦を張らなければならない野党第一党は、いま自信を喪失しているようだ。高市政権が誕生したばかりのこと、立憲の幹部の1人が「とにかくいまは静かにしていることが肝心だ。“高市人気”という旋風が過ぎ去るまでは、変に相手を刺激しても何にもならない」と口にしたという。この幹部は、高市を怒らせて解散総選挙に突き進まれたら、立憲が壊滅的な打撃を受けると懸念しているそうだ。高市早苗は「ネット世論」に助けられているが、逆にその世論なるもに阿ているきらいがないだろうか。

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