2025年9月19日

アメリカ人の過半数が次の10年以内に「内戦」が起こる可能性が高いと考えている

une 9, 2025
Protesters confront California National Guard members in Los Angeles on June 9, 2025

ドナルド・トランプ大統領の熱烈な支持者だった保守派の政治活動家チャーリー・カークが2025年9月10日、ユタ州の大学のイベントで銃撃され死亡した事件でドナルド・トランプ大統領は「容疑者は左派だ」と主張したうえで、インターネットを通じて過激化したという見方を示した。事件のあとソーシャルメディア上では政治的な対立をあおるような投稿も相次いでいて、分断が深まることが懸念される。アメリカでは、ミネソタ州の政治家メリッサ・ホートマンの暗殺や、 6月初めにロサンゼルスで起きたドナルド・トランプ大統領の移民政策に対する抗議活動が暴力的になるなど、政治的二極化が進み、政情不安も高まっている。カリフォルニア州知事ギャビン・ニューサム(民主党)は、ロサンゼルスでの暴力を鎮圧する方法をめぐる論争の中で、トランプ大統領が「アメリカの路上で内戦」を望んでいると述べたが、トランプ大統領はこの発言に反論した。ニューズウィーク誌の報道によるとグローバル・リサーチ会社 YouGov(ユーガブ)の新しい調査では、アメリカ人は近い将来に内戦が起こる可能性があるかどうかについて意見が分かれているという。内戦の可能性が非常に高いと回答した人は12%、やや高いと回答した人は28%でした。回答者の40%という割合は、内戦の可能性は低いと回答した人の割合よりも著しく高いです。内戦の可能性はそれほど高くないと回答した人は22%、全く可能性がないと回答した人は17%だった。さらに18%は内戦が起こる可能性があるかどうかわからないと答え、3%はこの件に関して自分の見解を述べたくないと回答した。2025年6月9日、ロサンゼルスの連邦政府ビル前で抗議活動を行う人々がカリフォルニア州兵と対峙したが、民主党支持者は共和党支持者よりも内戦の可能性を高く評価する傾向が強かった。民主党支持者の17%が内戦の可能性が非常に高いと回答し、31%がやや高いと回答した。

Two Party Syste
Disadvantages of a two-party system

一方、共和党支持者では、内戦の可能性が非常に高いと回答した人が7%、やや高いと回答した人が25%だった。ドナルド・トランプ大統領は、カリフォルニア州知事ギャビン・ニューサムに対し「私は内戦を望んでいない。彼のような人間に任せれば内戦は起こるだろう」と返答したそうである。ボストン大学で南北戦争を専門とする歴史学教授ニーナ・シルバーは、ニューズウィーク誌に対し、世論調査の数字は意外ではないと語った。しかし、シルバーは「19世紀に私たちが思い描いていたような南北戦争は、おそらく今日私たちが目にしているものとは異なっている」「現代の内戦は、二つの別々の政府が出現し、それぞれが相手と戦うために軍隊を編成するという形では現れないかもしれない」と述べた。そして「私にとって内戦の証拠は増え続けています。特に政治的暴力の増加という点において顕著です」「二大政党による政治的対立の両側で暴力行為は発生していますが、私が特に懸念しているのは、政治的暴力を煽り、奨励し、それを私たちの文化のほぼ一部にまで押し上げている政治家たちです」と彼女は述べた。ポリティコが昨年報じた国土安全保障省の文書は「一部の国内暴力過激派は2024年の選挙シーズンと重要な政策課題に反応し、差し迫った内戦の物語と結び付けて違法な準備活動や暴力行為を行っており、政府の標的や思想的反対者に対する暴力のリスクを高めている」と内戦を議論する過激派の増加について警告を発していた。内戦の可能性に対する懸念が高まっているにもかかわらず、現時点では州政府や連邦政府が国内の武力紛争に備えているという確かな兆候はない。しかし、最近の暴力事件を受けて両党の指導者が政治の緊張を緩和するよう呼びかけているにもかかわらず、今後数か月、数年のうちに政治的二極化が緩和される兆しはほとんど見ることがない。

politics What Would a Second American Civil War Look Like? by Jay Speakman | The MIRA Safety

2025年9月17日

女性を客体ではなく主体として描写した写真家エレン・フォン・アンワースの視線

This Side of Paradise
This Side of Paradise: The exhibition at SCAD FASH Museum of Fashion + Film 2023-2024
Ellen von Unwerth

エレン・フォン・アンワースは1952年に西ドイツのフランクフルトで生まれた。孤児だったため、幼少期は主にバイエルン州の公的里親に預けられていた。最終的にはミュンヘンの高校を卒業することができ、サーカスのマジシャンのアシスタントとして3年間働くこととなった。20歳の時、アンワースは街を歩いていると、ある写真家にモデルになることを考えたことがあるかと尋ねられる。彼女はモデルの道を試してみることを決意し、パリへ移り住み、7年間、成功を収めた。しかし、アンワースはモデルとして、自分の写真がどこでどのように使われるかを自由に決められないと感じていた。当時のボーイフレンドがカメラをプレゼントしてくれたことがきっかけで、ケニアでモデルの同僚たちを即興で撮影することになった。写真が公開されると、アンワースはこれが人生の新たな道だと決意する。彼女の写真撮影スキルへの需要がモデルとしての需要を上回ったからである。アンワースの最初の注目すべき作品は、 1989年に初めてファッションモデルで女優のクラウディア・シファーの写真だった。彼女の作品は雑誌『ヴォーグ』『ヴァニティ・フェア』『インタビュー』『ザ・フェイス』『アリーナ』『ツイ』『ルオモ・ヴォーグ』『プレイボーイ』などに掲載され、数冊の写真集も出版された。アンワースは1994年から1997年までデュラン・デュランのプロモーション写真を手掛け、1990年のアルバム "Liberty" や1997年のアルバム "Medazzaland" の写真も手掛けた。

Peaches
Peaches, Rouilly le Bas, Paris, 2002

彼女の作品はバナナラマの "Pop Life"(1991年)ベリンダ・カーライルの "A Woman and a Man"(1996年)キャシー・デニスの "Am I the Kinda Girl"(1996年)ジャネット・ジャクソンの "The Velvet Rope"(1997年)オール・セインツの "Saints & Sinners"(2000年)ダイドの "Life for Rent"(2003年)ブリトニー・スピアーズの "Blackout"(2007年)、クリスティーナ・アギレラの "Back To Basics"(2006年)と "Keeps Gettin' Better: A Decade of Hits" リアーナの Rated R と "Talk That Talk" など他のアルバムのジャケットにも使用されている。 彼女はまた、ホールのアルバム Live "Through This"(1994年)のカバーも撮影した。

e Can Do It
We Can Do It in Heimat series, 2015

彼女は女性を物として扱うことなく、魅力的な方法で描いている。インタビューで彼女は「私は女性に何かを強制することはありません。ただ、彼女たちが常に活動的で力強くいられるように、役割を与えるのです」と語っている。 2018年の『ハーパーズ・バザー』誌のインタビューでは、彼女は写真に対するフェミニスト的なアプローチについて「私の写真に写る女性たちは、セクシーでありながらも常に強いです。私の女性たちはいつも自信に満ちています。 私は彼女たちをできる限り美しく見せようと努めます。なぜなら、すべての女性は美しく、セクシーで、力強く感じたいと思っているからです」と説明している。

ROAR!
ROAR!, London, 2016

エレン・アンワースはファッションデザイナーの短編映画や、数多くのポップミュージシャンのミュージックビデオを監督してきた。またレブロン、クリニーク、ロレアル、エクイノックスのCMやウェブフィルムも監督している。アンワースは、その技を磨き上げ、輝かしいキャリアを築き上げた。女性を客体ではなく主体として描写し、そのエンパワーメントで世界的に称賛を浴びたのである。彼女はファッションモデルをアイコンへと昇華させる上で中心的な役割を果たしてきました。女性であり、元モデルでもあるエレン・フォン・アンワースは、被写体を理解する上で特別な立場にある。

taschen_night
Opening night of Ellen von Unwerth's photo exhibition in Los Angeles, 2017

エレン・フォン・アンワースは芸術の限界を押し広げ続け、女性のフォルム、遊び心のある個性、そしてあからさまな官能性を称え、そして女性を強く、自由で、自立した存在として提示することで、女性にエンパワーメントを与えている。エレン・フォン・アンワースの作品には、カリスマ性と悪戯好きな個性が常に表れている。彼女の創作プロセスを通して、被写体の奔放な個性が探求され、露わにされ、そして捉えられる。その結果、独特の気まぐれさ、強烈なエネルギー、そして解放されたエロティシズムに満ちた作品群が誕生した。

Gallery Icon  Ellen von Unwerth (born 1954) Biography | Viewing rooms | Contact | The Opera Gallery

写真術における偉大なる達人たち

New Mothers
Sally Mann (born 1951) The New Mothers, Lexington, Virginia, 1989

2021年の秋以来、思いつくまま世界の写真界20~21世紀の達人たちの紹介記事を拙ブログに綴ってきましたが、2025年9月17日現在のリストです。右端の()内はそれぞれ写真家の生年・没年です。左端の年月日をクリックするとそれぞれの掲載ページが開きます。

21/10/06多くの人々に感動を与えたアフリカ系アメリカ人写真家ゴードン・パークスの足跡(1912–2006)
21/10/08グループ f/64 のメンバーだった写真家イモージン・カニンガムは化学を専攻した(1883–1976)
21/10/10圧倒的な才能を持ち現代アメリカの芸術写真を牽引したポール・ストランド(1890–1976)
21/10/11何気ない虚ろなアメリカを旅したスイス生まれの写真家ロバート・フランク(1924–2019)
21/10/13作為を排した新客観主義に触発されたストリート写真の達人ロベール・ドアノー(1912–1994)
21/10/16大恐慌時に農村や小さな町の生活窮状をドキュメントした写真家ラッセル・リー(1903–1986)
21/10/17日記に最後の晩餐という言葉を残して自死した写真家ダイアン・アーバスの黙示録(1923–1971)
21/10/19フォトジャーナリズムの手法を芸術の域に高めた写真家ユージン・スミスの視線(1918–1978)
21/10/24時代の風潮に左右されず独自の芸術観を持ち続けたプラハの詩人ヨゼフ・スデック(1896-1976)
21/10/27西欧美術を米国に紹介した写真家アルフレッド・スティーグリッツの功績(1864–1946)
21/11/01美しいパリを撮影していたウジェーヌ・アジェを「発見」したベレニス・アボット(1898–1991)
21/11/08近代ストレート写真を先導した 20 世紀の写真界の巨匠エドワード・ウェストン(1886–1958)
21/11/10芸術を通じて社会や政治に影響を与えることを目指した写真家アンセル・アダムス(1902–1984)
21/11/13大恐慌を記録したウォーカー・エヴァンスの被写体はその土地固有の様式だった(1903–1975)
21/11/16写真少年ジャック=アンリ・ラルティーグは個展を開いた 69 歳まで無名だった(1894–1986)
21/11/20ハンガリー出身の世界で最も偉大な戦争写真家ロバート・キャパの短い人生(1913–1954)
21/11/25児童労働の惨状を訴えるため現実を正確に捉えた写真家ルイス・ハインの偉業(1874–1940)
21/12/01マグナム・フォトを設立した写真家アンリ・カルティエ=ブレッソンの決定的瞬間(1908–2004)
21/12/06犬を人間のいくつかの性質を持っているとして愛撮したエリオット・アーウィット(1928-2023)
21/12/08リチャード・アヴェドンの洗練され権威ある感覚をもたらしたポートレート写真(1923–2004)
21/12/12デザインと産業の統合に集中したバウハウスの写真家ラースロー・モホリ=ナジ(1923–1928)
21/12/17ダダイズムとシュルレアリスムに跨る写真を制作したマン・レイは革新者だった(1890–1976)
21/12/29フォトジャーナリズムに傾倒したアラ・ギュレルの失われたイスタンブル写真素描(1928–2018)
22/01/10ペルーのスタジオをヒントに自然光に拘ったアーヴィング・ペンの鮮明な写真(1917-2009)
22/02/25非現実的なほど歪曲し抽象的な遠近感を生み出した写真家ビル・ブラントのカメラ(1904–1983)
22/03/09男性ヌードや花を白黒で撮影した異端の写真家ロバート・メイプルソープへの賛歌(1946–1989)
22/03/18ニューヨーク近代美術館で写真展「人間家族」を企画したエドワード・スタイケン(1879–1973)
22/03/24公民権運動の影響を記録したキュメンタリー写真家ブルース・デヴッドソンの慧眼(born 1933)
22/04/21社会的弱者に寄り添いエモーショナルに撮影した写真家メアリー・エレン・マーク(1940-2015)
22/05/20早逝した写真家リンダ・マッカートニーはザ・ビートルズのポールの伴侶だった(1941–1998)
22/06/01大都市に変貌する香港を活写して重要な作品群を作り上げたファン・ホーの視線(1931–2016)
22/06/12肖像写真で社会の断面を浮き彫りにしたドキュメント写真家アウグスト・ザンダー(1876–1964)
22/08/01スペイン内戦取材で26歳という若さに散った女性戦争写真家ゲルダ・タローの生涯 (1910–1937)
22/09/16カラー写真を芸術として追及したジョエル・マイヤーウィッツの手腕(born 1938)
22/09/25死と衰退を意味する作品を手がけた女性写真家サリー・マンの感性(born 1951)
22/10/17北海道の風景に恋したイギリス人写真家マイケル・ケンナのモノクロ写真(born 1951)
22/11/06アメリカ先住民を「失われる前に」記録したエドワード・カーティス(1868–1952)
22/11/16大恐慌の写真 9,000 点以上を制作したマリオン・ポスト・ウォルコット(1910–1990)
22/11/18人間の精神の深さを写真に写しとったアルゼンチン出身のペドロ・ルイス・ラオタ (1934-1986)
22/12/10アメリカの生活と社会的問題を描写した写真家ゲイリー・ウィノグランド(1928–1984)
22/12/16没後に脚光を浴びたヴィヴィアン・マイヤーのストリート写真(1926–2009)
22/12/23写真家集団マグナムに参画した初めての女性報道写真家イヴ・アーノルド(1912-2012)
23/03/25写真家フランク・ラインハートのアメリカ先住民のドラマチックで美しい肖像写真(1861-1928)
23/04/13複雑なタブローを構築するシュールレアリスム写真家サンディ・スコグランド(born 1946)
23/04/21キャラクターから自らを切り離したシンディー・シャーマンの自画像(born 1954)
23/05/01震災前のサンフランシスコを記録した写真家アーノルド・ジェンス(1869–1942)
23/05/03メキシコにおけるフォトジャーナリズムの先駆者マヌエル・ラモス(1874-1945)
23/05/05文学と芸術に没頭し超現実主義絵画に着想を得た台湾を代表する写真家張照堂(1943-2024)
23/05/07家族の緊密なポートレイトで注目を集めた写真家エメット・ゴウィン(born 1941)
23/05/22欲望やジェンダーの境界を無視したクロード・カアンのセルフポートレイト(1894–1954)
23/05/2520世紀初頭のアメリカの都市改革に大きく貢献したジェイコブ・リース(1849-1914)
23/06/05都市の社会風景という視覚的言語を発展させた写真家リー・フリードランダー(born 1934)
23/06/13写真芸術の境界を広げた暗室の錬金術師ジェリー・ユルズマンの神技(1934–2022)
23/06/15強制的に収容所に入れられた日系アメリカ人を撮影したドロシア・ラング(1895–1965)
23/06/20劇的な国際的シンボルとなった「プラハの春」を撮影したヨゼフ・コウデルカ(born 1958)
23/06/24警察無線を傍受できる唯一のニューヨークの写真家だったウィージー(1899–1968)
23/07/03フォトジャーナリズムの父アルフレッド・アイゼンシュタットの視線(1898–1995)
23/07/06ハンガリーの芸術家たちとの交流が反映されたアンドレ・ケルテスの作品(1894-1985)
23/07/08家族が所有する島で野鳥の写真を撮り始めたエリオット・ポーター(1901–1990)
23/07/08戦争と苦しみを衝撃的な力でとらえた報道写真家ドン・マッカラン(born 1935)
23/07/17夜のパリに漂うムードに魅了されていたハンガリー出身の写真家ブラッサイ(1899–1984)
23/07/2020世紀の著名人を撮影した肖像写真家の巨星ユーサフ・カーシュ(1908–2002)
23/07/22メキシコの革命運動に身を捧げた写真家ティナ・モドッティのマルチな才能(1896–1942)
23/07/24ロングアイランド出身のマルクス主義者を自称する写真家ラリー・フィンク(born 1941)
23/08/01アフリカ系アメリカ人の芸術的な肖像写真を制作したコンスエロ・カナガ(1894–1978)
23/08/04ヒトラーの地下壕の写真を世界に初めて公開したウィリアム・ヴァンディバート(1912-1990)
23/08/06タイプライターとカメラを同じように扱った写真家カール・マイダンス(1907–2004)
23/08/08ファッションモデルから戦場フォトャーナリストに転じたリー・ミラーの生涯(1907-1977)
23/08/14ニコンのレンズを世界に知らしめたデイヴィッド・ダグラス・ダンカンの功績(1907-2007)
23/08/18超現実的なインスタレーションアートを創り上げたサンディ・スコグランド(born 1946)
23/08/20シカゴの街角やアメリカ史における重要な瞬間を再現した写真家アート・シェイ(1922–2018)
23/08/22大恐慌時代の FSA プロジェクト 最初の写真家アーサー・ロススタイン(1915-1986)
23/08/25カメラの焦点を自分たちの生活に向けるべきと主張したハリー・キャラハン(1912-1999)
23/09/08イギリスにおけるフォトジャーナリズムの先駆者クルト・ハットン(1893–1960)
23/10/06ロシアにおけるデザインと構成主義創設者だったアレクサンドル・ロトチェンコ(1891–1956)
23/10/18物事の本質に近づくための絶え間ない努力を続けた写真家ウィン・バロック(1902–1975)
23/10/27先見かつ斬新な作品により写真史に大きな影響を与えたウィリアム・クライン(1926–2022)
23/11/09アパートの窓から四季の移り変わりの美しさなどを撮影したルース・オーキン(1921-1985)
23/11/15死や死体の陰翳が纏わりついた写真家ジョエル=ピーター・ウィトキンの作品(born 1939)
23/12/01近代化により消滅する前のパリの建築物や街並みを記録したウジェーヌ・アジェ(1857-1927)
23/12/15同時代で最も有名で最も知られていないストリート写真家のヘレン・レヴィット(1913–2009)
23/12/20哲学者であることも写真家であることも認めなかったジャン・ボードリヤール(1929-2007)
24/01/08音楽や映画など多岐にわたる分野で能力を発揮した写真家ジャック・デラーノ(1914–1997)
24/02/25シチリア出身のイタリア人マグナム写真家フェルディナンド・スキアンナの視座(born 1943)
24/03/21パリで花開いたロシア人ファッション写真家ジョージ・ホイニンゲン=ヒューン(1900–1968)
24/04/04報道写真家として自活することに成功した最初の女性の一人エスター・バブリー(1921-1998)
24/04/20長時間露光により時間の多層性を浮かび上がらせたアレクセイ・ティタレンコ(born 1962)
24/04/2820世紀後半のイタリアで最も重要な写真家ジャンニ・ベレンゴ・ガルディン(born 1930)
24/04/30トルコの古い伝統の記憶を守り続ける女性写真家 F・ディレク・ウヤル(born 1976)
24/05/01ファッション写真に大きな影響を与えたデヴィッド・ザイドナーの短い生涯(1957-1999)
24/05/08社会の鼓動を捉えたいという思いで写真家になったリチャード・サンドラー(born 1946)
24/05/10直接的で妥協がないストリート写真の巨匠レオン・レヴィンシュタイン(1910–1988)
24/05/12自らの作品を視覚的な物語と定義している写真家スティーヴ・マッカリー(born 1950)
24/05/14多様な芸術の影響を受け写真家の視点を形作ったアンドレアス・ファイニンガー(1906-1999)
24/05/16芸術的表現により繊細な目を持つ女性写真家となったマルティーヌ・フランク(1938-2012)
24/05/18ドキュメンタリー写真をモノクロからカラーに舵を切ったマーティン・パー(born 1952)
24/05/21先駆的なグラフ誌『ピクチャー・ポスト』を主導した写真家バート・ハーディ(1913-1995)
24/05/24グラフ誌『ライフ』に30年間投稿し続けたロシア生まれの写真家リナ・リーン(1914-1995)
24/05/27旅する写真家として20世紀後半の歴史に残る象徴的な作品を制作したルネ・ブリ(1933-2014)
24/05/29高速ストロボスコープ写真を開発したハロルド・ユージン・エジャートン(1903-1990)
24/06/03一般市民とそのささやかな瞬間を撮影したオランダの写真家ヘンク・ヨンケル(1912-2002)
24/06/10ラージフォーマット写真のデジタル処理で成功したアンドレアス・グルスキー(born 1955)
24/06/26レンズを通して親密な講釈と被写体の声を伝えてきた韓国出身のユンギ・キム(born 1962)
24/07/05演出されたものではなく現実的なファッション写真を開発したトニ・フリッセル(1907-1988)
24/07/07スウィンギング60年代のイメージ形成に貢献した写真家デイヴィッド・ベイリー(born 1938)
24/07/13著名人からから小さな町の人々まで撮影してきた写真家マイケル・オブライエン(born 1950)
24/07/14人々のドラマが宿る都市のカラー写真を制作したコンスタンティン・マノス(born 1934)
24/08/04写真家集団「マグナム・フォト」所属するただ一人の日本人メンバー久保田博二(born 1939)
24/08/08ロバート・F・ケネディの死を悼む人々を葬儀列車から捉えたポール・フスコ(1930–2020)
24/08/13クリスティーナ・ガルシア・ロデロが話したいのは時間も終わりもない出来事だ(born 1949)
24/08/30ドキュメンタリーと芸術の境界を歩んだカラー写真の先駆者エルンスト・ハース(1921–1986)
24/09/01国際的写真家集団マグナム・フォトの女性写真家スーザン・メイゼラスの視線(born 1948)
24/09/09アパルトヘイトの悪と日常的な社会への影響を記録したアーネスト・コール(1940–1990)
24/09/14宗教的または民俗的な儀式に写真撮影の情熱を注ぎ込んだラモン・マサッツ(1931-2024)
24/09/23アメリカで最も有名な無名の写真家と呼ばれたエヴリン・ホーファー(1922–2009)
24/09/25自身を「大義を求める反逆者」と表現した写真家マージョリー・コリンズ(1912-1985)
24/09/27北海道の小さな町にあった営業写真館を継がず写真芸術の道を歩んだ深瀬昌久(1934-2012)
24/10/01現代アメリカの風変わりで平凡なイメージに焦点を当てた写真家アレック・ソス(born 1969)
24/10/04微妙なテクスチャーの言語を備えた異次元の写真を追及したアーサー・トレス(born 1940)
24/10/06オーストリア系イギリス人のエディス・チューダー=ハートはソ連のスパイだった(1908-1973)
24/10/08映画の撮影監督でもあったドキュメンタリー写真家ヴォルフガング・スシツキー(1912–2016)
24/10/15芸術のレズビアン・サブカルチャーに深く関わった写真家ルース・ベルンハルト(1905–2006)
24/10/19ランド・アートを通じて作品を地球と共同制作するアンディ・ゴールドワージー (born 1956)
24/10/29公民権運動の活動に感銘し刑務所制度の悲惨を描写した写真家ダニー・ライアン (born 1942)
24/11/01人間の状態と現在の出来事を記録するストリート写真家ピータ―・ターンリー (born 1955)
24/11/04写真を通じて現代の社会的状況を改善することに専念したアーロン・シスキンド(1903-1991)
24/11/07自然と植物の成長にインスピレーションを受けた写真家カール・ブロスフェルト(1865-1932)
24/11/09ストリート写真で知られているリゼット・モデルは教える才能を持っていた(1901-1983)
24/11/11カラー写真が芸術として認知されるようになった功労者ウィリアム・エグルストン(born 1939)
24/11/13革命後のメキシコ復興の重要人物だった写真家ローラ・アルバレス・ブラボー(1903-1993)
24/11/15チリの歴史上最も重要な写真家であると考えられているセルヒオ・ララインの視座(1931-2012)
24/11/19イギリスのアンリ・カルティエ=ブレッソンと評されたジェーン・ボウン(1925-2014)
24/11/25カラー写真の先駆者ソール・ライターは戦後写真界の傑出した人物のひとりだった(1923–2013)
24/11/25サム・フォークがニューヨーク・タイムズに寄せた写真は鮮烈な感覚をもたらした(1901-1991)
24/11/29ゲイ解放運動の活動家だったトランスジェンダーの写真家ピーター・ヒュージャー(1934–1987)
24/12/01複数の芸術的才能に恵まれていた華麗なるファッション写真家セシル・ビートン(1904–1980)
24/12/05ライフ誌と空軍で活躍した女性初の戦場写真家マーガレット・バーク=ホワイト(1904–1971)
24/12/07愛と美を鮮明に捉えたロマン派写真家エドゥアール・ブーバの平和への眼差し(1923–1999)
24/12/10保守的な政治体制と対立しながら自由のために写真を手段にしたエヴァ・ペスニョ(1910–2003)
24/12/15自然環境における人間の姿を研究することに関心を寄せた写真家マイケル・ぺト(1908-1970)
24/12/20ベトナム戦争中にナパーム弾攻撃から逃げる子供たちを撮影したニック・ウット(born 1951)
25/01/06記録映画の先駆者であり前衛映画製作者でもあった写真家ラルフ・スタイナー(1899–1986)
25/01/10アメリカ西部を占める文化の多様性を反映した写真家ローラ・ウィルソンの足跡(born 1939)
25/01/15フランスの人文主義写真運動で活躍したスイス系フランス人ザビーネ・ヴァイス(1924–2021)
25/02/03サルバドール・ダリとの共作でシュールな写真を創出したフィリップ・ハルスマン(1906–1979)
25/02/06ベトナム戦争に対する懸念を形にした写真家フィリップ・ジョーンズ・グリフィス(1936-2008)
25/02/18芸術に複数の糸を持っていたシュルレアリスムの写真家エミール・サヴィトリー(1903-1967)
25/03/19シュルレアリスムの先駆的な写真家でピカソのモデルで恋人だったドラ・マール(1907-1997)
25/03/25ホロコースト前の東欧のユダヤ人社会を記録した写真家ローマン・ヴィスニアック(1897-1990)
25/04/01ソーシャルワーカーからライフ誌の専属写真家に転じたウォレス・カークランド(1891–1979)
25/04/04写真家ビル・エプリッジは20世紀で最も優れたフォトジャーナリストの一人だった(1938-2013)
25/04/25ロバート・キャパの弟で総合施設国際写真センターを設立したコーネル・キャパ(1918-2008)
25/05/01激動1960年代の音楽家たちをキャプチャーした写真家エリオット・ランディの慧眼(born 1942)
25/05/23生まれ故郷ブラジルの熱帯雨林アマゾン川流域へのセバスチャン・サルガドの視座(1944-2025)
25/06/22風景への畏敬の念と激動の気象現象への驚異が伝わるミッチ・ドブラウナーの写真(born 1956)
25/07/26ティンタイプ写真でアパラチアの伝承音楽家に焦点を当てたリサ・エルマーレ(born 1984)
25/08/03色彩の卓越した表現を通して写真というジャンルを超越したデビッド・ラシャペル(born 1963)
25/08/20ヨーロッパ解放やコンゴ紛争などでの勇敢な取材で知られるドミトリ・ケッセル(1902–1995)
25/08/25長大吊り橋を撮影したピーター・スタックポールはライフ誌創刊の写真家になった(1913-1997)
25/09/08アパラチアや南東部の農村地帯の人々の肖像写真で知られているドリス・ウルマン(1882-1934)
25/08/25長大吊り橋を撮影したピーター・スタックポールはライフ誌創刊の写真家になった(1913-1997)
25/09/15指導者であり預言者であり歴史家であり学者だった写真家ジョン・ローエンガード(1934-2020)
25/09/17女性を客体ではなく主体として描写した写真家エレン・フォン・アンワースの視線 (born 1954)

子供の頃「明治は遠くなりにけり」という言葉を耳にした記憶がありますが、今まさに「20世紀は遠くなりにけり」の感があります。掲載した作品の大半がモノクロ写真で、カラー写真がわずかのなのは偶然ではないような気がします。20世紀のアートの世界ではモノクロ写真が主流だったからです。しかしデジタルカメラが主流になった21世紀、カラー写真の台頭に目覚ましいものがあります。ジョエル・マイヤーウィッツとサンディ・スコグランド、ジャン・ボードリヤール、 F・ディレク・ウヤル、マーティン・パー、コンスタンティン・マノス、久保田博二、ポール・フスコ、エルンスト・ハース、エヴリン・ホーファー、アレック・ソス、アンディ・ゴールドワージー、ウィリアム・エグルストン、ソール・ライタ、などのカラー作品を取り上げました。

photographer  Famous Photographers: Great photographs can elicit thoughts, feelings, and emotions.

2025年9月15日

指導者であり預言者であり歴史家であり学者だった写真家ジョン・ローエンガード

Georgia O'Keeffe
Artist Georgia O'Keeffe, 80 year old pioneer of modern American Art, 1967
John Loengard

ジョン・ローエンガードは1934年9月5日、ニューヨークのマンハッタンに生まれた。11歳の時に写真に興味を持ち始めた。第二次世界大戦の終戦時、父親が新しいカメラを買うと話したのがきっかけだった。ードは高校の新聞に写真を載せるようになった。1956年、ハーバード大学4年生の時『ライフ』誌からケープコッドで座礁した貨物船の撮影を依頼された。これがローエンガードと同誌との長きにわたる関わりの始まりとなった。ローエンガードは自身のヒーローであるアンリ・カルティエ=ブレッソン、W・ユージン・スミス、ロバート・フランクについて「彼らは強い新しい方法で自分たちの感情をルポルタージュと融合させた。私もそうするつもりだった」と書いている。1950年代半ば大学を優秀な成績で卒業し『ハーバード・クリムゾン』紙で前途有望なキャリアを歩み『ライフ』誌でフリーランスとして働き始めた。1961年、編集部は高齢化するスタッフに新しい血を注入することを決定し、ローエンガードにこの評判の高いグループへの参加を依頼した。彼は仕事で国内の様々な場所や様々な題材を取材し、ジョージア・オキーフ、シェーカー教徒、マイアミでの新バンド、ビートルズとの一いち日、消えゆくカウボーイなど、記憶に残るフォトエッセイを制作した。

Ad Reinhardt
American artist Ad Reinhardt hangs his paintings to dry in a studio, New York, 1966

彼は『ライフ』誌で最も個性的な専属写真家の一人となった。専属写真家にはアルフレッド・アイゼンスタット、マーガレット・バーク=ホワイト、ピーター・スタックポール、トーマス・マカヴォイ、カール・マイダンス、ラルフ・モース、アンドレアス・ファイニンガーなどが名を連ねていた。『ライフ』誌が1972年に週刊誌を休刊すると、ローエンガードは10回半期刊行の「特別レポート」の写真編集者になった。

Legendary Henri Cartier-Bresson flies a kite, Provence, 1987

彼はタイム社の雑誌開発グループの写真編集者で、 1974年に『ピープル』誌を企画・創刊した。1978年に『ライフ』誌が月刊誌として復活する際、ジョン・ローエンガードは同誌の7代目写真編集長に就任した。彼は1987年までその職を務めた。この尊敬される写真家であり写真編集者は「医師のように、写真家は目の前にあるものを相手に仕事をします。私たちの主な感情は、期待、焦燥、そして忍耐であり、物事がうまくいったときの素晴らしい高揚感、つまり写真の中に何か欠けている感情、美しさ、あるいは人生の織りなす神秘の一片を捉えたと思ったときの高揚感によってバランスが取れているのではないかと思います」と述べている。

Annie Leibovitz
Annie Leibovitz with her assitant Robert Bean on the Chrysler Building, 1991

1986年、その『ライフ』誌はアメリカ雑誌編集者協会が授与する「写真優秀賞」を初めて受賞した。ローエンガードは1987年まで『ライフ』誌の写真編集者として続けた。彼は写真に関する10冊の書籍の著者である。彼はニューヨークの国際写真センター、ニューヨークのニュースクール・フォー・ソーシャルリサーチ、そして全国各地のワークショップで教鞭を執った。2004年、ローエンガードはタイム社からヘンリー・R・ルース「生涯功労賞」を受賞した。

LIFE Cover
LIFE Cover: The cities lock up: November 19, 1971

2005年、『アメリカンフォト』誌はローエンガードを「写真界で最も影響力のある100人のひとり」に選出した。 「写真家であり写真編集者、指導者であり預言者、キュレーターであり歴史家、批評家であり学者。ジョン・ローエンガードは長年にわたり、これらの役割のすべてを、活力と集中力、頑固さと機知に富んだ知性をもって担ってきた」と『ヴァニティ・フェア』誌は記している 。彼は2018年に国際写真の殿堂入りを果たした。ジョン・ローエンガードは2020年5月24日にニューヨークのマンハッタンで心不全のため死去、85歳だった。

LIFE  John Loengard (1934-2020)Photography and Biography © The LIFE Magazine Collection