2024年12月20日

ベトナム戦争中にナパーム弾攻撃から逃げる子供たちを撮影したニック・ウット

Napalm Girl
Naked 9-year-old girl, Phan Thị Kim Phúc, Trảng Bàng, Vietnam, 1972
Nick Ut (born 1951)

ニック・ウットは、ロサンゼルスのAP通信に勤務していたベトナム系アメリカ人の写真家。ベトナム戦争中にナパーム弾攻撃から逃げる子供たちを撮影した1972年の「戦争の恐怖」で、1973年のピューリッツァー賞スポットニュース写真部門と1973年世界報道写真賞を受賞した。2017年に引退。作品はワシントンD.C.のナショナル・ギャラリーのコレクションで見ることができる。ウットは1951年3月29日、ベトナム(当時はフランス領インドシナの一部)のロンアンで生まれた。 AP通信のカメラマンだった兄のフイン・タン・ミーがベトナムで殺害された直後 、15歳のときにAP通信で写真を撮り始めた。サイゴン支局で彼の最も親しかった友人であるアンリ・ユエも、疲れ切ったウットの代わりに任務を引き受けた後、1971年に亡くなった。1975年のサイゴン陥落後、ウット自身も戦争で膝、腕、腹部に3回負傷した。彼は東京に移り、2年後にロサンゼルスに移住した。通称「ナパーム弾の少女」とも呼ばれる「戦争の恐怖」は、ウットの最も有名な写真で、1972年6月8日、北ベトナム軍ではなく誤ってトランバン村を襲った南ベトナム軍のナパーム弾から逃れ、カメラに向かって走ってくる9歳の裸の少女ファン・ティ・キム・フックを捉えている。この写真のフィルムを届ける前に、ウットはカメラを脇に置いてキム・フックを病院に急行させ、医師が彼女の命を救った。彼は「彼女が走っているのを見て泣きました...もし私が彼女を助けなかったら、何かが起こって彼女が死んだら、その後自殺すると思います」と語った。

Cambodian Civil War
Soldiers in Cambodian Civil War, 1970

怯えた子供たちが道路を逃げている。背後には兵士がいて、空は煙で覆われている。中央には裸の少女が叫びながら腕を上げて走って来る。この写真の公開は、AP通信が裸の少女の写真を有線で送信することについて議論したため遅れた。ウットは「AP 通信の編集者は、キム・フックが裸で道を走っている写真を拒否した。正面からのヌードが写っているからだ。1972年当時、AP通信ではあらゆる年齢や性別のヌード、特に正面からの写真は絶対に禁止されていた。...ホルストはニューヨーク本社にテレックスで、キム・フックという少女のクローズアップだけは放送しないという妥協案で、例外を設けなければならないと主張した。ニューヨークの写真編集者ハル・ビューエルは、写真のニュース価値がヌードに関する懸念を上回ることに同意した」と述懐している。

Napalm bombs
Napalm bombs and white phosphorous explode, Trang Bang, 1972

当時の大統領リチャード・ニクソンと首席補佐官のH・R・ハルデマンと会話している音声テープには、ニクソンが写真の信憑性を疑い、それが「加工」されているのではないかと考えていたことが示されている。2016年9月、ノルウェーの新聞社のフェイスブックページに掲載されたこの写真に検閲が課された後、同紙はマーク・ザッカーバーグに宛てた公開書簡を掲載した。ノルウェー政府の大臣の半数がフェイスブックのページでこの写真を共有し、その中には保守党のエルナ・ソルベルグ首相もいた。首相の投稿を含むいくつかのフェイスブックの投稿はフェイスブックによって削除されたが、その日のうちにフェイスブックは写真を復活させ「共有を許可する価値は削除によってコミュニティを保護する価値を上回る」と述べた。ウットの国籍はアメリカで、ロサンゼルスで結婚してふたりの子供がいる。

A family flees toward Saigon
A family flees toward Saigon along Route 13, 1972

2007年6月8日にロサンゼルス郡保安官の巡回車の後部座席で泣いているパリス・ヒルトンを撮影した彼の写真は世界中で公開されたが、ウットは写真家のカール・ラーセンと一緒にヒルトンを撮影していた。2枚の写真が出たが、ヒルトンのより有名な写真はラーセンの写真であるにもかかわらず、ウットによるものとされた。AP通信に51年間勤務した後、2017年に退職した。2012年9月、ピューリッツァー賞を受賞した写真の40周年を記念して、ウットはフォトジャーナリズムへの貢献によりライカの殿堂入りを果たした3人目の人物となった。2021年、ニック・ウットはベトナム戦争中の功績によりアメリカ国家芸術賞を受賞した。受賞前夜、ニューズウィーク誌にエッセイを発表し、 1月6日の米国議会議事堂襲撃をめぐる政治的懸念にもかかわらず、ドナルド・トランプ大統領から勲章を受け取ることにした理由を説明した。

 Mekong Delta stream
Soldier crosses a muddy Mekong Delta stream in Vietnam, 1972

翌日、友人と夕食に出かけた際、ニック・ウットはワシントンD.C.のダウンタウンで見知らぬ人に襲われた。彼は地面に倒れ、木を囲む金属フェンスにぶつかり、肋骨、背中、足を負傷した。この襲撃が政治的な理由によるものなのか、単なる偶然なのかは不明である。事件後、ウットはキム・フックを含む多くの電話から健康状態を尋ねられた。代表作『戦争の恐怖』は、海外記者クラブから最優秀写真賞、日刊新聞・通信社賞など、あらゆる主要な写真賞を獲得した。報道写真のジョージ・ポーク賞、世界報道写真賞の年間最優秀写真賞、スポットニュース写真のピューリッツァー賞も受賞。2014年には報道写真の功績が認められルーシー賞を受賞。インドのケララ・メディア・アカデミーは2019年に世界報道写真家賞を授与した。2021年には、アメリカ連邦政府が芸術家や芸術パトロンに与える最高の賞であるアメリカ国家芸術賞をジャーナリストとして初めて授与した。下記リンク先はライカカメラのインタビューによる「ニック・ウット:ベトナム戦争終結に貢献した驚くべき武勇伝とイメージ」と題したブログ記事(英文)である。

Leica
Nick Ut: The Amazing Saga and the Image that helped end the Vietnam War | Leica Camera Blog

写真術における偉大なる達人たち

Mount Aso
Henri Cartier-Bresson (1908-2004) Mount Aso-san, Kumamoto, Japan, 1965

2021年の夏以来、思いつくまま世界の写真界20~21世紀の達人たちの紹介記事を拙ブログに綴ってきましたが、2024年12月20日現在のリストです。右端の()内はそれぞれ写真家の生年・没年です。左端の年月日をクリックするとそれぞれの掲載ページが開きます。

21/10/04生まれ故郷ブラジルの熱帯雨林アマゾン川流域へのセバスチャン・サルガドの視座(born 1944)
21/10/06多くの人々に感動を与えたアフリカ系アメリカ人写真家ゴードン・パークスの足跡(1912–2006)
21/10/08グループ f/64 のメンバーだった写真家イモージン・カニンガムは化学を専攻した(1883–1976)
21/10/10圧倒的な才能を持ち現代アメリカの芸術写真を牽引したポール・ストランド(1890–1976)
21/10/11何気ない虚ろなアメリカを旅したスイス生まれの写真家ロバート・フランク(1924–2019)
21/10/13作為を排した新客観主義に触発されたストリート写真の達人ロベール・ドアノー(1912–1994)
21/10/16大恐慌時に農村や小さな町の生活窮状をドキュメントした写真家ラッセル・リー(1903–1986)
21/10/17日記に最後の晩餐という言葉を残して自死した写真家ダイアン・アーバスの黙示録(1923–1971)
21/10/19フォトジャーナリズムの手法を芸術の域に高めた写真家ユージン・スミスの視線(1918–1978)
21/10/24時代の風潮に左右されず独自の芸術観を持ち続けたプラハの詩人ヨゼフ・スデック(1896-1976)
21/10/27西欧美術を米国に紹介した写真家アルフレッド・スティーグリッツの功績(1864–1946)
21/11/01美しいパリを撮影していたウジェーヌ・アジェを「発見」したベレニス・アボット(1898–1991)
21/11/08近代ストレート写真を先導した 20 世紀の写真界の巨匠エドワード・ウェストン(1886–1958)
21/11/10芸術を通じて社会や政治に影響を与えることを目指した写真家アンセル・アダムス(1902–1984)
21/11/13大恐慌を記録したウォーカー・エヴァンスの被写体はその土地固有の様式だった(1903–1975)
21/11/16写真少年ジャック=アンリ・ラルティーグは個展を開いた 69 歳まで無名だった(1894–1986)
21/11/20ハンガリー出身の世界で最も偉大な戦争写真家ロバート・キャパの短い人生(1913–1954)
21/11/25児童労働の惨状を訴えるため現実を正確に捉えた写真家ルイス・ハインの偉業(1874–1940)
21/12/01マグナム・フォトを設立した写真家アンリ・カルティエ=ブレッソンの決定的瞬間(1908–2004)
21/12/06犬を人間のいくつかの性質を持っているとして愛撮したエリオット・アーウィット(1928-2023)
21/12/08リチャード・アヴェドンの洗練され権威ある感覚をもたらしたポートレート写真(1923–2004)
21/12/12デザインと産業の統合に集中したバウハウスの写真家ラースロー・モホリ=ナジ(1923–1928)
21/12/17ダダイズムとシュルレアリスムに跨る写真を制作したマン・レイは革新者だった(1890–1976)
21/12/29フォトジャーナリズムに傾倒したアラ・ギュレルの失われたイスタンブル写真素描(1928–2018)
22/01/10ペルーのスタジオをヒントに自然光に拘ったアーヴィング・ペンの鮮明な写真(1917-2009)
22/02/25非現実的なほど歪曲し抽象的な遠近感を生み出した写真家ビル・ブラントのカメラ(1904–1983)
22/03/09男性ヌードや花を白黒で撮影した異端の写真家ロバート・メイプルソープへの賛歌(1946–1989)
22/03/18ニューヨーク近代美術館で写真展「人間家族」を企画したエドワード・スタイケン(1879–1973)
22/03/24公民権運動の影響を記録したキュメンタリー写真家ブルース・デヴッドソンの慧眼(born 1933)
22/04/21社会的弱者に寄り添いエモーショナルに撮影した写真家メアリー・エレン・マーク(1940-2015)
22/05/20早逝した写真家リンダ・マッカートニーはザ・ビートルズのポールの伴侶だった(1941–1998)
22/06/01大都市に変貌する香港を活写して重要な作品群を作り上げたファン・ホーの視線(1931–2016)
22/06/12肖像写真で社会の断面を浮き彫りにしたドキュメント写真家アウグスト・ザンダー(1876–1964)
22/08/01スペイン内戦取材で26歳という若さに散った女性戦争写真家ゲルダ・タローの生涯 (1910–1937)
22/09/16カラー写真を芸術として追及したジョエル・マイヤーウィッツの手腕(born 1938)
22/09/25死と衰退を意味する作品を手がけた女性写真家サリー・マンの感性(born 1951)
22/10/17北海道の風景に恋したイギリス人写真家マイケル・ケンナのモノクロ写真(born 1951)
22/11/06アメリカ先住民を「失われる前に」記録したエドワード・カーティス(1868–1952)
22/11/16大恐慌の写真 9,000 点以上を制作したマリオン・ポスト・ウォルコット(1910–1990)
22/11/18人間の精神の深さを写真に写しとったアルゼンチン出身のペドロ・ルイス・ラオタ (1934-1986)
22/12/10アメリカの生活と社会的問題を描写した写真家ゲイリー・ウィノグランド(1928–1984)
22/12/16没後に脚光を浴びたヴィヴィアン・マイヤーのストリート写真(1926–2009)
22/12/23写真家集団マグナムに参画した初めての女性報道写真家イヴ・アーノルド(1912-2012)
23/03/25写真家フランク・ラインハートのアメリカ先住民のドラマチックで美しい肖像写真(1861-1928)
23/04/13複雑なタブローを構築するシュールレアリスム写真家サンディ・スコグランド(born 1946)
23/04/21キャラクターから自らを切り離したシンディー・シャーマンの自画像(born 1954)
23/05/01震災前のサンフランシスコを記録した写真家アーノルド・ジェンス(1869–1942)
23/05/03メキシコにおけるフォトジャーナリズムの先駆者マヌエル・ラモス(1874-1945)
23/05/05文学と芸術に没頭し超現実主義絵画に着想を得た台湾を代表する写真家張照堂(1943-2024)
23/05/07家族の緊密なポートレイトで注目を集めた写真家エメット・ゴウィン(born 1941)
23/05/22欲望やジェンダーの境界を無視したクロード・カアンのセルフポートレイト(1894–1954)
23/05/2520世紀初頭のアメリカの都市改革に大きく貢献したジェイコブ・リース(1849-1914)
23/06/05都市の社会風景という視覚的言語を発展させた写真家リー・フリードランダー(born 1934)
23/06/13写真芸術の境界を広げた暗室の錬金術師ジェリー・ユルズマンの神技(1934–2022)
23/06/15強制的に収容所に入れられた日系アメリカ人を撮影したドロシア・ラング(1895–1965)
23/06/20劇的な国際的シンボルとなった「プラハの春」を撮影したヨゼフ・コウデルカ(born 1958)
23/06/24警察無線を傍受できる唯一のニューヨークの写真家だったウィージー(1899–1968)
23/07/03フォトジャーナリズムの父アルフレッド・アイゼンシュタットの視線(1898–1995)
23/07/06ハンガリーの芸術家たちとの交流が反映されたアンドレ・ケルテスの作品(1894-1985)
23/07/08家族が所有する島で野鳥の写真を撮り始めたエリオット・ポーター(1901–1990)
23/07/08戦争と苦しみを衝撃的な力でとらえた報道写真家ドン・マッカラン(born 1935)
23/07/17夜のパリに漂うムードに魅了されていたハンガリー出身の写真家ブラッサイ(1899–1984)
23/07/2020世紀の著名人を撮影した肖像写真家の巨星ユーサフ・カーシュ(1908–2002)
23/07/22メキシコの革命運動に身を捧げた写真家ティナ・モドッティのマルチな才能(1896–1942)
23/07/24ロングアイランド出身のマルクス主義者を自称する写真家ラリー・フィンク(born 1941)
23/08/01アフリカ系アメリカ人の芸術的な肖像写真を制作したコンスエロ・カナガ(1894–1978)
23/08/04ヒトラーの地下壕の写真を世界に初めて公開したウィリアム・ヴァンディバート(1912-1990)
23/08/06タイプライターとカメラを同じように扱った写真家カール・マイダンス(1907–2004)
23/08/08ファッションモデルから戦場フォトャーナリストに転じたリー・ミラーの生涯(1907-1977)
23/08/14ニコンのレンズを世界に知らしめたデイヴィッド・ダグラス・ダンカンの功績(1907-2007)
23/08/18超現実的なインスタレーションアートを創り上げたサンディ・スコグランド(born 1946)
23/08/20シカゴの街角やアメリカ史における重要な瞬間を再現した写真家アート・シェイ(1922–2018)
23/08/22大恐慌時代の FSA プロジェクト 最初の写真家アーサー・ロススタイン(1915-1986)
23/08/25カメラの焦点を自分たちの生活に向けるべきと主張したハリー・キャラハン(1912-1999)
23/09/08イギリスにおけるフォトジャーナリズムの先駆者クルト・ハットン(1893–1960)
23/10/06ロシアにおけるデザインと構成主義創設者だったアレクサンドル・ロトチェンコ(1891–1956)
23/10/18物事の本質に近づくための絶え間ない努力を続けた写真家ウィン・バロック(1902–1975)
23/10/27先見かつ斬新な作品により写真史に大きな影響を与えたウィリアム・クライン(1926–2022)
23/11/09アパートの窓から四季の移り変わりの美しさなどを撮影したルース・オーキン(1921-1985)
23/11/15死や死体の陰翳が纏わりついた写真家ジョエル=ピーター・ウィトキンの作品(born 1939)
23/12/01近代化により消滅する前のパリの建築物や街並みを記録したウジェーヌ・アジェ(1857-1927)
23/12/15同時代で最も有名で最も知られていないストリート写真家のヘレン・レヴィット(1913–2009)
23/12/20哲学者であることも写真家であることも認めなかったジャン・ボードリヤール(1929-2007)
24/01/08音楽や映画など多岐にわたる分野で能力を発揮した写真家ジャック・デラーノ(1914–1997)
24/02/25シチリア出身のイタリア人マグナム写真家フェルディナンド・スキアンナの視座(born 1943)
24/03/21パリで花開いたロシア人ファッション写真家ジョージ・ホイニンゲン=ヒューン(1900–1968)
24/04/04報道写真家として自活することに成功した最初の女性の一人エスター・バブリー(1921-1998)
24/04/20長時間露光により時間の多層性を浮かび上がらせたアレクセイ・ティタレンコ(born 1962)
24/04/2820世紀後半のイタリアで最も重要な写真家ジャンニ・ベレンゴ・ガルディン(born 1930)
24/04/30トルコの古い伝統の記憶を守り続ける女性写真家 F・ディレク・ウヤル(born 1976)
24/05/01ファッション写真に大きな影響を与えたデヴィッド・ザイドナーの短い生涯(1957-1999)
24/05/08社会の鼓動を捉えたいという思いで写真家になったリチャード・サンドラー(born 1946)
24/05/10直接的で妥協がないストリート写真の巨匠レオン・レヴィンシュタイン(1910–1988)
24/05/12自らの作品を視覚的な物語と定義している写真家スティーヴ・マッカリー(born 1950)
24/05/14多様な芸術の影響を受け写真家の視点を形作ったアンドレアス・ファイニンガー(1906-1999)
24/05/16芸術的表現により繊細な目を持つ女性写真家となったマルティーヌ・フランク(1938-2012)
24/05/18ドキュメンタリー写真をモノクロからカラーに舵を切ったマーティン・パー(born 1952)
24/05/21先駆的なグラフ誌『ピクチャー・ポスト』を主導した写真家バート・ハーディ(1913-1995)
24/05/24グラフ誌『ライフ』に30年間投稿し続けたロシア生まれの写真家リナ・リーン(1914-1995)
24/05/27旅する写真家として20世紀後半の歴史に残る象徴的な作品を制作したルネ・ブリ(1933-2014)
24/05/29高速ストロボスコープ写真を開発したハロルド・ユージン・エジャートン(1903-1990)
24/06/03一般市民とそのささやかな瞬間を撮影したオランダの写真家ヘンク・ヨンカー(1912-2002)
24/06/10ラージフォーマット写真のデジタル処理で成功したアンドレアス・グルスキー(born 1955)
24/06/26レンズを通して親密な講釈と被写体の声を伝えてきた韓国出身のユンギ・キム(born 1962)
24/07/05演出されたものではなく現実的なファッション写真を開発したトニ・フリッセル(1907-1988)
24/07/07スウィンギング60年代のイメージ形成に貢献した写真家デイヴィッド・ベイリー(born 1938)
24/07/13著名人からから小さな町の人々まで撮影してきた写真家マイケル・オブライエン(born 1950)
24/07/14人々のドラマが宿る都市のカラー写真を制作したコンスタンティン・マノス(born 1934)
24/08/04写真家集団「マグナム・フォト」所属するただ一人の日本人メンバー久保田博二(born 1939)
24/08/08ロバート・F・ケネディの死を悼む人々を葬儀列車から捉えたポール・フスコ(1930–2020)
24/08/13クリスティーナ・ガルシア・ロデロが話したいのは時間も終わりもない出来事だ(born 1949)
24/08/30ドキュメンタリーと芸術の境界を歩んだカラー写真の先駆者エルンスト・ハース(1921–1986)
24/09/01国際的写真家集団マグナム・フォトの女性写真家スーザン・メイゼラスの視線(born 1948)
24/09/09アパルトヘイトの悪と日常的な社会への影響を記録したアーネスト・コール(1940–1990)
24/09/14宗教的または民俗的な儀式に写真撮影の情熱を注ぎ込んだラモン・マサッツ(1931-2024)
24/09/23アメリカで最も有名な無名の写真家と呼ばれたエヴリン・ホーファー(1922–2009)
24/09/25自身を「大義を求める反逆者」と表現した写真家マージョリー・コリンズ(1912-1985)
24/09/27北海道の小さな町にあった営業写真館を継がず写真芸術の道を歩んだ深瀬昌久(1934-2012)
24/10/01現代アメリカの風変わりで平凡なイメージに焦点を当てた写真家アレック・ソス(born 1969)
24/10/04微妙なテクスチャーの言語を備えた異次元の写真を追及したアーサー・トレス(born 1940)
24/10/06オーストリア系イギリス人のエディス・チューダー=ハートはソ連のスパイだった(1908-1973)
24/10/08映画の撮影監督でもあったドキュメンタリー写真家ヴォルフガング・スシツキー(1912–2016)
24/10/15芸術のレズビアン・サブカルチャーに深く関わった写真家ルース・ベルンハルト(1905–2006)
24/10/19ランド・アートを通じて作品を地球と共同制作するアンディ・ゴールドワージー (born 1956)
24/10/29公民権運動の活動に感銘し刑務所制度の悲惨を描写した写真家ダニー・ライアン (born 1942)
24/11/01人間の状態と現在の出来事を記録するストリート写真家ピータ―・ターンリー (born 1955)
24/11/04写真を通じて現代の社会的状況を改善することに専念したアーロン・シスキンド(1903-1991)
24/11/07自然と植物の成長にインスピレーションを受けた写真家カール・ブロスフェルト(1865-1932)
24/11/09ストリート写真で知られているリゼット・モデルは教える才能を持っていた(1901-1983)
24/11/11カラー写真が芸術として認知されるようになった功労者ウィリアム・エグルストン(born 1939)
24/11/13革命後のメキシコ復興の重要人物だった写真家ローラ・アルバレス・ブラボー(1903-1993)
24/11/15チリの歴史上最も重要な写真家であると考えられているセルヒオ・ララインの視座(1931-2012)
24/11/19イギリスのアンリ・カルティエ=ブレッソンと評されたジェーン・ボウン(1925-2014)
24/11/25カラー写真の先駆者ソール・ライターは戦後写真界の傑出した人物のひとりだった(1923–2013)
24/11/25サム・フォークがニューヨーク・タイムズに寄せた写真は鮮烈な感覚をもたらした(1901-1991)
24/11/29ゲイ解放運動の活動家だったトランスジェンダーの写真家ピーター・ヒュージャー(1934–1987)
24/12/01複数の芸術的才能に恵まれていた華麗なるファッション写真家セシル・ビートン(1904–1980)
24/12/05ライフ誌と空軍で活躍した女性初の戦場写真家マーガレット・バーク=ホワイト(1904–1971)
24/12/07愛と美を鮮明に捉えたロマン派写真家エドゥアール・ブーバの平和への眼差し(1923–1999)
24/12/10保守的な政治体制と対立しながら自由のために写真を手段にしたエヴァ・ペスニョ(1910–2003)
24/12/15自然環境における人間の姿を研究することに関心を寄せた写真家マイケル・ぺト(1908-1970)
24/12/20ベトナム戦争中にナパーム弾攻撃から逃げる子供たちを撮影したニック・ウット(born 1951)

子供の頃「明治は遠くなりにけり」という言葉を耳にした記憶がありますが、今まさに「20世紀は遠くなりにけり」の感があります。掲載した作品の大半がモノクロ写真で、カラー写真がわずかのなのは偶然ではないような気がします。20世紀のアートの世界ではモノクロ写真が主流だったからです。しかしデジタルカメラが主流になった21世紀、カラー写真の台頭に目覚ましいものがあります。ジョエル・マイヤーウィッツとサンディ・スコグランド、ジャン・ボードリヤール、 F・ディレク・ウヤル、マーティン・パー、コンスタンティン・マノス、久保田博二、ポール・フスコ、エルンスト・ハース、エヴリン・ホーファー、アレック・ソス、アンディ・ゴールドワージー、ウィリアム・エグルストン、ソール・ライタ、などのカラー作品を取り上げました。

Large-Format-Camera  Famous Photographers: Great photographs can elicit thoughts, feelings, and emotions.

2024年12月18日

脳裡に蘇った安倍昭恵元首相夫人と森友学園籠池夫妻のスリーショット写真

安倍昭恵首相夫人と籠池夫妻のスリーショット
安倍昭恵首相夫人と籠池夫妻のスリーショット(大阪府豊中市野田町)

ドナルド・トランプ米次期大統領とメラニア夫人との安倍昭恵元首相夫人のスリーショット写真を眺めていたら、学校法人森友学園の籠池泰典前理事長と妻の諄子氏とのスリーショット写真がオーバーラップし始めた。同学園の「瑞穂の國記念小學院」の建設予定地だった大阪府豊中市野田町の国有地だった。当時、安倍昭恵首相夫人は同小学校の名誉校長に就任することが予定されていた。鑑定評価額9億5600万円の国有地を、新設小学校用地として実質200万円で購入したと公表された。なぜそんなことが可能になったのか? 近畿財務局から有利な取り計らいを受けたことについて籠池氏は「安倍昭恵さんとの写真を近畿財務局の担当者に見せた」という。つまり森友事件の発端はこの写真だったのである。2014年(平成26年)4月25日、昭恵夫人は初めて森友学園で講演を行った。その後、学園が取得を目指していた問題の国有地を籠池夫妻の案内で訪れ、3人で一緒に写真におさまったのである。実はすでに公式サイト「瑞穂の國記念小學院」は存在しないのだが、事件が発覚してから名誉校長として紹介されていた安倍昭恵首相夫人の顔写真と挨拶文が削除された。よほどやましいことがあるのだろう。国会で追及された元首相は「引き受けていることで子どもたちや保護者に迷惑をかける。妻と話し、退くことになった」と説明すし。逆ギレ気味に森友学園側との「無関係」を強調したが、関係ないなんて誰も信じなかったのは言うまでもない。削除された昭恵夫人の挨拶文は以下の通りだった。

名誉校長安倍昭恵先生:籠池先生の教育に対する熱き想いに感銘を受け、このたび瑞穂の國記念小學院の名誉校長に就任させていただきました。瑞穂の國記念小學院は、優れた道徳教育を基として、日本人としての誇りを持つ、芯の通った子どもを育てます。そこで備わった「やる気」や「達成感」「プライド」や「勇気」が、子ども達の未来で大きく花開き、其々が日本のリーダーとして国際社会で活躍してくれることを期待しております。
瑞穂の國記念小學院
放置された瑞穂の國記念小學院工事現場

籠池泰典氏は2017年3月23日の参院予算委員会の証人喚問で、2015年9月に安倍昭恵首相夫人から「安倍晋三からです」と封筒に入った100万円の寄付を受け取ったと証言した。大阪府豊中市の国有地を評価額より大幅に安く購入した経緯については「政治的な関与はあったのだろうと認識している」と語った。この100万円について籠池氏の長男、佳茂氏は、籠池氏の側にいた著述家の菅野完氏による「捏造であり、報道テロです」とツイッターに書いている。籠池氏は以下のように話した。曰く「安倍昭恵さんから100万円を受け取ったのは事実。そのことは当時、森友学園の寄付簿にも記載している。しかしその寄付簿は検察の捜索で押収された。補助金詐欺とは何の関係もないはずだが、いまだに戻ってこない。菅野さんは、私が100万円を昭恵さんに返そうとした時、真ん中に白い紙を挟んで両端だけお札の偽札束を用意し、私に手渡した。私はそのことを知らずにテレビカメラの前で見せたから、みんなに偽物だと知れ渡った。菅野さんが100万円に関与したというのはそういうことだ」云々。国有地売却問題で、学園の籠池泰典前理事長が2017年6月21日夜、安倍昭恵首相夫人が開いた東京都千代田区の居酒屋「UZU」を訪れた。訪問後、記者団に対し「昭恵氏から寄付を受けた100万円を返却しに来たが、受け取ってもらえなかった」と話したという。以上「オールドメディア」の記事をまとめてみた。

旭日旗  日本人としての誇り・貢献・達成力の確保 国家有為の人材育成 | 瑞穂の國記念小學院 (PDF)

2024年12月17日

木の枝に巣箱をかけて春よ来い鳥よ来い

巣箱
庭の楓にかけた巣箱

釣り文学が好きだけど釣りはしない人を「アームチェア・アングラ―」と呼ぶ。左右両側に腕木(肘掛け)の付いた椅子にかけて釣り文学楽しむ「疑似釣り師」である。野外に出ずに部屋で野鳥図鑑や野鳥博物誌を楽しむ人はさしずめ「アームチェア・バードウオッチャー」と呼ぶべきかもしれない。実は私、この両方に当たるズボラ人間である。書籍を上げたらキリがないが、前者ならアイザック・ウォルトン著『完訳 釣魚大全』 (角川選書 72)エドワード・グレイ著『フライ・フィッシング』 (講談社学術文庫 2156) 井伏鱒二著『川釣り』(岩波文庫 緑 77-2)開高健著『私の釣魚大全 』(文春文庫 か 1-2) など、後者なら高野伸二著『フィ-ルドガイド日本の野鳥』(日本野鳥の会)W・H・ハドスン著『鳥たちをめぐる冒険』(講談社学術文庫 1021)ギルバート・ホワイト著『セルボーンの博物誌』(講談社学術文庫 1018)などがお好みである。

鳥たちをめぐる冒険/セルボーンの博物誌
鳥たちをめぐる冒険/セルボーンの博物誌

野鳥に関しては回数はは少ないけど、日本野鳥の会の「探鳥会」に参加したことがある。ところが昨今、加齢と共に足腰が弱り、山野を歩くのが困難になってしまった。そこで庭に果物などをぶら下げて鳥寄せをするようになった。春先は繍(めじろ)など小鳥がくるようになったが、鵯(ひよどり)に追い払われる始末。そこで思いついたのがガーデン・バードウオッチング用の巣箱の設置である。自作している時間がないので日本野鳥の会の通販ページから四十雀(しじゅうから)用をとり寄せた。野鳥の繁殖期は初夏だが、巣箱の存在と位置を知らせるために、秋や冬に空っぽの巣箱を設置し、春から初夏にかけて営巣してくれるのを待つためである。さてどうなるだろうか、春よ来い、鳥よ来い。下記リンク先は日本野鳥の会のショッピングぺージである。

日本野鳥の会  光学機器、図鑑、野鳥観察用アウトドアグッズ、野鳥をモチーフにした雑貨の販売 | 日本野鳥の会