2025年11月26日

ソーシャルメディアの弊害(10)高市早苗ネット応援団の穽陥

Sanae Takaichi Cartoon
高市早苗首相の風刺漫画「トラ・トラ・トラ!」©2025 Bart van Leeuwen

いわゆる「存立危機事態」を巡る高市早苗首相の発言が尾を引いている。中国政府は自国民に日本への渡航自粛を呼びかけた。今月18日には北京を訪れた外務省の金井正彰アジア大洋州局長に対し発言の撤回を求めたが、金井は応じなかった。さらにこの会談終了後、中国外務省の劉勁松アジア局長がポケットに手を突っ込んだまま金井と立ち話する映像が流れ、その態度が「不遜だ」などと日本国内で反発が起こっている。与党幹部は「日中の問題は長引く。高市首相は答弁を撤回しないし、中国も対応を変えないだろう」と言う。中国は今月再開されたばかりの日本の水産物の輸入についても事実上停止することを伝えてきており、高市発言に端を発した日中関係の緊迫化は経済にも影響を与え始めている。小泉純一郎政権で日朝交渉を担当した田中均元外務審議官は自身の YouTube チャンネルで「台湾問題は中国にとって核心的利益」だとして高市に「国会の場で発言を撤回するよう」促した。しかしネットを中心とした世論は高市の「勇み足」に寛容だ。

G20
ヨハネスブルクで開催されたG20首脳会議に出席した高市早苗首相(随行員撮影)

むしろ今回の問題のきっかけを作ったのは衆議院予算委員会で質問に立った岡田克也元外務大臣ら立憲民主党の議員だとして、バッシングが起き始めているから驚く。質問した岡田克也が悪い」と質問者を糾弾するという想像を絶する展開になっている。立憲民主党の本庄知史政調会長は「質問した岡田克也議員が間違っていたと。あるいはしこかったと。こういった言説が SNS だけではなくて大手のメディア、テレビでもコメンテーターなども含めて取り上げられているということは、極めて問題があると思っています」と呆れる。参院選後の立憲は、国民民主党の玉木雄一郎代表を首班とする野党主導の非自民政権樹立を目指したものの、自民と維新の連立により頓挫。高市政権が驚異的な支持率を記録する中、本来なら国会で高市と真正面から対峙し論戦を張らなければならない野党第一党は、いま自信を喪失しているようだ。高市政権が誕生したばかりのこと、立憲の幹部の1人が「とにかくいまは静かにしていることが肝心だ。“高市人気”という旋風が過ぎ去るまでは、変に相手を刺激しても何にもならない」と口にしたという。この幹部は、高市を怒らせて解散総選挙に突き進まれたら、立憲が壊滅的な打撃を受けると懸念しているそうだ。高市早苗は「ネット世論」に助けられているが、逆にその世論なるものに阿ているきらいがないだろうか。

Social Media サナ活から SNS 動画まで…高市政権「異例の熱狂」の正体 支持者が見ているものとは | 日刊 SPA

2025年11月25日

フォトルポルタージュの新たな時代を築いたスペインの写真家ラモン・マサッツ

Ubrique, Cádiz,
Ubrique, Cádiz, Andalucía, 1957
Ramón Masats

ラモン・マサッツは1931年3月16日、スペインのカタルーニャ州カルデス・デ・モンブイで生まれた。写真界の巨匠の一人である彼は、幼い頃に写真雑誌『アルテ・フォトグラフィコ』を発見し、このジャンルに興味を持った。それ以来、写真を撮ることは彼の生活の一部となった。1953年にフォトジャーナリストとなり、バルセロナのランブラス通りで仕事を始めた。翌年、彼はレアル・ソシエダ・フォトグラフィカに加入した。1957年にカタルーニャ写真協会に加わる。その年、彼はマドリッドに移り、AFAL写真グループのガセタ・イルストラーダに参加した。1964年にプラド美術館に関するドキュメンタリーを発表し、タオルミーナ映画祭で賞を受賞した。その作品の成功により、2002年にはマドリード州政府文化賞、2004年にはスペイン国立写真賞を受賞した。2004年にスペイン国立写真賞を受賞し、スペイン最高の写真家と広く認められている。同時代の人々は、彼を同世代で最も輝かしく、最も高名な写真家として記憶しているのである。彼が同時代における最初の偉大なフォトジャーナリストであったことは疑いの余地がない。

Puerto de Barcelona
Puerto de Barcelona, Cataluña, 1953
Sanfermines,
Sanfermines, Pamplona, Navarra, 1957

マサッツの作品はスペインの写真史において最も影響力のある作品の一つであり、現代的な表現方法の先駆者である。彼はおそらく同時代のAFAL写真家であるアルベルト・ショマー、カルロス・ペレス・シキエ、ジョアン・コロム、ガブリエル・クアラド、フランシスコ・ゴメス、ゴンサロ・フアネス、オリオール・マスポンス、ザビエル・ミセラクス、フランシスコ・オンターニョ、リカール・テレ、フリオ・ウビーニャらから最も賞賛された写真家であり、カルロス・ペレス・シキエは彼らを「スペインのアンリ カルティエ=ブレッソン」と呼んだ。

Saint Laurent
Yves Saint Laurent, Palacio de Liria, Madrid, 1959

スペインにおけるフォトジャーナリズムの成熟を理解する上で重要な写真家であり、現代写真史を牽引する人物であり、著者の概念と写真イメージの構築に不可欠な貢献を果たした。強烈な写真的直感と、周囲で起こる出来事を捉える卓越した能力を備え、皮肉と反骨精神を作品に吹き込んでいた。 現代ドキュメンタリー写真の先駆者である彼の作品は、伝統的なスペインの民間伝承や習慣を描写する際のヒューマニズム と皮肉的な視点で特徴づけられており、彼はそれを公式文化が国家の価値を称賛するための決まり文句と呼んでいたのである。彼の物語は、物質的な貧困に陥り、社会的に分裂し、精神的な絆に強く縛られている国の姿を巧みに描き出している。

Tomelloso
Tomelloso, Provincia de Ciudad Real, 1960

彼の人間味あふれる皮肉な視点は、写真の力強いグラフィック性によってさらに引き立てられていた。マサッツの写真に融合されたこれら3つの特徴は、ドキュメンタリー写真の新たな時代を築いた。写真家の個性が、写真像の単なる光学的現実を超越する示唆を構築し、最終的な解釈は鑑賞者に委ねられるのです。写真の示唆は、私たちの集合的記憶に深く刻まれている。ラモン・マサッツは2024年3月4日にマドリードで92歳で亡くなった。下記リンク先は写真のメタバースであるリモートガーデンのサンドラ・レモンによる、ラモン・マサッツのバイオグラフィー(スペイン語)です。

Spein Ramón Masats (Español 1931-2024) Jardín Remoto Biografías Escrito por Sandra Remón

写真術における偉大なる達人たち

Parade of Zapatistas
Manuel Ramos (1874-1945) Parade of Zapatistas, National Palace, Mexico City, 1914

2021年の秋以来、思いつくまま世界の写真界20~21世紀の達人たちの紹介記事を拙ブログに綴ってきましたが、2025年11月25日現在のリストです。右端の()内はそれぞれ写真家の生年・没年です。左端の年月日をクリックするとそれぞれの掲載ページが開きます。

21/10/06多くの人々に感動を与えたアフリカ系アメリカ人写真家ゴードン・パークスの足跡(1912–2006)
21/10/08グループ f/64 のメンバーだった写真家イモージン・カニンガムは化学を専攻した(1883–1976)
21/10/10圧倒的な才能を持ち現代アメリカの芸術写真を牽引したポール・ストランド(1890–1976)
21/10/11何気ない虚ろなアメリカを旅したスイス生まれの写真家ロバート・フランク(1924–2019)
21/10/13作為を排した新客観主義に触発されたストリート写真の達人ロベール・ドアノー(1912–1994)
21/10/16大恐慌時に農村や小さな町の生活窮状をドキュメントした写真家ラッセル・リー(1903–1986)
21/10/17日記に最後の晩餐という言葉を残して自死した写真家ダイアン・アーバスの黙示録(1923–1971)
21/10/19フォトジャーナリズムの手法を芸術の域に高めた写真家ユージン・スミスの視線(1918–1978)
21/10/24時代の風潮に左右されず独自の芸術観を持ち続けたプラハの詩人ヨゼフ・スデック(1896-1976)
21/10/27西欧美術を米国に紹介した写真家アルフレッド・スティーグリッツの功績(1864–1946)
21/11/01美しいパリを撮影していたウジェーヌ・アジェを「発見」したベレニス・アボット(1898–1991)
21/11/08近代ストレート写真を先導した 20 世紀の写真界の巨匠エドワード・ウェストン(1886–1958)
21/11/10芸術を通じて社会や政治に影響を与えることを目指した写真家アンセル・アダムス(1902–1984)
21/11/13大恐慌を記録したウォーカー・エヴァンスの被写体はその土地固有の様式だった(1903–1975)
21/11/16写真少年ジャック=アンリ・ラルティーグは個展を開いた 69 歳まで無名だった(1894–1986)
21/11/20ハンガリー出身の世界で最も偉大な戦争写真家ロバート・キャパの短い人生(1913–1954)
21/11/25児童労働の惨状を訴えるため現実を正確に捉えた写真家ルイス・ハインの偉業(1874–1940)
21/12/01マグナム・フォトを設立した写真家アンリ・カルティエ=ブレッソンの決定的瞬間(1908–2004)
21/12/06犬を人間のいくつかの性質を持っているとして愛撮したエリオット・アーウィット(1928-2023)
21/12/08リチャード・アヴェドンの洗練され権威ある感覚をもたらしたポートレート写真(1923–2004)
21/12/12デザインと産業の統合に集中したバウハウスの写真家ラースロー・モホリ=ナジ(1923–1928)
21/12/17ダダイズムとシュルレアリスムに跨る写真を制作したマン・レイは革新者だった(1890–1976)
21/12/29フォトジャーナリズムに傾倒したアラ・ギュレルの失われたイスタンブル写真素描(1928–2018)
22/01/10ペルーのスタジオをヒントに自然光に拘ったアーヴィング・ペンの鮮明な写真(1917-2009)
22/02/25非現実的なほど歪曲し抽象的な遠近感を生み出した写真家ビル・ブラントのカメラ(1904–1983)
22/03/09男性ヌードや花を白黒で撮影した異端の写真家ロバート・メイプルソープへの賛歌(1946–1989)
22/03/18ニューヨーク近代美術館で写真展「人間家族」を企画したエドワード・スタイケン(1879–1973)
22/03/24公民権運動の影響を記録したキュメンタリー写真家ブルース・デヴッドソンの慧眼(born 1933)
22/04/21社会的弱者に寄り添いエモーショナルに撮影した写真家メアリー・エレン・マーク(1940-2015)
22/05/20早逝した写真家リンダ・マッカートニーはザ・ビートルズのポールの伴侶だった(1941–1998)
22/06/01大都市に変貌する香港を活写して重要な作品群を作り上げたファン・ホーの視線(1931–2016)
22/06/12肖像写真で社会の断面を浮き彫りにしたドキュメント写真家アウグスト・ザンダー(1876–1964)
22/08/01スペイン内戦取材で26歳という若さに散った女性戦争写真家ゲルダ・タローの生涯 (1910–1937)
22/09/16カラー写真を芸術として追及したジョエル・マイヤーウィッツの手腕(born 1938)
22/09/25死と衰退を意味する作品を手がけた女性写真家サリー・マンの感性(born 1951)
22/10/17北海道の風景に恋したイギリス人写真家マイケル・ケンナのモノクロ写真(born 1951)
22/11/06アメリカ先住民を「失われる前に」記録したエドワード・カーティス(1868–1952)
22/11/16大恐慌の写真 9,000 点以上を制作したマリオン・ポスト・ウォルコット(1910–1990)
22/11/18人間の精神の深さを写真に写しとったアルゼンチン出身のペドロ・ルイス・ラオタ (1934-1986)
22/12/10アメリカの生活と社会的問題を描写した写真家ゲイリー・ウィノグランド(1928–1984)
22/12/16没後に脚光を浴びたヴィヴィアン・マイヤーのストリート写真(1926–2009)
22/12/23写真家集団マグナムに参画した初めての女性報道写真家イヴ・アーノルド(1912-2012)
23/03/25写真家フランク・ラインハートのアメリカ先住民のドラマチックで美しい肖像写真(1861-1928)
23/04/13複雑なタブローを構築するシュールレアリスム写真家サンディ・スコグランド(born 1946)
23/04/21キャラクターから自らを切り離したシンディー・シャーマンの自画像(born 1954)
23/05/01震災前のサンフランシスコを記録した写真家アーノルド・ジェンス(1869–1942)
23/05/03メキシコにおけるフォトジャーナリズムの先駆者マヌエル・ラモス(1874-1945)
23/05/05文学と芸術に没頭し超現実主義絵画に着想を得た台湾を代表する写真家張照堂(1943-2024)
23/05/07家族の緊密なポートレイトで注目を集めた写真家エメット・ゴウィン(born 1941)
23/05/22欲望やジェンダーの境界を無視したクロード・カアンのセルフポートレイト(1894–1954)
23/05/2520世紀初頭のアメリカの都市改革に大きく貢献したジェイコブ・リース(1849-1914)
23/06/05都市の社会風景という視覚的言語を発展させた写真家リー・フリードランダー(born 1934)
23/06/13写真芸術の境界を広げた暗室の錬金術師ジェリー・ユルズマンの神技(1934–2022)
23/06/15強制的に収容所に入れられた日系アメリカ人を撮影したドロシア・ラング(1895–1965)
23/06/20劇的な国際的シンボルとなった「プラハの春」を撮影したヨゼフ・コウデルカ(born 1958)
23/06/24警察無線を傍受できる唯一のニューヨークの写真家だったウィージー(1899–1968)
23/07/03フォトジャーナリズムの父アルフレッド・アイゼンシュタットの視線(1898–1995)
23/07/06ハンガリーの芸術家たちとの交流が反映されたアンドレ・ケルテスの作品(1894-1985)
23/07/08家族が所有する島で野鳥の写真を撮り始めたエリオット・ポーター(1901–1990)
23/07/08戦争と苦しみを衝撃的な力でとらえた報道写真家ドン・マッカラン(born 1935)
23/07/17夜のパリに漂うムードに魅了されていたハンガリー出身の写真家ブラッサイ(1899–1984)
23/07/2020世紀の著名人を撮影した肖像写真家の巨星ユーサフ・カーシュ(1908–2002)
23/07/22メキシコの革命運動に身を捧げた写真家ティナ・モドッティのマルチな才能(1896–1942)
23/07/24ロングアイランド出身のマルクス主義者を自称する写真家ラリー・フィンク(born 1941)
23/08/01アフリカ系アメリカ人の芸術的な肖像写真を制作したコンスエロ・カナガ(1894–1978)
23/08/04ヒトラーの地下壕の写真を世界に初めて公開したウィリアム・ヴァンディバート(1912-1990)
23/08/06タイプライターとカメラを同じように扱った写真家カール・マイダンス(1907–2004)
23/08/08ファッションモデルから戦場フォトャーナリストに転じたリー・ミラーの生涯(1907-1977)
23/08/14ニコンのレンズを世界に知らしめたデイヴィッド・ダグラス・ダンカンの功績(1907-2007)
23/08/18超現実的なインスタレーションアートを創り上げたサンディ・スコグランド(born 1946)
23/08/20シカゴの街角やアメリカ史における重要な瞬間を再現した写真家アート・シェイ(1922–2018)
23/08/22大恐慌時代の FSA プロジェクト 最初の写真家アーサー・ロススタイン(1915-1986)
23/08/25カメラの焦点を自分たちの生活に向けるべきと主張したハリー・キャラハン(1912-1999)
23/09/08イギリスにおけるフォトジャーナリズムの先駆者クルト・ハットン(1893–1960)
23/10/06ロシアにおけるデザインと構成主義創設者だったアレクサンドル・ロトチェンコ(1891–1956)
23/10/18物事の本質に近づくための絶え間ない努力を続けた写真家ウィン・バロック(1902–1975)
23/10/27先見かつ斬新な作品により写真史に大きな影響を与えたウィリアム・クライン(1926–2022)
23/11/09アパートの窓から四季の移り変わりの美しさなどを撮影したルース・オーキン(1921-1985)
23/11/15死や死体の陰翳が纏わりついた写真家ジョエル=ピーター・ウィトキンの作品(born 1939)
23/12/01近代化により消滅する前のパリの建築物や街並みを記録したウジェーヌ・アジェ(1857-1927)
23/12/15同時代で最も有名で最も知られていないストリート写真家のヘレン・レヴィット(1913–2009)
23/12/20哲学者であることも写真家であることも認めなかったジャン・ボードリヤール(1929-2007)
24/01/08音楽や映画など多岐にわたる分野で能力を発揮した写真家ジャック・デラーノ(1914–1997)
24/02/25シチリア出身のイタリア人マグナム写真家フェルディナンド・スキアンナの視座(born 1943)
24/03/21パリで花開いたロシア人ファッション写真家ジョージ・ホイニンゲン=ヒューン(1900–1968)
24/04/04報道写真家として自活することに成功した最初の女性の一人エスター・バブリー(1921-1998)
24/04/20長時間露光により時間の多層性を浮かび上がらせたアレクセイ・ティタレンコ(born 1962)
24/04/2820世紀後半のイタリアで最も重要な写真家ジャンニ・ベレンゴ・ガルディン(born 1930)
24/04/30トルコの古い伝統の記憶を守り続ける女性写真家 F・ディレク・ウヤル(born 1976)
24/05/01ファッション写真に大きな影響を与えたデヴィッド・ザイドナーの短い生涯(1957-1999)
24/05/08社会の鼓動を捉えたいという思いで写真家になったリチャード・サンドラー(born 1946)
24/05/10直接的で妥協がないストリート写真の巨匠レオン・レヴィンシュタイン(1910–1988)
24/05/12自らの作品を視覚的な物語と定義している写真家スティーヴ・マッカリー(born 1950)
24/05/14多様な芸術の影響を受け写真家の視点を形作ったアンドレアス・ファイニンガー(1906-1999)
24/05/16芸術的表現により繊細な目を持つ女性写真家となったマルティーヌ・フランク(1938-2012)
24/05/18ドキュメンタリー写真をモノクロからカラーに舵を切ったマーティン・パー(born 1952)
24/05/21先駆的なグラフ誌『ピクチャー・ポスト』を主導した写真家バート・ハーディ(1913-1995)
24/05/24グラフ誌『ライフ』に30年間投稿し続けたロシア生まれの写真家リナ・リーン(1914-1995)
24/05/27旅する写真家として20世紀後半の歴史に残る象徴的な作品を制作したルネ・ブリ(1933-2014)
24/05/29高速ストロボスコープ写真を開発したハロルド・ユージン・エジャートン(1903-1990)
24/06/03一般市民とそのささやかな瞬間を撮影したオランダの写真家ヘンク・ヨンケル(1912-2002)
24/06/10ラージフォーマット写真のデジタル処理で成功したアンドレアス・グルスキー(born 1955)
24/06/26レンズを通して親密な講釈と被写体の声を伝えてきた韓国出身のユンギ・キム(born 1962)
24/07/05演出されたものではなく現実的なファッション写真を開発したトニ・フリッセル(1907-1988)
24/07/07スウィンギング60年代のイメージ形成に貢献した写真家デイヴィッド・ベイリー(born 1938)
24/07/13著名人からから小さな町の人々まで撮影してきた写真家マイケル・オブライエン(born 1950)
24/07/14人々のドラマが宿る都市のカラー写真を制作したコンスタンティン・マノス(born 1934)
24/08/04写真家集団「マグナム・フォト」所属するただ一人の日本人メンバー久保田博二(born 1939)
24/08/08ロバート・F・ケネディの死を悼む人々を葬儀列車から捉えたポール・フスコ(1930–2020)
24/08/13クリスティーナ・ガルシア・ロデロが話したいのは時間も終わりもない出来事だ(born 1949)
24/08/30ドキュメンタリーと芸術の境界を歩んだカラー写真の先駆者エルンスト・ハース(1921–1986)
24/09/01国際的写真家集団マグナム・フォトの女性写真家スーザン・メイゼラスの視線(born 1948)
24/09/09アパルトヘイトの悪と日常的な社会への影響を記録したアーネスト・コール(1940–1990)
24/09/14宗教的または民俗的な儀式に写真撮影の情熱を注ぎ込んだラモン・マサッツ(1931-2024)
24/09/23アメリカで最も有名な無名の写真家と呼ばれたエヴリン・ホーファー(1922–2009)
24/09/25自身を「大義を求める反逆者」と表現した写真家マージョリー・コリンズ(1912-1985)
24/09/27北海道の小さな町にあった営業写真館を継がず写真芸術の道を歩んだ深瀬昌久(1934-2012)
24/10/01現代アメリカの風変わりで平凡なイメージに焦点を当てた写真家アレック・ソス(born 1969)
24/10/04微妙なテクスチャーの言語を備えた異次元の写真を追及したアーサー・トレス(born 1940)
24/10/06オーストリア系イギリス人のエディス・チューダー=ハートはソ連のスパイだった(1908-1973)
24/10/08映画の撮影監督でもあったドキュメンタリー写真家ヴォルフガング・スシツキー(1912–2016)
24/10/15芸術のレズビアン・サブカルチャーに深く関わった写真家ルース・ベルンハルト(1905–2006)
24/10/19ランド・アートを通じて作品を地球と共同制作するアンディ・ゴールドワージー (born 1956)
24/10/29公民権運動の活動に感銘し刑務所制度の悲惨を描写した写真家ダニー・ライアン (born 1942)
24/11/01人間の状態と現在の出来事を記録するストリート写真家ピータ―・ターンリー (born 1955)
24/11/04写真を通じて現代の社会的状況を改善することに専念したアーロン・シスキンド(1903-1991)
24/11/07自然と植物の成長にインスピレーションを受けた写真家カール・ブロスフェルト(1865-1932)
24/11/09ストリート写真で知られているリゼット・モデルは教える才能を持っていた(1901-1983)
24/11/11カラー写真が芸術として認知されるようになった功労者ウィリアム・エグルストン(born 1939)
24/11/13革命後のメキシコ復興の重要人物だった写真家ローラ・アルバレス・ブラボー(1903-1993)
24/11/15チリの歴史上最も重要な写真家であると考えられているセルヒオ・ララインの視座(1931-2012)
24/11/19イギリスのアンリ・カルティエ=ブレッソンと評されたジェーン・ボウン(1925-2014)
24/11/25カラー写真の先駆者ソール・ライターは戦後写真界の傑出した人物のひとりだった(1923–2013)
24/11/25サム・フォークがニューヨーク・タイムズに寄せた写真は鮮烈な感覚をもたらした(1901-1991)
24/11/29ゲイ解放運動の活動家だったトランスジェンダーの写真家ピーター・ヒュージャー(1934–1987)
24/12/01複数の芸術的才能に恵まれていた華麗なるファッション写真家セシル・ビートン(1904–1980)
24/12/05ライフ誌と空軍で活躍した女性初の戦場写真家マーガレット・バーク=ホワイト(1904–1971)
24/12/07愛と美を鮮明に捉えたロマン派写真家エドゥアール・ブーバの平和への眼差し(1923–1999)
24/12/10保守的な政治体制と対立しながら自由のために写真を手段にしたエヴァ・ペスニョ(1910–2003)
24/12/15自然環境における人間の姿を研究することに関心を寄せた写真家マイケル・ぺト(1908-1970)
24/12/20ベトナム戦争中にナパーム弾攻撃から逃げる子供たちを撮影したニック・ウット(born 1951)
25/01/06記録映画の先駆者であり前衛映画製作者でもあった写真家ラルフ・スタイナー(1899–1986)
25/01/10アメリカ西部を占める文化の多様性を反映した写真家ローラ・ウィルソンの足跡(born 1939)
25/01/15フランスの人文主義写真運動で活躍したスイス系フランス人ザビーネ・ヴァイス(1924–2021)
25/02/03サルバドール・ダリとの共作でシュールな写真を創出したフィリップ・ハルスマン(1906–1979)
25/02/06ベトナム戦争に対する懸念を形にした写真家フィリップ・ジョーンズ・グリフィス(1936-2008)
25/02/18芸術に複数の糸を持っていたシュルレアリスムの写真家エミール・サヴィトリー(1903-1967)
25/03/19シュルレアリスムの先駆的な写真家でピカソのモデルで恋人だったドラ・マール(1907-1997)
25/03/25ホロコースト前の東欧のユダヤ人社会を記録した写真家ローマン・ヴィスニアック(1897-1990)
25/04/01ソーシャルワーカーからライフ誌の専属写真家に転じたウォレス・カークランド(1891–1979)
25/04/04写真家ビル・エプリッジは20世紀で最も優れたフォトジャーナリストの一人だった(1938-2013)
25/04/25ロバート・キャパの弟で総合施設国際写真センターを設立したコーネル・キャパ(1918-2008)
25/05/01激動1960年代の音楽家たちをキャプチャーした写真家エリオット・ランディの慧眼(born 1942)
25/05/23生まれ故郷ブラジルの熱帯雨林アマゾン川流域へのセバスチャン・サルガドの視座(1944-2025)
25/06/22風景への畏敬の念と激動の気象現象への驚異が伝わるミッチ・ドブラウナーの写真(born 1956)
25/07/26ティンタイプ写真でアパラチアの伝承音楽家に焦点を当てたリサ・エルマーレ(born 1984)
25/08/03色彩の卓越した表現を通して写真というジャンルを超越したデビッド・ラシャペル(born 1963)
25/08/20ヨーロッパ解放やコンゴ紛争などでの勇敢な取材で知られるドミトリ・ケッセル(1902–1995)
25/08/25長大吊り橋を撮影したピーター・スタックポールはライフ誌創刊の写真家になった(1913-1997)
25/09/08アパラチアや南東部の農村地帯の人々の肖像写真で知られているドリス・ウルマン(1882-1934)
25/08/25長大吊り橋を撮影したピーター・スタックポールはライフ誌創刊の写真家になった(1913-1997)
25/09/15指導者であり預言者であり歴史家であり学者だった写真家ジョン・ローエンガード(1934-2020)
25/09/17女性を客体ではなく主体として描写した写真家エレン・フォン・アンワースの視線(born 1954)
25/09/22精巧に演出された赤ちゃんたちの愛らしい写真で世界的に評価されるアン・ゲデス(born 1956)
25/09/26エロティックで都会的なスタイルの頂点を極めた写真家ヘルムート・ニュートン(1920-2004)
25/10/06モデルからファッション写真家に転じたスリランカ系英国人ナイジェル・バーカー(born 1972)
25/10/15ヴィクトリア朝イギリスで最も有名な写真家ジュリア・マーガレット・キャメロン(1815-1879)
25/10/17革新的手法を用いたドイツ系ユダヤ人写真家エーリッヒ・ザロモンの悲劇的な運命(1886-1944)
25/10/20地球の環境破壊と気候変動の壊滅的な影響を明瞭に伝える写真家ニック・ブラント(born 1964)
25/10/23政治家や作家など世界の重要人物の精緻な肖像写真を撮影したユーサフ・カーシュ(1908-2002)
25/10/26直面する不正義と対峙するパレスチナ系オランダ人写真家サキル・カデルの眼差し(born 1990)
25/11/12目に見えない鳥の飛行経路を可視化した作品で知られる写真家シャビ・ボウの秘技(born 1979)
25/11/18自身の文化的環境を探求したメキシコを代表する写真家グラシエラ・イトゥルビデ(born 1942)
25/11/25フォトルポルタージュの新たな時代を築いたスペインの写真家ラモン・マサッツ(1931-2024)

子供の頃「明治は遠くなりにけり」という言葉を耳にした記憶がありますが、今まさに「20世紀は遠くなりにけり」の感があります。掲載した作品の大半がモノクロ写真で、カラー写真がわずかのなのは偶然ではないような気がします。20世紀のアートの世界ではモノクロ写真が主流だったからです。しかしデジタルカメラが主流になった21世紀、カラー写真の台頭に目覚ましいものがあります。ジョエル・マイヤーウィッツとサンディ・スコグランド、ジャン・ボードリヤール、 F・ディレク・ウヤル、マーティン・パー、コンスタンティン・マノス、久保田博二、ポール・フスコ、エルンスト・ハース、エヴリン・ホーファー、アレック・ソス、アンディ・ゴールドワージー、ウィリアム・エグルストン、ソール・ライタ、などのカラー作品を取り上げました。

photographer  Famous Photographers: Great photographs can elicit thoughts, feelings, and emotions.

2025年11月23日

高市早苗首相の対中国強硬姿勢の危険

©Badiucao
高市早苗風刺漫画 ©Badiucao

高市早苗が中国が武力で台湾を支配しようとすれば軍事的に対抗する可能性があると示唆して以来、北京は経済的圧力の手法を取り出した。国民に台湾への渡航や留学を控えるよう警告し、中国には日本の海産物輸出の市場はないと示唆し、首相に向けられた国家主義的な熱狂の波を解き放った。この騒動は、中国政府が自国の領土であると主張する民主的な自治島である台湾に関して、日本や同地域の他の国々が中国と対立する立場を取ることを少しでも検討した場合に何が起きるかを警告するために、慎重に調整されているように見受けられる。しかし約2週間経っても収まる気配のないこの論争は、別の事実も明らかにしている。中国の軍事力増強を前に、米国の同盟国が防衛費と協調体制を強化するなか、アジアにおける軍事態勢の変化の可能性に対する中国の根深い懸念だ。日本ほどこうした懸念を抱かせる国は他にない。日本の帝国軍は20世紀に中国を侵略、占領し、残虐な行為を働き、その数十年前には台湾を植民地化した。これは中国が外国勢力によって受けた所謂「屈辱の世紀」における主要な痛点である。それ以来、反日感情は国内でくすぶっていたが、近年、強権国家指導者である習近平国家主席の下で国家主義強硬派の声が中国でますます主流になり、その感情が再燃し勢いを増している。

©日本経済新聞

習主席は、歴史が繰り返されないよう徹底するという中国共産党の長年の決意を強化し、中国軍を急速に近代化し、世界的な影響力を拡大してきた。今、北京の目には、高市の発言は、中国を台頭する超大国の地位に押し上げた大規模な勢力再調整を日本が尊重していないこと、そして中国の台頭を脅かしかねない軍事的野心を持っていることを明らかにしているように映る。「日本の指導者が初めて台湾への武力介入の野心を表明し、中国に対する軍事的脅威を表明した」「この背後には、平和憲法の制約から逃れ『軍事大国』の地位を狙う日本の右翼勢力による危険な試みがある」と中国共産党機関紙「人民日報」は論説記事で述べた。日本は近年、安全保障姿勢を大幅に転換し、第二次世界大戦後に米国から押し付けられた平和憲法から逸脱し、防衛予算を増額して反撃能力を獲得した。これは、中国が台湾周辺を含む地域での軍事活動を強化し、米国が同盟国に防衛費の負担増を迫っている中で起こった。下記リンク先は ABC ニュース北アジア特派員ジェームズ・オーテンの記事「日本の新首相は台湾に関して沈黙していた部分を声高に発言し、北京の怒りを爆発させた」です。

abc news  Japan's new PM Takaichi said quiet part out loud on Taiwan and unleashed Beijing's fury