ふたりのアライアンスは、2024年7月にペンシルベニア州バトラーで起きたドナルド・トランプ暗殺未遂事件の後、イーロン・マスクが当時共和党大統領候補だったドナルド・トランプへの全面的な支持を表明したことから始まった。しかしかつて公然としていた友情を、激しい対立へと変貌させてしまった。大統領と億万長者の起業家の対立は今週、公衆の面前で露呈し、個人攻撃、政治的脅迫、そしてテスラに数十億ドルの経済的損失をもたらしている。「私はトランプ大統領を全面的に支持し、彼の早期回復を願っている」と、マスクは事件発生からわずか数分後に X(旧 Twitter)に投稿同はその後、特注の MAGA(アメリカ合衆国を再び偉大な国にする)帽子をかぶり、トランプの大統領選挙活動に同行した。ふたりの関係は急速に進展し、トランプ大統領の就任後、マスクは「特別政府職員」の枠内で無給の大統領顧問に任命された。マスクは今年2月「ストレート男性が男性を愛せるのと同じくらい、私はドナルド・トランプを愛している」と X に書き、共和党大統領への気持ちを告白した。トランプ政権の初期には、このテスラの最高経営責任者は新設された DOGE(政府効率化省)の最大の顔となり、積極的なコスト削減改革を推進した。5月31日、大統領執務室での最後の記者会見で、トランプ大統領はマスクを惜しみなく称賛し「世界が生んだ最も偉大なビジネスリーダーであり、イノベーターのひとり」と呼んだ。これは、関係が破綻する前に、公の場でふたりが交わした最後の友情の場面だった。マスクがホワイトハウスを去った直後から、ふたりの関係は崩れ始めた。彼は何度もトランプ政権の「ワン・ビッグ・ビューティフル・ビル (大きく美しい法案)」を批判し、連邦財政赤字の増大と DOGE の取り組みの成果を無駄にするだろうと警告した。このテクノロジー業界の億万長者はこの法案について次のように語っている。「この大規模で法外な、利益誘導のための議会支出法案は、吐き気がするほどひどいものだ」とマスクは6月3日に自身のサイト X に投稿した。6月5日、トランプ大統領が、電気自動車税額控除の廃止をめぐり、テスラの収益に打撃を与える法案を妨害しようとしているとマスクを非難したことで、両社の緊張は頂点に達した。「イーロンと私は素晴らしい関係だった。今後もそうなるかどうかは分からない」とトランプ大統領は記者団に語った。「イーロンには非常に失望している。彼はこの法案のあらゆる側面を知っていた。ほとんど誰よりもよく知っていたし、彼が去る直前まで問題を抱えたことは一度もなかった」と彼は付け加えた。
マスクはオンラインで反撃し、トランプの事件に関する説明を否定した。6月6日には「この法案は一度も私に提示されず、真夜中に可決されたため、議会のほとんど誰も読むことさえできなかった!」と投稿した。しかし、同日遅くにマスクがトランプと悪名高い金融業者ジェフリー・エプスタインとのつながりを示唆したことで、この不和は極めて個人的な問題へと発展した。曰く「エプスタインのファイルにはトランプの名前が載っている。それが公表されていない本当の理由だ」云々。マスクはさらに、トランプがエプスタインについて語った数十年前の言葉を引用した。「彼と一緒にいるととても楽しいし、女性陣は若い方が多い」。マスクは最後に「良い一日を、トランプ・メディア&テクノロジー・グループ」と揶揄するよう締めくった。彼はさらに X ユーザーを対象に「中間層の80%」のための新しい政党を設立すべきかどうかを問う世論調査を投稿した。マスクはさらに踏み込み、トランプ大統領の弾劾を求める声を支持し、後任としてJ・D・ヴァンスを支持すると述べ、トランプ大統領による世界的な関税措置は「今年後半に景気後退を引き起こすだろう」と警告した。トランプ大統領は、マスクのオンラインでの暴言を受けて、6月6日にマスクの企業に対する政府契約と補助金を打ち切ると警告した。経済への影響は即座に現れた。ANIが引用したブルームバーグのビリオネア指数によると、テスラの株価は 14 %以上急落し、時価総額は約1,520億ドル減少し、マスクの個人資産は87億3,000万ドル減少した。トランプは自らのソーシャルメディアプラットフォーム、トゥルース・ソーシャで新たな怒りを表明し「イーロンが私に反旗を翻すのは構わないが、何ヶ月も前にそうすべきだった」とポストした。彼はこの法案を「これまで議会に提出された法案の中で最も偉大なもののひとつ」と擁護し、可決されなければ「68%の増税」につながると警告した。さらに攻撃を倍加させ「イーロンは『疲れ果てていた』ので、私は彼に辞任を求め、EV義務化を取り消した…すると彼は激怒した」と述べた。トランプ大統領がマスクのビジネス上の利益を標的にしたことを受け、ネット上での激しい攻防は続いた。「予算を節約する最も簡単な方法は…イーロン・マスクへの政府補助金と契約を打ち切ることだ」とトランプ大統領は投稿した。お互いに利用できるから相手を称賛していただけで、もともと「盟友」でもなんでもなかったのである。そして「友情」のバランスが崩れて元の木阿弥に。マスクはもう MGA 帽子をかぶらないのだろうか。下記リンク先の記事はロイター通信のディタ・ボーズとジェフ・メイソン記者による「仲間から敵へ:トランプとマスクのあり得ない関係がいかに崩壊したか」です。

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