写真はブローニー・マクギー(1915–1996)とレスリー・リドル(1905–1979)が、テネシー州キンクズポートに住んでいたころというから、1920年代後半に撮影されたと想像される。音楽愛好家なら左の写真を見て奇妙な点に気づくはずだ。マクギーのギターの第1弦(音程が高い方のE線)が上だし、リドルのマンドリンのピックガードも上についている。つまりふたりは左利き用の楽器を弾いているかのように見える。左利きなのに右利き用のギターをそのまま弾いた、エリザベス・コットン(1893–1987)のような稀有な例もあるが、ふたりとも右利きだし、わざわざ左利き用の楽器というのは解せない。リドルは若い頃、セメント工場のオーガーにつまずいて右足を失ってしまった。そして継父と口論中、散弾銃が暴発して右手の指2本を失ってしまう。火災で大やけどを負い、右足が麻痺し、左手の薬指と小指には障害が残った、ジャンゴ・ラインハルト(1910–1953)が負ったハンディキャップを彷彿とさせる。手足に損傷があっても、ギターを人並み以上に演奏できたのは極めて素晴らしいことである。リドルの写真を仔細に観察すると、右手のはずが左手の指が欠けている。これはおかしい、もしかしたら裏焼きじゃないかと思い、左右反転したのが右の写真である。楽器はスタンダードな右利き用で、裏焼きすることを想定、右手で弦を押さえ、左手でピッキングしているフリをして撮影した演出写真である。これがオリジナル写真だったのである。テネシー州ブリストルにある「カントリー音楽発祥の地博物館」の記事にも使われているし、左のトリック写真が一般的に流布しているようだ。カラクリを知っていても、オリジナル写真だと、ふたりが左利きと勘違いされるからだろう。それにしても誰がこのような、手の込んだややこしいアイデアを思い付いたのだろうか。
Kingsport's Lesley Riddle Featured in Ken Burns' Country Music Series | Visit Kingsport
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