いわゆる「物作り日本の凋落」という言葉を、よく耳にするようになった。日本列島がラストベルト(錆びた工業地帯)化し、非製造業を含めた賃金の抑制の遠因になっているのではないだろうか。かつて世界を席巻した製造業が、なぜ今のような状況に陥ってしまったのだろうか。この問題に対して、様々な角度から分析し、その原因と未来への展望を探っていきたい。日本の製造業の凋落には以下のような複合的な要因が考えられる。
- 少子高齢化と労働力不足
- 若年層の労働力減少は、製造業の生産性を低下させ、技術継承の断絶を招いている。
- グローバル化と競争激化
- 新興国の台頭や技術革新により、日本の製造業は厳しい国際競争にさらされている。
- 内需の低迷
- 日本国内の消費が低迷し、製造業の成長を阻害している。
- 規制の厳しさ
- 環境規制や労働規制など、日本の製造業は他の国に比べて厳しい規制に縛られており、新たな技術開発や投資を妨げている側面がある。
- リスク回避の風土
- 日本企業は、失敗を恐れて新しいことに挑戦しにくくなり、イノベーションが生まれにくい土壌が生まれている。
- GDP の低下
- 製造業は、日本の GDP に大きな割合を占めており、その衰退は経済成長の鈍化につながる。
- 雇用への影響
- 製造業の雇用減少は、社会全体に波及し、失業率の上昇や経済の活性化の阻害につながる。
- 技術力の低下
- 世界的な技術競争の中で、日本の技術力が低下することは、国際的な地位の低下を招き、日本のプレゼンスを弱める可能性がある。
近年、日本において「イノベーション不足」という言葉が頻繁に耳にするようになった。イノベーションとは、ビジネスでは主に「技術革新」の意味で使用され、モノ、仕組み、サービス、組織、ビジネスモデルなどに新たな考え方や技術を取り入れることで新しい価値を生み出し、社会に大きな変革をもたらす取り組みを指す。かつて世界を牽引する存在であった日本の技術力や創造性が、なぜ停滞しているように見えるのだろうか。その背景には、様々な要因が考えられる。成果主義よりもプロセス重視、失敗を恐れる風土が、新しいアイデアの芽を摘んでしまうことがある。長期的な視点よりも、短期的な利益追求が優先される傾向も、イノベーションを阻害する要因の一つである。部署間の連携不足や、外部との交流が少ないことで、多様な視点やアイデアを取り入れることが難しくなりる。若手社員が自由に意見を言えるような環境が不足しているケースが多く、創造性を育む土壌が育まれていない。イノベーション不足は、日本経済の停滞や国際競争力の低下につながる可能性がある。また、社会全体の活性化にも悪影響を及ぼす恐れがある。例えばかつてソニーはウォークマンという独創的な製品を生み出した。ところがアップルの創業者の一人で当時の CEO でもあったスティーブ・ジョブズの陣頭指揮により開発され、これを凌駕した。そして iPod 機能を取り入れた、スマートフォンというコンセプトで発売された iPhone が iPod を上回る成功となった。iPhone の日本でのシェアは高く、MMD研究所の調査では50%に達する勢いである。今やこの製品だけでも多額の金が日本からから流失しているのである。
宇土寿和「物作り大国・日本の中小製造業が衰退しているワケ」幻冬舎メディアコンサルティング
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